2章33話 十二師
十二師
スタッフの女性に連れられて、両開きのドアの前に立つ
『会議室』
中からは少し話し声が聞こえていた
取り敢えず深呼吸
女性は扉を叩いてコンコンコンと音を鳴らす
「遊部飛鳥様をお連れしました」
「入っていいよおー」
聞き慣れた少年の声が聞こえる
スタッフの女性は軽く会釈して持ち場に戻っていく
「失礼します」
ガッ…(重い、これが重役の扉か!?)
「それ引き戸だよ!」
「あっ、すいません」
すんなりと開いた
(なんで引き戸なんだ)
薄暗い雰囲気、奥に長いテーブルに両サイドに六席ずつと手前にプラスチックの椅子、奥に厳かな椅子が置かれていた
『ホープ第五位 立花欐』
「そこ座りなよ」
「はい」
席に座る直前、立花さんがそばに寄ってきた
「久しぶりだね?元気してた?」
「はい、なんとか」
「緊張してる?」
「めっちゃしてます」
「へー」
「え?」
「あ、自己紹介しようか」
「そういえばまだしてなかったですね」
「改めて、俺は十二師第五位、立花和穏、今19歳、優れた五感により一眼見ただけでバストサイズを見破ることができる殊科をもっている」
「なんですかそれ」
「羨ましいだろ」
「いや別に…」(羨ましい)
「君は?」
「俺は遊飛鳥、19歳だから同い年ですね」
「おーまじか、なら敬語はナシで頼む」
「いや、そういうわけには」
「堅苦しいのあんま好きじゃないから」
「…わかった、最近ちょっと火を吹けるようになった」
「マジ?え、今ふける?」
「魔力なら使うなよ」
「ナプさん?」
手前の藍色の髪の男性が声を掛けてきた
「ここで魔力を使えば大騒ぎになる」
「ああそうだった、ダメだって」
(そうだよな…)
「よろしくな」
「うん」
差し出された手を握り握手する
「時間あって暇だから紹介でもしとくか」
「いいんですか?」
アナログ時計にはpm1:32と表示されていた
(あと30分くらいか)
左の最奥は空席だった
「じゃあ奥からいくよ」
「お願いします」
「左奥はアーサーね、今いないけど、その右が」
厳格な軍服に身を包み、腕を組み目を瞑る体格のでかい茶髪の男性を見る
「彼は第二位、アレキサンダー、コードネームだしそのまま呼んでいいと思うよ」
『ホープ第二位 アレキサンダー』
「雷を操る殊科で広範囲から単体に火力を振りまく災害だね、高いプライドに似合うステータスの漢だよ」
微動だにする事は無かった、ほっと肩を撫で下ろす
空席の隣も空席でだった
「第三位は僕もよく知らないんだ」
アレキの隣に金髪ミドルの女性
白が基調のミリタリージャケットの様な軍服を着て、深く背もたれにもたれ、こちらの様子を伺っていた
「彼女は第四位、リズ・ダルクさん」
『ホープ第四位 リズ・ダルク』
「最前線で拳を振るう野蛮な…」
ペンがレイの頭に刺さった
「コホン、勇猛な特攻隊長で戦場の悪魔みたいな…」
ペンが刺さる
「コホン、戦場の女神、彼女のいる戦線は不敗、男勝りな性格でガサツ」三本目
「短気で」四本目
「推定カップ数はえ…」五本目
「テメェ次に口開いたら首と椅子の位置変えてやるからな」
(えいちか…えふか…)
黄色い怒号が飛ぶ
「でも本当はすごく乙女だからねッ」椅子
椅子のキャスターがレイの額に刺さる
少し首を持っていかれたが、何事もない様に続けた
「大丈夫ですか?」
「これでも手加減してくれてるからね」「うっせえ」
「めり込んでるけど」
「うん、それでこの僕が第五位ね」
「うんで済むのかそれ…」
「さっき一通り話したけど、胸囲絶対目測の殊科により女性のカップ数を一眼見ただけで正確に言い当てることが出来る」
「へ、へぇ〜」
左奥三席は空席で右側三席目に霧月さんがいた
「僕の席の向かいが霧月ちゃん」
ナポレオンジャケットの様な赤みがかった黒の隊服に身を包んでいた
『ホープ第六位 源霧月』
「第六位で凄い反射神経と、他の追随を許さない速度で不可避を回避する凄い子だよ」
「凄い…」
「かなりの人見知りだけど、とても優しい子だよ」
(第一印象が第一印象なだけに、少し怖い…)
空席の隣にやたら露出の多くしかも大きい…、青緑っぽい長い髪に褐色肌の女性が机に頬杖をしてこちらを覗き込んでいた
ほぼ裸同然のキラキラのドレスを着ていてキラッキラのアクセサリーを見に纏っていた
「彼女は第七位、クレオパトラさん」
『ホープ第七位 クレオパトラ』
「なんとご本人、灼熱の太陽を冠する殊科?で、熱を操り敵を燃やすえっちなお姉さん」
片方の手で誘う様に指を動かし挨拶してきた
(工口…)
「おっとりした姉御肌で、推定カップ数は…」椅子
椅子が椅子に弾かれて入れ替わる
「テメェ公共の場で人のカップ数の話すんな」
黄色い怒号と椅子が飛ぶ
「ケーカップ」
クレオさんの口元がそう動いた気がした
そして優しく艶やかに微笑んだ
(あっはこれあんかんやつや)
「んでその正面がラヴィちゃん」
白いフリルのワンピースに白衣を着ている少女
『ホープ第八位、ラヴィ・ナイチンゲール』
「凄い天才の医者で世界でも数十人しかいないヒール使い、の中でも上位の使い手で可愛いくて偉い白衣の天使ちゃん」
「凄い…」
「でもその分他の事には無頓着でちょっと非常識」七本目
「な所が可愛いんだよね」
(どんどんペンが刺さっていく…)
「しかも僕らの一個上」
「年上だったんだ…それ抜かないんですか?」
「うん、で、クレオさんの横が第九位、クレセント速水バナパルトさん」
でかい女性の隣
濃い水色の髪で癖っ毛なのかクルクルと外はねしている
さながらナポレオンジャケットの軍服を着ていて真面目そうな雰囲気をしていた
『ホープ第九位、クレセント・速水・バナパルト』
「1人戦争屋と言っても過言ではない殊科で、それに起因する魔力量はホープでもトップオブトップ」
「魔族って事ですか?」
「違う違う、あーこの話は長くなるから時間余ったらね」
「わかった」
「真面目そうな顔してるけど面白いおじさんだから気をつけてね」
「おじさんなんだ」
「まだ28だ、おじさんじゃない」
「だって、その正面が第十位、織田ゆきさん」
腕を組んで目を瞑っている黒髪ロングの女性
同じ様に隊服を着込んでいる
『ホープ第十位 織田 威雪』
「織田っことは?」
「あーそうそう、彼女は名古屋支部長の妹さん」
(なんか既に知りすぎてる気がする)
「氷を司る殊科で心も体も氷漬けにする凄い人、ドが付くサディストでちょっと怖い」
「へぇ…」
「そんで、あれ?ナポさんクーフーは?」
「知らん」
「一旦飛ばすか、そんでこっちが…」
そして反対側、すぐそばにいる白い長い髪を後ろで結った男性?の方を見る
同じ様で少し和風の隊服を着ていて、椅子の上に目を瞑り器用に胡座をかいてた
「たぶん新米かな、ねぇ、名前かコードネーム教えて貰ってもいいか?」
「…」
その席の後ろで茶髪のかわいらしい女の子がオロオロしていた
「えーと?」
「(こはる!)」
小声で話しかけて起こしていた
ゆっくりと目を開けレイを見た
銀色の雪原の様な瞳
「…白夜叉だ」
『ホープ第十二位 白夜叉』
「しろやしゃ?君も日本から来たのか?」
「…生まれは日本だ」
「よろしくな!」
「…」
「すみませんすみません」
女の子が何度も頭を下げる
「大丈夫だよ、君の名前は?」
「え、えっと、み、宮本椿です…」
「椿ちゃんね!ふむふむ…」
「な、なんでしょう」
「なるほど、君は…」
「!!!」「!!?」
「その言葉を紡ぐのであれば容赦はせん」
白夜の揃えた右手の指先が、レイの首元で止まっていた
「速いね、俺の次に」
「安い挑発には乗らん」
「ごめんごめん、つい試したくなっちゃって、歳近そうだけどいくつなの?」
(更に質問!?凄いメンタルだな!?)
「…」
(そら黙っちゃうよ…)
「得物は?何使うの!?」
「…」
宮本さんと目があったので、お互い会釈した
ドン!!
急に大きな音を立てて扉が開いた?
咄嗟に振り向けば扉が壊れていた
「うわヤッベまたやっちゃった」
「おいまたやったのか、いい加減引き戸だって覚えろ」
「今日は急いでたから仕方ない」
和服を着崩した茶髪ロン毛の大男がのそのそと入ってきた
「言い訳になりませーん」
「いつもギリギリのお前が言うな、まだ時間はあるし言いに行けば?」
「行かなくていいんじゃね?そっちのが出入りしやすいと思いまーす」
「早よいけ」
「へいへい」
トボトボと廊下に出て消えていく
「ところで」
「!?」
「君どこから来たの?ジャパン?」
『ホープ第十一位 クーフーリン』
(あれ?今…あれ?)
「はい、日本から…」
「おいクーフー、戻ってくんなよ」
「せっかくの初対面なんだ、派手に驚かせた方が面白いかと思って」
頭を抱えて首を横に振る
「こいつ変な気配だな?魔族?」
「違う」
「あ、もしかして、連れ去られた子の彼氏とか?」
「…」
わかりやすく動揺する
「えぇ〜ちゃんと護んないとだめじゃん、男だろ?」
(凄い抉ってくるやんけ!?)
「やめろ、その子が可哀想だろさっさと行ってこい」
バナパルトが制止する
「ふぇーい」
「すまない、悪い奴では無いんだが、いかんせん空気が読めなくてな」
「大丈夫です、ありがとうございます」
「で、あいつが十一位のクーフーリン」
「まさか本人!?」
「全然ちゃう」
「違うんだ」
「ただフィジカルがバケモンなだけやね、あと奇妙な術を使うし自らそう名乗ってるからクーフーリン、人懐っこくて俺より戦闘狂いで何故か面がいい、しかも女たらし!小1レベルの知能しか持ってないのに!クソ!羨ましい!」
(勝手にメンタルブレイクし始めた…話題変えるか)
「そういえば速水さんって魔族なんですか?」
「違う違う、単純に掬える水の量が多いって事、まぁ座ろうぜ」
額に刺さってた椅子を抜き取り、そこにレイは座る
「殊科はおたまとか調理器具に例えられることが多いけど、世界に存在する物をある程度形付けるのが殊科」
「形付ける…」
「そんで、ナポさんはバケツって訳、そして魔族は蛇口だね、捻るだけで水がもう大量大量、おたまで掬った水かけられるのと、ホースで水かけられるのじゃあ、水圧も何もかも違うだろ?」
「確かに?」
「しかもあいつらは捻っただけでシャワーになったりジェットになったり、大根をいきなり、こちらが完成したきんぴらごぼうですってわけわからんもん出してきたりするから、困っちょるっちゅうわけ」
「大根が!?」
「俺らが扱える魔力を区別して英力なんて呼んでるけど、本質的にはあまり変わらないんだよね」
「なるほど…え、ホープには魔族っているの?」
「いるけどいない」
「ん?それはどっち?」
「うーん、あ、協力者?同盟?みたいな、ホープには所属してないけど、協力関係の者から非敵対者までまちまちだけど、どれも特別色の黒が付けられてる」
(あかねも黒ついてたな)
「あすかにとって魔族は身近かもしれないけど、魔族なんて滅多に居ないからな?」
「えへー、戻ったー」
ラヴィさんは我関せずと言った感じで資料に目を通していた
(コレが十二師…)
変なロボットが来て、扉を持って行ってから数分後
場の空気が重くなる




