2章23話 植栽
前回のあらすじ
町の人が突如消えた不可解な事件を追えば、そこにいたのはあの魔族だった
4000字弱8分程度
植栽
「切る!」
「援護します」
一気に距離を詰め、魔族の首を目掛け剣を振るう
軽く避けられ反撃されそうになるが構わず斬り込む
空いてしまった隙は、河井さんの銃弾で埋め、隙を作り撃ち抜いてもらう
できる最大限で、崩しに掛かるが、その場からは動かない
前に詰めては蹴り返される
敵は何処か上の空だった
(ならば!)
刀を逆手に持ち、魔具を取り出して構える
少しこちらを見た気がする
「つまんねぇ」
不意に吐かれるその言葉は幼い残虐さを含む
銃弾が敵の頬を撫でる
「まずはそこの女じゃ」
急に加速する刺突、切先は彼女の顔へ向かう
河井はそれに横から弾丸を打ち込み軌道を逸らすと、2丁目を腰から取り出す
切先のそれた魔族はその場で停止、刀を振り上げる
それの両肘を撃ち抜いて前腕を落としたかと思えば、2丁拳銃を合わせた
「なんじゃ?…」
―合成銃―
2丁拳銃が一つの大きな拳銃に変わり、頭部に向け放つ
顔の上半分を消し飛ばした
「強い…!!」
「あーあ、結晶一つにどれだけの人間が必要かわかるか?」
合成銃は狙いを定めたまま
ゆっくりと頭部と前腕が再生する
「まだ!?」
背中から心臓を貫くように刺す
「大体千人くらい必要なんだよ?」
「こいつ!」
「だのに、…」
「「!!」」
気づけば河井の頭を握っていた
合成銃を片手で握り潰す
「どう責任とってくれるんじゃ?」
「クッソ!」
一心不乱に切り付けるがこちらに構う様子はない
「ワシは女子が好物でな、目が無いんじゃよ」
服を一枚ずつ破いていく
「お主なら百人分くらいにはなるかのぉ?」
「放せ!」
背後から切り付けるが、相手にされなかった
「うるさい」
軽く殴り飛ばされる
「まぁ、ゆっくり味わってやるからのぉ」
「「放せ」」
「お主…」
振り返る魔族の赤い瞳には、身体の随所が発火した青年の姿
飛鳥はいつぞやの魔族を思い浮かべる
素早く距離を詰めて不細工な型で上段に構え、一気に距離を詰める
―篝火―
「面白い!!」
「ッ!!!」
振り下ろした刃は、片手で握られ止められる
刀から火が溢れる
「みつけた」
河井が放った銃弾は魔族の右太腿を貫通する
「!!」
その瞬間刀を握る手が緩み、持つ腕を裂いた
「チッ」
魔族は手に持った餌を飛鳥に投げつける
「大丈夫…ですか?」
「えぇ、私は何とも…飛鳥くんは?」
「ハァ…大丈夫です、それよりも」
「少し、遊びすぎたようじゃ…」
魔族のさっきまでの楽観的な雰囲気が重く変わる
(守ら…ないと…)
空間が激しく音を立てて揺れ動く
「…鴨が到着したようじゃ」
「閻巻浄土、閻魔刀―九魂炎斬―」
巨漢が上から斬りかかるが、軽く受けられていた
夏坂はすぐさま離れた
青白い炎塊が続けざまに敵に降り襲う
大爆発を起こしたが、煙から現れた敵は服すらも焦げていなかった
「結構本気で叩いたんだがなぁ」
刀というよりは、サーベルのような、真っ黒い得物を見ながら愚痴を溢した
「夏坂さん!…」
「よくやったぞ飛鳥!あとは俺がやる」
「俺もやれる…」
「だめだ」
いつものふざけた雰囲気無く、今までにないほど殺気立っていた
「はっきり言おう、まだ足手纏いだ」
「ッ…」
そこまで言われると従うしかなかった
「遅くなっちまったな、来た道戻れば帰れんだろ」
「後は任せましょう、うちらのリーダーを信じて」
秘書に抱えられて離れて行く
大きな背中が小さくなっていく
「わぁお!久しぶりじゃないか?」
「お前なんか知らんぞ」
「ちょっと弱くなった?」
「歳重ねんてだよこっちは」
「その分鈍くなるんだよなぁもったいねぇ」
「研ぎ澄まされんだよ」
「ちょうど苛々してたとこだし、遊ぶよね?」
「はっ、俺もちょうど部下やられてブチギレてたところなんだ!」
「―極道輪廻―」
紫の刃を地面に叩き込んだ
地面がひび割れ、所々から火を噴いた
「さぁやろうや」
「うん!」
空間の四隅から赤く光る小さな結晶が魔族に向かう
「―完成系・Core One―」
二人は爆発音を背に走り続ける
再び襲いくる違和感を抜けると、裏路地から大通りに出ていた
「河井!飛鳥!!」
「酢豚さん…」
酢豚と野崎が、出口で待機していた
「良かった、無事だったんだな、背中に傷が…」
「遊部くんめっちゃ焦げてるけど、痛くないか?」
「…すいません俺戻ります」
「遊部くん?」
「了承は出来ません、団長を疑ってるんですか?」
「違います」
「ではなぜ…」
「敵はホープを壊滅させることが目的だと言っていました」
「そうだけど…」
「ここで僕が逃げてもいずれ戦う事になる、だったら今叩くべきだと思うんです!」
「…よし、行って来い!」
「酢豚さん!?」
「こんなカッケーこと言って行かせないのは同じ男として出来ねぇ、本当に情け無いよ俺は…、若い可能性を信じてやりたい」
「勝機はあるのか?」
「野崎さん!?」
「はい、今、凄く調子が良いんです」
「よし行ってこい!」
「…団長を頼みます、必ず二人で生還してください」
「了解!」
(勝算がないわけじゃ無い、あいつは俺に魔力があると言った、それにさっきは俺も確かに感じた、肌は焼き焦げたけど…)
「…行かせてよかったんですか?」
「あぁ、正直不安さ、だが、ここで行かせてやらないと、あいつにはダメな後悔が残ると思ったんだ」
「…」
「これは俺の経験談な」
河井と野崎は黙って入口を見た
「頼んだぞ、坊主」
凄まじい爆音と爆風が発生した
ちょうど決着の様だった
砂埃が静まる
夏坂さんは打ち伏せられていた
「やっぱ全盛期には劣るな」
「…」
敵の刀から血が滴る
「夏坂!」
赤い瞳が此方に向けられる
心臓の鼓動が大きく唸る
「あれ?戻って来たの?、ラッキィ」
「あすか!?…なんで…戻っでぎだ…」
刹那の間に敵の刀が目の前に迫る
(こいつは燃やす!)
足元から火が湧き上がり、飛鳥を包む
抜刀された刀身は火を纏い紅く光る
力一杯切りつける
全身が発火し、焦げが広がる
「今は倒す事だけ考えろ…」
不思議と地獄のような空間は心地よく感じた
敵の受けた刀を砕き、吹き飛ばす
「驚いた、流石にもうこの鈍じゃ打ち合えないな」
折れた刃先で手首を切りると、血が変形し刀を成した
「上出来じゃん」
赤く光る刀と紅く光る刀がぶつかる
「俺も少し本気出すよ、不足なしってね」
完璧なタイミングで振るわれた血刀は、あすかの刀を両断し、体を切りつける
「今ので裂けないのか、そんな硬かったっかお主」
ただ、調子は上がっていく
返す刀は首元の空を切るが、確実に傷を与える軌道を描いた
「飛鳥ぁ!」
力無く起きあがる団長を見る
「全く、情けねぇ、、、」
夏坂は一つ目の大きな巻物の押え竹を引っ張って、本体を投げ、限界まで伸ばす
「今気づいたが、それ借りもんの力だろ」
「…」
「使いたくなかったが…これが最後だ!」
大きく深呼吸をする
「さぁ!死を名乗りなぁ!」
巻物を手一杯広げる
「慄え!」
―resonance‼︎・獄門解放―
夏坂の傷口が焼けていく
膨大な熱波を放ち、周囲の温度が上昇する
結界が揺らぐ
「ここからが本番よお!ついてこれるな!あすか!」
辺りに振り撒かれた夏坂の魔力が更に勢い付く
折れた切先に魔力が固まり刀の形を成す
「まだあんじゃん!やろ!さぁ!来いよ!」
「おぅ…、……らあッ!」
夏坂の黒いサーベルの様な刀が、伊村を軽々と吹き飛ばす
飛鳥はすかさず追撃をかける
刀は溶けて無くなっていたが、振るたびに魔力が放出され、敵を叩く
「まだまだまだぁ!」
さらに踏み込み、吹き飛ばす
荒ぶる炎がニ本目の刀を形成する
「魔力を刀にできんの?!」
「何処見てんだ!」
「全部だ
―中極意・霞ノ太刀 突留― 」
「フッ、捕まえたぜ…」
夏坂腹部に刀が貫通しているが、お構いなしに剣を振り下ろす
「刀が抜けぬ」
伊村は手放し距離を置く
「まさかここまで…!!」
「ッ!!」
左手の魔力で形成された刀を逆手に持ち切り掛かる
素早い2連撃はガードを打ち砕き、重い一撃がコアを直撃する
「ッ!!………一人落としたし、今日はお終い!」
夏坂は片膝をつき、体重を得物に預けていた
「逃がさ…ない!」
「止まれ!」
―磯波切―
斬撃の波があすかに命中し、複数の切り傷をつける
「ッ!…」
「これで切れないの凄いね…、!?」
(魔力を刀身に込めて…)
炎の刀身は、更に白く強く発光する
大きく振り上げた時、あたりの地面から炎が渦巻き、刀身に吸われていく
―篝火―
「行け…」
「なッ!?」
伊村を巻き込み数キロ先まで焼き払う
赤い結晶にヒビが入り砕け散った
止まらない炎は見えない壁に衝突し、空間が歪み始めた
割れた地面は徐々に収まっていく
二つ影が向かってくる
「夏坂さん!」
「飛鳥!?」
飛鳥の体は全身が熱く、火が点在していた
樋口に抱えられる
「飛鳥!…飛鳥!」
「茜?」
「飛鳥!良かった…」
「おい起きろ!お前重いから置いてくぞ!おい!」
「夏坂は?」
咲夜が必死の形相で揺さぶっている
「そんな…お前強いんだろ…起きてくれよ…」
「…はッ…、無茶言えよ」
飛鳥の意識は朦朧としていた
「…、行くぞ!」
ゆっくりと抱え起こす
「はぁ……最後だ…よく聞け、飛鳥…」
「娘さんはまだ見つけてねぇんだろ、一緒に酒飲むって約束は破んのか?」
「はは…はぁ…」
吐く息は、目に見えて弱くなっていった
「夏坂さん!」
二人を担架の上に寝かせる
「私が応急処置を…!」
河井の手を握る
「もう良い…」
「何を!」
「最後だ、言う事聞いてくれ…」
「貴方はいつも!」
「俺の一周忌にゃとびきり高い酒で乾杯してくれや…」
「もちろん夏坂さんの奢りって事でいいんだよな?」
「当たりめぇだろ、有り金全部…いや、半分くらいは娘に渡して欲しいと織田さんに伝えてくれ」
「夏坂さん!俺いやです!まだ教えて欲しいことが山ほど…」
「テメェは大人になりやがれ…ツナ」
「ヒィィィィィィィィ」
「ったく、それと…ハァ…ヤツは吸血鬼だ…まだ…生きてる」
「お前はいつも、いつもそうだろ」
「ハッ、そうだな」
「…………………」
呼吸が、握る手の力が抜けていく
遠くを見る咲夜の表情は見えなかった
「待って…待ってください……」
「この力は…飛鳥に……」
全身の力が抜けていく
焦げ臭い匂いが鼻を触った
補足ちゃんねる
飛鳥は魔力を内包しているわけじゃないよ!耐性が無いから皮膚が焼かれちゃってるんだ!痛そー!




