2章35話 決行前
決行前
食堂階層
様々なお店が24時間営業している階層があり、小腹を満たす為に立ち寄った
(流石に人は少ないな)
豪快な笑い声が聞こえてきた
「居酒屋みたいな店だな」
なんとなく覗いてみる
バスローブ姿の女性が三名
座席に片足を乗せて座るジャンヌさん
綺麗な桃色の髪の長いと色々控えめの女性
銀朱色の地面まで垂れる長い髪に、同じく小柄な女性
カウンターに並んで談笑していた
店主は人の良さそうな角刈りのおじさん
そして全員と目が合う
(クソ気まずい…)
談笑を止めて此方を覗いてくる
「おいお前」
桃色に声を掛けられる
「な…なんでしょう?」
「日本から来たのか?」
桃色髪さんが聞いてきた
「そうです」
「やっぱりな、本部ってのは派手なモンばっかで目が疲れてな」
思ったよりも声は低めだった
(貴方もその一人だし俺は白髪だし…)
「日本じゃなかなか見ないですよね」
「まぁ隣座れよ」
桃髪は入り口に近い左隣の椅子を叩いていう
「こやつが…ふむふむ成程、中々骨がありそうじゃな」
銀朱色の女性が笑みを浮かべた
『色彩青 宮本さくら』
「自己紹介が遅れたな、私は宮本さくら、色彩は青で明日一緒に行くから、よろしく頼む」
『十二師第四位 ジャンヌ』
「ジャンヌだ」
『色彩黒紫 灼』
「ワシはシヤクと呼ばれておる」
「灼の色彩は黒紫、今回の作戦で使う切り札の一人」
「ワシ切り札!」
「黒…」
「遊飛鳥っていいます…えっと、シヤクさんは魔族なんですか?」
「下等な魔族と一緒にするでないわ」
「魔族と言っても灼はあの、あ、どうもどうも」
若い女性の店員がおつまみを運んでいた
「そうだな、せっかくだし何か奢ってやろう」
「いいんですか?」
「もちろん、歓迎の意を込めてね」
「ありがとうございます、大将、彼に鶏皮一人前」
「あいよ」
(ジャンヌさんまさか酔っ払ってる?)
昼間とは打って変わって物静かだった
「ワシが一番強いやつをぶっ飛ばすからノォ」
「私が残らず切り伏せる」
謎の爆笑が起こる
「さくら、今日も頼めるか」
「全然お安い御用ですよ」
「じゃあ頼む」
「まぁ、ここらで解散かな」
「おう!またな!」
「失礼します……」
(ジャンヌさん白だった……)
意外とすぐ眠りに落ちた
――(ん………)
眩しい日差しで目が覚める
(……寝ていたのか……)
ぼんやりと、時計を見る
時計は九時前を表していた
「ヤッベ!」
昨日の事を思い出す
(やばい寝坊終わった、ワンチャン死ぬ?急がないとやばい、まずい動け体!)
取り敢えず深呼吸…
飲みかけの水を持って部屋を出た
(第二会議室ぅ…第二会議室ぅ…あった!)
「遅れまし!……た…」
五分遅れていたがそこには誰も居なかった
ドアが開いた
(!!)
派手な緑の短髪で和服っぽい装い、ガタイの良いおっちゃんが、欠伸をしながら入ってきた
「ふぁ〜〜っあぁ…」
「すみません、これの前の会議って終わりましたか?」
「いや、1発目だからあってるよ、お前が例の?早いねぇ、やる気満々だね〜」
「えっと…どちら様でしょうか?」
「オレか?オレぁ忍びの松総颯、まつふささんなんて呼びにくいだろうからハヤテ様って呼んでくれや」
「わかりました、ハヤテさん、会議終わったんですか?」
「まだ始まっちゃねぇよ、飛鳥くん、もしかして九時から来てんの?」
「いえ…僕も今来た所です…」
扉が開いた
「あすか、きてたのか」
「おぉ?咲夜さんも遅刻ですか?」
「皆を起こしに行ってたんだ、あの人達いくら呼んでも起きませんから、あすかも」
「すいません」
「フアソラは今回の任務で不安材料だと判断されている」
「そうなんですか」
「まだこねぇのか?」
「すぐ来ると言っていたが…」
狐面の下に般若をのぞかせる
「いやーすまんすまん、昨日は久しぶりの休日だったから、完全に油断したぜ…」
ジャンヌさんが、髪の毛ボサボサのまま入ってきた
「すまない、今朝は寝かせてくれなくてな…」
既に疲労困憊した宮本さんがげんなりして入り口を潜る
「すまんすまん、ワシ夜の九時じゃと勘違いしておった」
「それじゃあ始め…」
「待て、その前に拙も参加することになった…主曰く、ジャンヌ殿から先に親交を深めて参れとの旨、よろしく頼む」
(いたのか!?いつから!?)
「おうそうか、よろしくな拙くん」
「白夜叉で構わない」
「じゃあ始めよう」
咲夜さんが前に立って仕切る
「今回の作戦で実際中に潜入するのはここにいる6名
ジャンヌさん、桜さん、白夜叉さん、ハヤテ、自分、そしてあすか」
「一番大切にしなきゃいかんのは時間じゃなくて正確性だぞ」
「その通りです、恐らく殺されてる事は無いと踏んで動いています」
「どうやって行くんジャ?またワシが皆を乗せてゆくのか?」
「いえ、アーサーさんが大まかな目星の位置に転移の魔法陣を設置してくれるそうなので、それで飛びます」
「…」
「おい、あすか」
「あ、はい?」
ジャンヌさんが上の空のあすかを呼ぶ
「お前にとって一大事かも知れないが、落ち着け、絶好の機会を逃すぞ」
「ありがとう…ございます…」
「そして作戦ですが、咲夜、ジャンヌさん、シヤクさん、桜さんが正面からの突破、兼ねて囮になります」
「なんジャ、ワシは今回囮か?」
肩を落とす
桜さんが励ます様に灼の背を叩く
「まぁまぁ、好きなだけ暴れりゃいいんだろう?」
「はい、敵の組織が形成した町です、思う存分暴れて焼き払ってください、その間に風刃と飛鳥と白夜叉さんで救ってきてください」
「おぉお!!そうかそうか」
「開始は本日の夕方、移送室1です、質問は?」
「会議は以上です」
「ふぁ〜もう一眠りいっとくかな…」
「なら風刃よ、ワシと一試合せぬか?」
「うぇ〜あんたとしちゃぁこの体が燃えちまうだろうが」
「なるべく手加減するからのぉ」
「却下」
「なら私としません?体動かしておきたいし」
「おー!久しぶりにするカ!桜木!」
「よし寝れるぅ〜」
「飛鳥と言ったか」
「あ、はい!」
「お主の想い、拙も全力で応えよう」
「ありがとうございます」
数週間前
―とある地下牢
「鎖で繋いでおけ」
「いや、月城さんがそのまますれば良いじゃ無いですか?」
「命令だ」
「はぁーい」
「相変わらず稚拙な思考回路じゃな」
「黙れ」
「どうせすぐ死ぬ人間なぞ、死体と変わらんぞ」
「それに俺らは該当するのか?」
「そうだのぉ儂より弱い奴は皆したい同然じゃな?」
伊村は笑ってみせた
「…はぁ、誰に任せるか…使いやすい手駒が少な過ぎる」
「使いこなせないの間違いじゃ無いのか?」
「じゃあお前は、神が降りてきた時に備えての体力を残させながら痛みつけれる自身はあるのか?」
「そのひ弱な魔族はダメじゃな」
「麓銘には断られると思うし、エリザベートはやり過ぎる…リッパーは論外…俺がやるしか無いのか…」
「もしや、痛めつけるのが心苦しいなどとは、ほざくまいな…」
伊村は片目を開き、赤い目で月城を睨む
「そんなわけあるか」
「いっそ辞めてしまえばよかろう?」
「クハハハハハッ!」
月城は笑い声を上げる
(怖いゾイ、ついに壊れよったで)
「戯けよ、この程度の酔狂にて覚める悪夢であれば、最初から見てはいない」
「なら頑張ってくれ、今ここで神を降ろせるかが、今後の未来を決めるんじゃからな」
吸血鬼は暗闇に去っていった
「ん…」
「起きたか」
「!」
「これから拷問する訳だが、何か希望はあるか」
樋口は少しばかりの布切れを着させられ、木製の椅子に手足を縛られていた
身体から炎が溢れる
ただ木製の椅子は焼ける様子もなかった
「…、……」
肩で息をする
(やっぱり…、疲労感が凄い…これ以上魔力は使えない…)
「よく燃える椅子だぞ、もう良いのか?」
「何が目的だ」
「神をもう一度宿せ」
「神?そんなもの知らん」
「そうだろうな、私は知ってるが」
(なんだコイツ)
「神降の力、神なんて大仰な名前を冠しているが、その実、魔力の解放と覚醒、謂わば火事場の馬鹿力みたいなものだと考えている」
「???」
「痛みによる神降の記録はない、ここは少し魔素の濃度が高い」
「…」(早く逃げないと…)
「条件の一つは恐らく魔力の枯渇、魔族の生物としての本能が、周囲の魔素と自身を同調させることによる感覚の延長」
樋口は部屋の隅々を観察していた
冷たい地面、肌寒い気候、窓は無く、正面は一面鉄格子
「悪魔の証明だ、全て試すぞ」
徐に水の入ったコップを持ち出す
「飲め」
「断る」
「…」
一口含んでコップを置いた
「…!!」
顔を下から掴んで吹きかける
一回、二回、三回
「貴様!なにしやがる!」
「俺の魔力を直接取り込んでもらった」
「…」
視界が歪み、思考が遅くなる
「俺の殊科は理性を破壊するが、耐性が強いと効き目が薄くてな」
「お前、何…を…」
「まだ喋れるのか、流石」
「その腕はどうしたんだ?犬にでもくれてやったのか?」
「…」
月城は指を鳴らすと拘束が解けた
飛びかかる魔族を蹴り飛ばし、もう一度指を鳴らす
「!!!」
樋口の意識が戻る
「蹴り飛ばされたか?」
「…」
「まだ効き目は薄い様だな」
「飛鳥…飛鳥はどうなった!?」
「あすか?連れの話か?そういう事は聞く意味を持たないと思うが、その取り乱し様だともう死んでるんじゃないか?」
「…」
(まだ生きてる…多分だけど……)
「他の条件も大体予想はついている」
睨みつける
「これから楽しくなるぞ」
昼過ぎの開けた森の中
「俺に剣術指南をして欲しいとはな」
「咲夜さんが俺が知る1番の剣士なんで」
「おべっかはいらん、始めるぞ」
両者木刀を構える
(ついていけてるぞ)
「…ギア上げるぞ」
咲夜の蹴りを木刀で受けると背中に何かが当たり動きを止められる
振るわれた咲夜の渾身の横薙ぎを受け流す
反撃しようとするが、勢いそのままに回転するのを見てガードを上げると踵が腕に当たる
右足を掴んで持ち引き上げて、木刀を逆手に持ち体勢を崩す
「…驚いたな」
木刀は咲夜さんの顔の横に刺さっていた
(飛鳥の膂力も体幹も、そして魔力も、以前と比べて格段に上がっている)
「すみません…大丈夫ですか?」
2人は起き上がる
「問題ない、こちらこそすまない」
「いえ、謝られる事なんて」
「少々見くびっていた事と、今回の作戦に参加できない事をな」
「参加できないことに関しては特に何も、お父さんの手掛かりが見つかったんですよね?」
「あぁ、鞘の欠片が見つかっただけだがな」
「ですが、みくびられたことに関しては、ちょっとだけ許せません、俺は、夏坂さんの弟子ですから」
「…そうだな、これ聞けばあいつは大笑いするだろうな」
「…」
「わかった、ここから遠慮は無しで行くぞ」
「はい!」
「構えろ」
…
「ありがとうございました…」
「…俺もいい運動になった、暫く合流出来ないが、結とフアソラをよろしく頼む」
「はい」
そういうと咲夜はその場後にして、飛鳥は倒れた
「ハァ…ハァ…ハァ……動けない…」
「だいじょぶですか?」
「フアソラ?」
「立てますか?」
「ゆ、桐谷さんも、どうしてここに?」
「少し前に咲夜さんはから連絡あって、ここへ」
「これたべて!」
白いキラキラとした羽毛を渡される
「た、食べるの!?」
京都の時に爆ぜる羽毛が脳裏をよぎる
「たべて!」
「お水を持ってきたので、どうぞ」
かなり大きい羽毛、口に含んで喉奥に押し込む
味は無かった
「ごっくんした?」
「うんした」
「えへへ」
「えへへ」
「どうですか?」
体はいくらか楽になっていた
「かなり楽になりました」
「では帰りましょうか」
転移まで2時間、あ、風呂入っとこ




