2章32話 芽吹く
前回のアラ
謎の魔族登場、樋口は連れ去られてしまったとさ
前書きは20,000字まで行けるらしい。
芽吹く
夢を見た気がする、全てを失った夢…
「私は信じてるよ」
知っている天井、焼けるような全身の痛みが薄らとある
(なんでこんなタイミングで意識が戻るんだよ、もう少し回復してからにしろや)
ドアが開く
「良かった……」
「咲夜…さん…」
首を動かし、扉の方を見た
「なぜ…まだ生きてる?」
「ひ、酷くないですか?」
「…すまない、遺体を回収したときは既に死亡が確認されていた」
「えぇ怖…」
「それから数日、鼓動がすると報告を受けてな」
「えぇ怖」
「この病院で治療を受けることになって様子を見に来たら目が覚めてた」
「えぇ怖」
「髪の毛は戻らないのか?」
「髪の毛?」
「鏡あるぞ」
「ありがとうございま、ギャァァァア!髪色が…落ちて…ホワイティ…」
白髪に焼かれた様にチリチリだった
あと全身は包帯でぐるぐる巻きだった
「落ち着け」
「フアソラちゃんは今何処に?」
「自宅で寝ている」
「そうですか…」
「…」
「あの…あかねのことなんですけど…」
「…本当に申し訳ない」
咲夜は深々と頭を下げた
「俺が未熟なばかりに、奴らに連れ去られた」
「連れ去られた?魔族だからですか?」
「神降だったんだ」
「かみおろし…ですか?」
「そうだ、と言っても、何も神様が降りてくるわけじゃない、神の如き力を、刹那的に身に宿すことだが」
「神になるんですか?」
「わからない、神降は過去を遡ってみても前例は二件、詳しい事はよくわかっていない」
「そうなんですか」
「人は元来、東京の神隠し事件のように、既存の人智を超えた恐怖を、神やら鬼やら妖やらに例え形付ける性がある」
「茜が神降なら、時限爆弾を家に持って帰るみたいなものじゃないのか?」
「前例が二件と言ったな」
「はい」
「記録に残っている最初の一件はスウェーデンの少年だ。紛争中に神降を発現、その力を利用したい組織によって拷問の末に死亡した」
「…!ウッ…」
「はいバケツ」
考えたくなかった事象を言葉にされた、吐き気を催すが、用意周到さへの驚きで、吐けなかった
「続けて…ください…」
「結局二度と神は宿ることは無かったそうだ」
「つまり…二度と自力では戻れない?」
「…、二件目はノルウェーの少女16歳、同じく紛争中に発現、少し違うのは、、、」
「違うのは?」
「いい話ではない、彼女は子を授かっている」
「子供を…ですか…」
「そして、衰弱のち消滅と記されていたらしい」
「消滅?子供はどうなったんですか?」
「はっきりとはわからない、何者かが隠蔽したのかもしれないが、いずれの二件とも一回目以降に発現した記録はない、ただ、なんらかの…」
「失礼します」
大きい女性の看護師さんが入ってくる
「血圧だけ測らせていただきますね」
手早く指に嵌め、二の腕に巻きつけて測定する
その様子をなんとなく眺めている
「異常はないですね、失礼します」
「ありがとうございます」
「…あすか、あまり見るのはよくないと思うぞ」
「あんたが言うな!狐面が!その化けの皮剥ぐぞ!」
「俺は見てない」
「視線くらいなんとなくわかるわ!」
「見てません」
「こんのエロ狐め」
「残酷な話だが数日が経った今でも、捜索も難航している、正直生きてるのかどうか…」
「樋口はまだ生きてます」
「なに?」
「ぼんやりと…はっきりと分かるんです」
「それは本当か!?」
「はい、なんとなく場所も、結構遠いですけど…」
「そうか、兎に角…生きていてよかった」
…ロンドン ヒースロー空港前
白い日差しが差し込む昼下がり
「という訳で!ウェルカム!イギルぃぃぃぃぃスッ!」
両腕を大きく開いてイギリスの空を謳歌する
「何されてるのですか?」
「イギリスの日差しで光合成を少し」
「なるほど、では私も」
そういうと桐谷さんは両腕を広げて静止する
12月の凍える風が吹く
「とりあえず歩きますか」
黒いベレー帽の上に乗った白いホワホワが揺れる
「2人と合流まで時間がありますので、少し寄り道していきませんか?」
小さなキャリーケースを引いて歩く桐谷さんは提案する
「いいですね、何処か行きたい場所があるんですか?」
「はい、一通り調べてあるので、遠回りしない程度に」
「流石です」
「オペレーターですから」
「案内お願いします」
「お任せください、まずはランチです」
サクサクのサンドイッチを頬張る
「何これめっちゃうまいな」
「…」
美味しそうに頬張っている
「!!、美味しいですね、次はデザートです」
カップケーキのクリームにかぶりつく
「ん〜まい」
カラフルなパウダーのかかった甘い塊はすごく甘かった
「フフッ、口の周りたくさんついてますよ?」
そう言って笑う
ナプキンで口元を拭うが、桐谷さんの右頬についたクリームに視線を送る
気づいた桐谷が中指で掬い舐める
(ここからは有料オプションです)
「まだついてますか?」
「いや、もう大丈夫です」
「そうですか」
「咲夜さんたちはどこ行ってるんですか?」
「咲夜は色彩青以上ですので本部へ先に挨拶と、フアソラちゃんは特殊なので入国したという事実確認が必要で、咲夜と一緒にいます」
『ちょこっと解説、ホープ隊員の国の出入りは厳しく管理されています」
「所属する国がその国の軍事力に直結する為らしい」
「フアソラのような魔族も同様に管理、監視されています、以上』
「もうそろそろ時間ですので、ここでいくつか買って、合流地点に向かいましょうか」
「キャリーケース持ちますよ」
「ありがとうございます」
人の多い電車に乗り込む
「…今日はありがとうございます」
「私も楽しかったのでWin-Winですし、お礼なら咲夜に言ってあげてください」
「咲夜さんに?」
「はい、かなり気苦労なさってました」
「あの人ほんとに16歳ですよね?」
「それを省いても優しい方なので」
「俺も見習わないとな」
無事合流し、ホテルに向かう
咲夜、あすか、桐谷フアソラの3部屋用意されていた
「明日は十二師の方々と神降ろし奪還作戦のミーティングがある」
「十二師?アーサーとか立花さんとか霧月さんとか…後ラヴィさんとかの?」
「飛鳥、結構会ってるんだな」
「言われてみれば…」
「幸いな事にあすかが会ったのはまだまともな人たちだ」
「まだまとも…」
「あぁ、会えば分かる」
人物紹介
フアソラ
女性年齢不詳
好き・たい焼き 犬
嫌い・怖い人 野菜
本物の天使だと言われる少女。大きな片翼と気を張ると出てくる天使の輪。それらから天界から落とされた堕天使だと仮定されている。わんぱくで臆病。感受性が豊か。




