2章22話 閑散とした町
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修行が始まってから約1ヶ月が経った
文字数3542字 所要時間8分程度
自分の為に細かい戦闘描写とか書いてるので、その辺は更に流し読んでもらえたら楽だと思います
―閑散とした町
8月20日
残暑の茹だる夏の昼下がり
飛鳥は野外での訓練に駆り出されている
「暑すぎるだろ!」
「お前…魔力持ってたのか?」
「は?」
タンクトップから立派な筋肉が見えた壮年の男が、懐疑的な表情で聞いてきた
「な、何言ってるんですか夏坂さん、頭茹で上がったんですか?」
「いやぁ、今、確かに…」
「…?、気のせいじゃないですか?」
とは言いつつも、冗談を言っているようには見えなかった
「まさか!?!?魔族の娘とセッピーしたのか!?」
「んな!?!?して、ねへぇわ!」
「ケッ、してねぇのかよ」
怪訝そうな顔で唾を吐く
「な、なんだよ…」
「じゃあ粘膜接触したのか!?」
「してねぇって!」
「細菌交換したのか!?」
「し、て、な、いって!」
「ケッ!腰抜けめ」
怪訝そうな顔で唾を吐く
「う、うるせえよハゲタコ!急に何だよ!」
「じゃあ気のせいかもな、よし、休憩が終わったら麓まで十往復だ」
「はぁ?セクハラだしパワハラだろ」
「別に俺は教えてやらんくてもいいが」
「わ、わかったよやってやるよぉ!」
そう言ってなだらかな坂道を走って下っていく
「…」
その間夏坂は、巨大な岩を持ってスクワットしたり、昼寝したり、剣を降り下ろしたり、二度寝したり…
夕暮れ
「あと一往復残ってるぞ」
「ヘェ…ヘェ…ヘェ…」
「まぁ無理か、よし、俺をおぶって山を下るんだ」
「や、やってやるから乗れよ」
「いやー楽でいいな」
「重すぎるだろ」
「おい、あんまり体重のことを言うなって」
「乙女かよ」
「俺の場合は筋肉だ!筋肉は脂肪よりも重くなるもんだ」
「暴れんな暴れんな!」
「ダアァァハッハッハァァ!!」
「何ちゅう笑い方や」―
脱兎隊の事務所、居酒屋ライラビ
「お、みんな集まってどうした?」
「清洲城付近で狂徒が発生、索敵班の応答はなし、色彩は、紫です」
おかっぱボブで眼鏡をかけた秘書の河合さんが答える
「紫だぁあ?」
「現地では数キロ以上に及ぶ範囲の人間が一斉に姿をくらませました、こちら現場の監視カメラの映像です」
確かにデパートにも、道路にも、人が居らず、車が所々横転していた
「咲夜に連絡はしたのか?」
「いえ、我々への依頼なので」
「咲夜とあいつにも情報だけ共有しておけ」
「承知いたしました」
『ツナマヨ 入りたての新人』
「俺も出番あります?」
金短髪でチャラそうなのが声を上げる
『酢豚 呑気なおじさん筋肉』
「ツナマヨはまだ雑用やがな」
黒短髪で、溌剌とした深緑色のタンクトップのおじさんが答えた
「大丈夫ですよ!十分戦えます!」
『田中 優しい筋肉』
「ツナマヨはまだ青に上がりたて、今回の任務は少し荷が重いと思うよ?」
黒短髪で、おっとりした深緑色のタンクトップの青年が答えた
『野崎 唯一の眼鏡で理系』
「ですが人手不足です、それにツナマヨは弱くありません」
「野崎先輩!」
「…仕方ありませんが、連れて行きましょう」
「そうかぁ…なら、飛鳥もついてこい」
「え?」
「夏坂さん、それは流石に…」
河合さんが少し申し訳無さそうに反論する
「俺も流石に紫はきついんじゃ」
「いや、こいつは連れていく」
「了解です」
「すぐに向かうぞ」
「oh…」
「「了解」」―
「この先です」
人気のなくなった住宅街の道路を歩く
「避難…したんですかね?」
つい不安を溢してしまう
「わからない、だが、辺りに人の気配が全く感じられないな」
飛鳥は辺りを見回すが、特に争った跡もなく閑散とした、異様な雰囲気が漂っていた
「よし、これより三手に分かれる
「周囲に人の気配はない、状況は不透明だが、恐らく非常事態だ、酢豚、田中、野崎、ツナの四人は東側を散策してくれ、俺は西側を見て回る」
いつになく真剣な大男が、周囲の状況を見てテキパキと指示を出す
「うっす」「了解」「了解です」
呼ばれた三人は軽く返事する
「飛鳥と河井はここに残って咲夜を待ち、合流次第探索を開始しろ、行くぞ」
四人はこの場を後にする
河井さんは、拳銃の点検をしていた
「そういえば河井さんってアタッカーでしたっけ?」
「そうですね、状況によってはメインを貼ることもありますけど、性に合わないのでごめんです」
淡々と返される
腰に刺した刀を強く握る
「緊張してますか?」
「…はい、少し」
「大丈夫です、いざとなれば私が守りますから」
「いや、流石に守られるわけには…」
「飛鳥くん、色彩は何色ですか?」
「橙です…」
「私は青です、私にもプライドはありますから、あまり気負わないでください」
「はい」
「助けてくれぇ〜!」
気づけば、酢豚さんらが向かった家々の間から、ボロボロの服を来た青年が向かってきた
「どうしました!?」
青年は息を切らしながら状況を説明してくれた
「む…向こうに怪物が…家族が襲われてるんだ!」
怪物というのは狂徒のことだろうか
「分かりました、私は連絡を入れます、もう少し詳しい状況を聞いてください」
「怪物と鉢合わせて!早く、早くしないと手遅れになる!」
青年は河井さんに縋る
(…本能が河井さんの方が強いって感じてるんだなぁ)
少しショックだった
「落ち着いてくださ…」
「早く!頼む…早くしないと…」
俯き懇願する青年を放っては置けなかった
(どうする?咲夜さんを待たないと僕らだけでは…)
河井さんと目が合った、河井さんは頷き、再び無線に話しかけた
「先に向かいます」
「こっちです!」
――
青年に案内されついて行く
「この先です」
その先の路地裏には、異様な、気味の悪い薄暗い闇が佇んでいた
「貴方はここで待っていてください、ここからは我々だけで向かいます」
河井さんは青年に指示する
自分は前に立ち、武器を構え奥は進む。
狭く見えるが三メートルくらいの幅の路地裏は感覚が麻痺する様な湿り気が混じっていた。
(上位の狂徒には稀に知性が残っていたり、気配を隠す事はあるらしいけど、それでもなんだ…この違和感)
(あの青年の家族だけ襲われているのもおかしよな…いや、さっき帰ってきた?警報は出ていたはず…待てよ?)
「周囲に人の気配は感じられない」
という夏坂さんの言葉が引っかかる
(……あの青年は…何処から来たんだ?)
気づけば何処か昔の戦場跡地に立っていた
見渡せば荒野、左右には焼き崩れた陣営、折れた刀、槍、黒ずみ、陽は無いが昼間のように明るい
人の影はない
(何処だ…ここは…)
「飛鳥くん!」
思考は中断された
彼女に強く押されて転けてしまった
振り返ると、河井さんは背中から血を出してすぐ横に倒れた
「河井さん!」
すぐに上体を起こし、河井さんに寄り、後ろの闇を見た
薄暗い茂みからあの青年が忍び寄る
「私は生きている、今はな…」
「そんな…」
「飛鳥くんは逃げて、格上です、二人でもきっと…」
「大丈夫です!」
強く言い放つ
「敵はやる気です、どのみち逃げられないでしょう、格上なら尚更です」
「!…そうですね…」
河井さんもゆっくりと立ち上がる
「それに、ずっと強くなりましたから」
敵を睨み、威圧する
すると、姿がたちまち変わり果て、身長も少し縮んだ。
見た事がある…和服にハンチングの様な帽子、使い古されている
風は吹いている
髪の毛の奥の瞳と合う
紅く不気味に輝く
触れた様に冷たく感じる
血のついた刀を舐める
「うん、なかなか美味しいね」
心の臓を直接撫でられた様な恐怖が込み上げてくる
「伊村…!」
「敵は複数いる可能性があり、下手に動けば秒であの世です、連絡を取るので時間を稼いで下さい」
「来ないの?じゃあこっちから…」
「目的は」
咄嗟に声を上げる
「お前の目的はなんなんだよ?」
「まぁお話は目的ではないよね」
刀を構えた
「まっずい」
「なんてね、ちょっとならいいよ!目的は敵対組織の解体」
そう言うと考え込んでしまった
(よし、時間が稼げる、これで夏坂さんも来てくれるはず)
「連絡が、取れません…」
「あぁ、そうそう、この空間に電波は届かないよ」
「この空間…?」
「やはりそうですか」
空腹の獣と共に檻に入れられた感覚、誰も見ていない、助けは来ない
「時間を稼ぎましょう」
河井さんは敵を見ながら言う
「電波が途絶えた事で、GPSが消失します、この異常は彼らに確実に伝わっています」
強く断定する
「君らはここで終わる、俺が主導権ってやつ握ってるって事忘れるでないぞ?」
―「GPSが消えた?」
「えぇ、ポイントを送ります」
「すぐに向かう、酢豚、聞こえるか?」
「あい、なんでしょ」
「お前ら四人はポイントを囲んで待機していてくれ」
「了解」
―敵は空を見上げていた
「お話は終わり?」
「ここは何処だ?」
「知らんのか?ここは結界だそうじゃ、今やダンジョンと呼ばれ過去の記録を内包する空間、たまに発生する特異点ってやつらしい、知らんけど」
「ここの人達は何処へやった?」
「儂の腹んなかだ」
「喰ったのか!?」
「一人残らず、平等に、公平に食った」
「もう良い、ぶっ飛ばしてやる」
「主らから来い、フルスコア達成までちと遊んでやる」
言い訳チャンネル
章ってどうやって分けるんだろって他の作品を拝見したら、思ったよりも行間が空いててビビり散らかした
見ずらかったらすみません




