2章28話 幻想と踊る
前回のあらすじ
京都が戦禍が巻き起こった
4500文字、約8分
幻想と踊る
上京区、タコが暴れて更地になった戦場にて
嫌な金属の打ち合う金切音が、響いていた
「遮那王流離譚の一話、行くよ、赤丸」
隊服の霧月は下段に構え、意識が洗練されていく
―絶技・天神縮地―
霧月が少し体を動かした瞬間に、直線上にいた男は、大きく跳び上がった
高速では言い表せない速度で、光が一直線に引かれるが、敵は既に回避していた
「流石だな、全く目では追えない速さ」
「……」
「あぁ、嫌味ではないぞ?ホープ六位の源霧月、その若さでこの実力…
「縮地…」
「うぉっと」
「つきしろそうまだな」
「知っているのか、嬉しい限り…ッ!!」
「煩い」
甲高い音が一瞬響いて直ぐに止む
「君の殊科は少し厄介だ、足止めのついでに、話でもしな…」
蹴り飛ばしてすぐに横に大きく跳び、側面から斬りかかる
初撃を綺麗に往なされカウンターが入りかけるが、寸分の所で回避し距離を取る
「致命傷になり得る攻撃は全て躱す、それが遮那王の恩恵である君の殊科」
「やっぱりキモい」
「ハハッそれは構わないが」
「お前小物、赤目の魔族はどこ?」
「殊科が無ければ、五回はお空ですけどね」
「…少し焦ってた、けど、もう落ち着いた」
刀が綺麗に薄緑に光出す
「これは俺も本気を出さないといけないかな」
そう言うと眼帯で左目を隠した
「さぁ、殺し合いに洒落こもうか?」
――武家屋敷の庭
テニスコート2面分ほどの広さに溜池
京都の支部長、佐倉とボロ雑巾が対峙する
「あっれぇ確かに串刺しにしたはずだけどな?」
ボロ雑巾が不平を漏らす
「出来ていなかったと考えるのが妥当なのでは?」
「うーん…まいっか、もう一度切り捨てればよい」
「簡単に言ってくれる…」
首が胴体と離れるが、光に霧散し、新たな煌が現れる
「此処でお前は仕留めなければならぬ」
「出来るのか?」
「あぁ、今宵は俺と踊ろう、振え」
―resonance―
凄まじい光を放つ、溢れ出す虹彩で剣を形作る
「お主、今何と共振を?」
「さぁ?強いていうなら我が意志と…参る」
「少し力を見せてやる」
伊村は目を見開き、紅く光る瞳で煌を威圧するが、あまり効果はなかった
「あれぇ?効かなかっおっと……、なるほどのぉ?ずっと!…、違和感が、よっと、……あったんじゃ」
煌の猛攻を凌ぎ、強く蹴り飛ばし距離を空けた
「お主、人ではないな?肉体のない人形、本体はお主の後ろ」
「ふん、もう隠す必要はないな」
「白蓮の名に賭けてお前を倒す」
「我が部下の仇、未来の危機分子を」
「ここで排除させてもらう」
砂埃から三人も増えた
「大当たり!でもこんな時間かぁ、目的は果たしたし、あっちはうまくやっておるかのぉ、ッ!!」
伊村のコアは綺麗に全て壊され紫の霧に消えた
(なんだ…存外あっけない…)
「銀次、すぐに舞鶴に向かえ」
『え?わかりました、ひかるさんからの連絡なんてめずら…』
途中で通信を切る
(念の為、他にも向かわせておきましょう、!?)
「我が君!?」
3体は霧散し残った煌は急に飛び出した
「こんにちわ〜」
温和な京都弁の挨拶と共に、髪色が赤と青の派手は青年が襖を開けて顔を覗かせる
「!!」
「そない驚かんでも、想像どーりなことが起きるだけやて」
紫式部は突如開いた襖の方を向く
「あなたは…」
「そのとおり、紛れも無い敵やで、あんた自身には戦闘能力が無いゆうてたから俺でもいけるおもてな」
「何が目的ですか」
「あんま時間無いんやろ?、わい幻覚を一定の範囲の奴に見せることが出来ねんけど今の俺、どっちやと思う?」
「何故それを言うんですか?」
「…なんでやろな?」
――
月城は中京区の方を少し確認して、対峙者に視線を戻す
「もう用は済んだ、もう行っていいぞ」
「…」
霧月は少し不満な顔をして月城を睨んだ
「な、なんだよ…」
「何か企んでる」
「そういえば光源氏って女たらしなんだって?」
「?」
「まさか君も口説かれたことある?」
「いきなりなんの話…まさか!?」
「先で待ってるよ、英雄」
(久しぶりの運動は体に堪えるな…)
そう言うと月城は紫の霧になって消えた
「クッソ!」
すぐに霧月は式部の元に向かった
―同時刻―
東京と山梨の県境
朝日が望む森を、白と黒の英雄2人が歩く
異様な雰囲気
『ホープ第1位 アーサー』
「魔力濃度は随分と濃い様だが、手練れの魔族ではないな」
『ホープ第5位 レイ』
「新手の神童かな?殊科が発現したとか」
薙ぎ倒された木の先端を跨ぎ
アーサーは抉り取られた様な木の幹を触りながら呟いた
「その様だな」
そのまま2人は歩みを進める
段々と周りの木の幹が低くなり、木自体が減りそして
「発現したのは最近、故にここで練習でもしていたか」
木々で遮られていた朝日が2人の背を叩く
無数の小さなクレーターが出来ていて、生えていたはずの木々はそこになかった
さらに奥、山があったとされる場所には、巨大なクレーターが代わりに鎮座していた
「これ、まじで神童っすか?にしたらやりすぎじゃないっすか」
「…」
「…すいませんアーサーさん、俺、京都に向かいます」
「いいぞ」
「そうですよね、東京も危険である事には…、え?」
「これは別件の可能性がある、わざわざ人気のない場所を選び練習をする。この情報だけで断定できないが理性的だ、そして少なくとも魔力が原動力、であれば俺の敵ではない」
「ありがとうアーサー」
「ここからは俺1人で調査を進める、行け」
レイはその場を後にした
(とは言えあの破壊力…、火力だけなら俺に…あるいは…夜ももう時期更けてくる…残穢もこれだけ濃ければ直ぐにでも見つかるだろ)
「目的がなんであれ、魔族であればねじ伏せるまで」
――
霧月は足元の悪い中を駆けていく
(心配していないとは言ったけど、あの夏坂を…、紫式部を知っているとはいえ、伊村は相当の手練れ…ん?)
近くに少し大きい気配を感じ視線を向けた先には、夏坂の弟子と、柿色髪の少年が打ち合っていた
(!?)
柿色の少年は距離を無理矢理取ると、急に構えた
(気配が重くなりやがった…近づけば軽く天に羽ばたけそうだな…!?)
ものすごい勢いで突っ込んで行く何かが横目に映る
次の瞬間には、敵の正面
「この一撃は必殺…居合―」
敵はすんでの所で抜刀しなかった
次の瞬間、霧月は敵のやや後ろに跳び上がり上空に
「…―ニ景…
「―四条烏丸ー」
一ノ谷逆落とし―」
身を翻して急降下し、敵を襲う
敵は振り向き様に居合を放つが、受けきれず吹き飛ばされた
「霧月さん!」
「まさか…渾身の一撃ですら敵わないとはね、イテテ…」
少年は起き上がりながら言った
「君たちも支部に向かって」
「でも、あいつは?」
「…今は式部が心配」
「りょ、了解です」
「…はぁ、足止めは此処までかぁ〜、でも、今度会ったら決着をつけよう」
そう言われたが無視して後にする
「彼を放っておいても良いんですか?暴れたりは…」
「やつらの目的は足止めと陽動、暴れたりしないと思う」
「男の友情ってやつなのか?」
「違うかな、足止めと陽動ってことは、別の目的があるって事ですか?」
「ホープの戦力を削る事、そして紫式部の暗殺」
「佐倉さんじゃなくてですか?」
「先に行く」
霧月はそういうと先に行ってしまった
直ぐにその背中は見えなくなる
(はっや)「早いねぇ…」
「結さん、俺たちは佐倉さんの館に向かいます」
『了解です、フアソラは既に撤退させています』
『こちら柳生、了解した、もう少し狩ってから向かう』
「了解」
中京区よりも少し北
夕暮れに差し掛かり、空が赤く変わっていく
入り口には白蓮の秘書と思われる女性が、血を流して倒れていた
「…」
きらきらの王子の姿は無かった
「式部!」
扉を開ける
腹部から血を流しうつ伏せに倒れていた
「大丈夫か?」
「私は…大丈夫…」
『ジジジジ…舞鶴支部に奇襲!直ちに援護を!』
「舞鶴?まさか!?」
「…わかった、『私も向かう』…待ってて」
そっと頷いた式部を後に北へ向かった
高層ビルの崩れた上部
ボロ雑巾と
「通信されたか?もうバレたな」
「外にお迎え来てるよ?」
「ここまで60キロくらい、大体4分弱だぞ」
「余裕じゃな」
「ここまで用意したんだ、わかってるだろうな」
「わかったわかった、遊びは無しじゃが、お主に命令されて本気を出すのはこれっきりじゃ」
「…頼むぞ」
魔族は壊れたエレベーターを落下していく
ビルの入り口に三人の男が立つ
「えすでぃーかーどってなんすか?」
『三白家 色彩青、宇治藁 最上』
金髪セミロングにセンターは分けの青年が、身長ほどの大鎌を地面に立てながら問う
「知らんかったのか」
「がぶさんは知ってるんですか?」
「まったく、京都支部の隊員ならそのくらい知っておけ」
『三白家 色彩青、百々女木 牙武』
短い黒髪を逆立てた四角い眼鏡の青年が気怠げに答えた
「ズバリ、すごくでかいかーどだ」
「なるほど!」
「緊急の任務は常に急ぎである」
「ヴィヴィアナさんが倒されたってほんとなんすかね?」
「本当のようだ、奇襲をうけたらしい」
「そんなうちらんとこザルだったっけ」
「そうじゃない、今回俺たちはまんまと釣られたわけだ」
「そんな事、俺の輝きに比べれば些末な問題だ」
『三白家 色彩紫、鉱 輝煌』
金髪で青の瞳、白のマントに身を包んだ端正な顔立ちの青年が後ろから歩いてくる
「きおうさん!やっぱ眩しいっすね」
「当然だ、もがみ」
「はい!」
「がぶ」
「はい」
「急ぐぞ、今回は緊急だからな」
「「「!!」」」
「わざわざお出迎えかのぉ」
ビルの中から1人の少年が歩いて出てきた
「戦闘体制」
「貴殿らにはすまぬが遊んでる暇は無いのでな」
赤い目が笑う
「来るぞ、総員構え」
「―奥義………
「流石、戦闘力に特化した男」
「はぁ、少し疲れたのぉ」
「目的は達成した、俺は直ぐに引かせてもらう」
「儂は式部の遺体でも回収しに行こうかね」
2人の姿は一瞬で消えた
「!!」
遅れて霧月が登場する
血に塗れて倒れた三人の姿
「おい、起きろ!何があった!」
大鎌の側に倒れた少年に声をかける
「カハッ…」
血を吐き出す
「生きてる」
「霧月さん…」
「聞こえてるぞ、何があった?」
「赤い…目の…魔族だ……です…」
「赤い目?小さい侍か?」
「はい…1人に…一瞬で…2人は!?」
「…」
「…僕のせいだ」
「違う」
「きおうさんは、僕を庇って!」
「悲しむのは後、それはどこに行った?」
「式部さんがどうとかって…」
「私を信じて、今は回復に集中して」
「……」
こうしてまた来た道を引き返す
薄暗くなった空、式部の屋敷
「やっとついた、大丈夫ですか!?」少し迷った
飛鳥は入り口で倒れている女性に声をかける
返事がない、ただの屍のようだ
「…」
「あすか、今は先に進もう」
「うん…、そうだな」
屋敷の中を進む
(確かこっちに…)
「飛鳥!」
「!!」
「?」
樋口の呼び声
扉の前、赤い目の視線がぶつかる
「おや?お主は魔族じゃな?」
「お前!」
フラッシュバックする記憶
雲を掴み飲みこんだような胸の内
「それとこんなことにいたのか、探したぞ魔族よ」
魔族の視線は常に魔族に
飛鳥のことは眼中にないようだった
「飛鳥は式部さんをお願い、私が足止めするから」
一歩前に踏み出す
互いの眼は徐々に光彩を放つ
後書き暫くは人物紹介チャンネル
源霧月
17歳5月22日
好きな物・可愛いもの 将棋 観葉植物
嫌いな物・人 嘘 勉強
ホープ第六位、その殊科は致命傷を回避させる。華奢な体で高速移動し敵を切り刻む。極度の人見知りで警戒心が高く、そもそも口数は少ないが、元は明るかったという




