2章30話 神宿る
前回のあらすじ
主人公が死んだ
約3500文字8分程度
神宿る
とある空間内
「この気配、器だったとはな…予定変更だ」
「えぇーでるのぉ?」
「あぁ、必ず手中に収めなければ、折角の均衡が壊れてしまうだろ」
『寄るな』
空気が変わる
脳内に直接響く声
薄暗い大地が赤く照らされる
樋口の体は引っ張られるように宙に浮く
(気配が薄くなっていく?)
樋口の服装が炎に巻かれ変わっていく
基調の黒に白い渦のような模様の羽織りに紫の帯を腰に巻く和装
肉体もかなり大人びたように見える
瞳の色が翠に光る
「………!!、この薄くなっていく不気味な気配!よもや!よもや神降か!」
これまでになくハイテンションの魔族の後ろで霧月と咲夜は困惑していた
「かみおろし?」
「世界でまだ二件しか報告されてない神秘だって聞いた、今回で三件目」
「あれが…神?」
「まだわからない、わからないけど…」
「??」
『我は貴様が嫌いでね』
「どっかであったかのぉ?」
地響きが起こる
―創世剣―
樋口?を中心とした六角形の角の地面が隆起し、溶岩の大剣を生み出す
「マジかよ」
切先が向く魔族に向く
その大剣を一本射出する
軽く避けたかと思えばその剣が大爆発を起こした
砂埃から何かが吹き飛んでいく
(爆ぜる直前まで魔力を感じなかった?いや、違う、そもそもあの剣は魔力で出来ておるのか…)
右上半身が吹き飛び焼け爛れていたが、それすらも回復していく
「ッ!」
「タイ捨我流、居合―」
―飛燕―
―上霞―
飛来する男は、伊村の攻撃を避け、ほぼ一方的に切り裂いた
「久しぶり、伊村」
その表情は、穏やかに見える
「久しぶりだな!……えっと…」
―鏡花水月の構え―
「あっ!たしかッ…」
遮る様に刀を振り抜く
相手の攻撃は全て避け、一方的に斬り続ける
「……ここか」
―獅舞―
急に角度を変え、自分に傷を受けながらも、脇腹を斬りつけた
(!!)
少し動揺の色が混ざり、いつもより機敏に距離を空けた
「さすがホープ最強の剣士、一撃でコアを破壊するとは」
レイは距離を取り霧月の側による
「霧月ちゃんこれどういう状況?」
「神降ろし、樋口が器でこちらに敵対の意思はない」
「あれが樋口さん?それは共振かな、どれくらい持つ?」
「後五分ならなんとかなる…」
「咲夜さんもいける?」
「あぁ、同じくらい」
「じゃあ行くぞ」
―獅子奮迅の構え―
―四景・壇ノ浦八艘飛び―
「これわまずい…本気出さないと殺されてしまうな、よぉ〜し」
赤い瞳が夜の闇に、不吉に光る
「殊科を解放しようぞ!」
―一ノ太刀・極―
魔力が地面から集約し伊村に流れ込む
二人一斉に斬りかかるが、軽く触れ合っただけで弾かれた
レイは、敵の攻撃を最小限に抑えながら、攻め続け、霧月は全ての攻撃を交わしながら、攻撃を誘導する
攻撃が通るたびに相手の動きが遅くなっていく
(押し斬る!…、なんだ…嫌な予感が)
―創生炎―
両者大きく飛び出して躱す
2人のいた場所に業火が放たれ、地面は溶けて沸々と沸いていた
「地面が…」
「溶けておる…」
「霧月ちゃん敵対してないんじゃなかったっけ」
「敵対はしてないけど、容赦ない」
「そゆこと?」
再び魔族に大剣が飛来する
大袈裟に避けて爆発すらもいなした
(まずはあの女神から無力化するかのぉ)
逃げの姿勢から一転し、空中の神に矛先をかえる
『…』
「先に厄介な神を叩くつもりか?」
樋口?の背中側、八角形の角に溶岩の塊が出現する
ゆっくりと前側へ移動すると強い光を放った
正面から魔族は斬りかかる
―うわがす……
八つの溶岩から放たれた赤い光線は中央で混ざり膨れ、前方の魔族を焼き払う
―上霞―
―廻天ノ刃―
背後からの強襲
咲夜は遠隔の刀を全て重ねて阻んだ
「なんじゃと!?」
振るわれた刀は防御を砕き首を捉えた、だが、あまりの高熱に刀は溶けて燃えてしまった
『不敬な』
冷たい翡翠の瞳
放たれる熱波によりそれは焼け落ちた
「ヌゥ…コアを二つも失ってしもうた、じゃが…」
『…』
神は少し揺らめいた、左手で顔を押さえる
(限界が近いのか?)
右手を掲げた
残りの大剣、周囲の魔力、大地が渦を巻いてそれに吸い込まれていく
擬似的な太陽、誰もが最後を予感した
「退避!」
レイがそう叫ぶ
足を補強して居た魔力が耐え切れずに壊れ、霧月の動きが急に止まった
「まずい」
止まった霧月を狙い、伊村は動いた
霧月を庇い、レイは背中に渾身の斬撃を受けた
「ッ!!」
「あれ?もう終わりかのぉ?」
咲夜は魔族を払いのけ、霧月を抱える
「ほいさっさと逃げる」
レイは2人を抱え高速で逃走する
両手を広げ立ち尽くす魔族
「せっかくじゃ、どんなものか一度味わっておかんとな」
美しかった街並みは崩壊し、所々に血の跡、鉄の匂いと焼け焦げた匂い
京都の中央に巨大なクレーターが出来た
一点を除いて
神の真下、一部の瓦礫が崩れ、飛鳥が顔を覗かせる
樋口はゆっくり落ちていき、突如現れたそれらの前に立ちはだかる
「ハァ…………ハァ………」
肩で息をする程度の虫の息
翡翠と潤朱色が点滅する
肉体も既に元に戻っていた
「思わぬ手土産だな、殺すなよ」
傍観していた月城が現れた
「僕たち三人でですか?」
一緒にいた桐野も隣に並ぶ
「そうだ…黒夜叉の奴は興味がないの一点張り、アインのやつもこれ以上貸し出すのは」
「俺に解剖させてくれんなら話は別やで」
「うわ」
「アインさんいたんですか!?」
「当たり前やん、ええ材料落ちてないか見とかな勿体無いやんけ」
「本来ならお前だけで十分なんだぞ?」
「儂は今回えむぶいぴーじゃ」
「で、どうなん?俺にくれんのけ?」
「必要なのは体だけだろ?」
「そうやな」
「こっちの目的が終ればその後くれてやる」
「まいどおおきに、ってあれまだ動いてるやん」
「受けれるか?」
「ウソじゃろ?」
―創世炎―
―斬流ノ太刀―
広範囲、出涸らしの様に薄く、温度の高い炎
「あっつい!」
「そうか…なら適当に冷やせ」
「今の反応でだいぶ冷えた…儂の心が」
「強めの催眠を使う、まだ耐えれるよな?」
「無論」
―創生炎―
―斬流ノ太刀―
炎を霧散させる
「結構壊されたし、この刀も長くわ持たんぞ」
「この服高いねんから火の粉飛ばすなよ」
「そうだな…、後三回くらい受けてくれればいい」
「凄いッスししょー!」
「本当に、人使い荒いから困る」
―創生炎―
―斬流ノ太刀―
「あつ!!」
「大丈夫か?」
「後一回です!ししょー!」
「儂火ぃ苦手なんだよな」
樋口は目の前の地面に手を伸ばし、ゆっくりと、確実に持ち上げた
「ごめんこれは無理」
地面から炎が溢れ出し、地面から出てくる茶黒い色の岩石と混ざって剣を形作りだす
―創生剣―
虚ろだった瞳から殺意が溢れた
「流せ」
「……後で血をくれるならいいぜ」
「ん〜〜〜…はぁ、良いだろう」
「即決してくれよ、あと剣貸して」
「…くるぞ」
「おうよ」
それは勢いよく振り下ろされた
「鹿島新当流」
―霞ノ太刀・上霞―
目の前の剣は、霧散した
「!!」
「ふぅ…あっちいぃぃ!!!もう耐えられん!水出してくれ」
「あいにくだが、俺程度の水なら出したところですぐに蒸発するだろ」
衣服も焼け落ちて行く
「な!なんで服が焼け落ちてんだ、こういうのは脱げない決まりがあるだろうが?」
月城は目を背けながら言う
「何たじろいでおる女の裸体ごとき、限度を超えた衣服なんかすぐ焼けるじゃろうて」
伊村は指を刺しながら笑う
「ウヒョ〜〜なんか申し訳ないなぁ!」
「とても年上には見えん反応やな、リーダー」
両手をぶら下げ、かろうじて二本の足で立ちつくす
「ハァ……ハァ…………ハァ……」
「取り敢えず、なんか被せてやれ」
「えぇ〜リーダーがそのまま抱いて帰ればいいじゃないですかぁ」
「僕が担ぎましょうか!?」
「お前はいい」「お主はよい」
「は…はい」
「桐野、スクリムさんに連絡を入れろ、本部へ帰還する」
月城は樋口に向かい歩み始めた瞬間
「…!!」
何かが反対側に落ちた
「ずっと何者かに瞬間移動を妨害されていた」
『ホープ第一位 アーサー』
「それを易々と渡すわけないだろ、暗愚魯鈍」
「後から来て何を威張れるんだ?ノロマ!」
「妨害までして余程俺が怖いと見えたが、そこまでの知性はないか?」
『ホープ名古屋支部長 織田智慧』
「京都支部の要請により参上つかまつった、神降ろしなんだって?それに部下がお世話になったみたいだな」
「あぁ!実に美味しかったぞ、じゃが、まだ未熟でなぁ、生産者が収穫時期を間違えてしもうた様じゃ」
「おや、未熟であったのに、美味と申すか、余程舌が飢えて貧相なんだな!」
『ホープ第五位 レイ』
「戻ったよー!ってあれ?なんか増えてる?」
「え!僕のバッティングあいつなの!?」
「しゃーないやんけ、でも俺そもそも前線で戦う玉ちゃうし、年齢近そうやしええやん」
「え、俺今回ガキのお守りまで?」
「はいキレた、潰す!」
「そやその意気や、応援はしてるで」
「…」「…」
互いに駆け出した
衝突する間際
「―#/¥3=1々j°g―」
白い仮面と黒いシルクハット帽が横目に見えたかと思えば
樋口が鋼の荊棘に囚われ、棘が全員を襲った
人物紹介
立花欐
男性19歳4月1日
好きな物・刀 女性 美食家
嫌いな物・責任 汚れ
ホープ随一の剣才、対人において左右に出る者はいない。特出した五感は剣筋の迷いを晴らす、戦闘に特化した男。給料の殆どを食費に費やすほど目がない、魔族に関しては飛鳥と同じスタンスである。




