目を覚ます
この物語はフィクションです。既存の地名や団体が物語に登場したとしても、フィクションです。風評被害はノーサンキューです。
(運んじった…人とすれ違わんくてよかったぁ!注意報様様だな…いやこの子が元凶か、とりあえず応急処置しないと!)
よく動く頭で次の行動を決める
バスタオルを敷いて上に寝かせ、上着を脱がせる
和服に血が滲んでいたが、血は止まっている様だった
手先からぬるま湯を染み込ませたタオルでゆっくりと温めていく
(水疱は見当たらないけど、凍傷と貧血、目立った外傷は無いな?肌思ったより綺麗だな)
真っ赤な手先をぬるま湯に浸す
腕や足をマッサージし、血流を良くしていく
(思ったよりも軽傷だったし、明日には起きるかもな)
用意した敷布団に寝かせ布団を被せる
それから三日が経った
(起きない)
少年の鼻元に耳を傾ける
(弱いけど息はしてるんだよなぁ)
ベッドで寝ている少年が腰に携えていた刀を手に取り、魔族について詳しく調べていた
「魔族…集中や緊張すると目が光るのが特徴の一つ」
「人を喰らい力を得る場合がある」
「人の体で数十倍の力を発揮する化け物」
どれも似たり寄ったりで誰も憶測と規制で曖昧だった
少し鞘から引いて抜刀する
「それにこれって刀だよな?うわ本物やんけ、ゆうに30センチは超えてるな…」
咄嗟に持ってきたが触れうる法律と世論が頭をよぎる
(普通に考えて魔族は抹殺の対象なんだよなぁ…でもなぁ…)
安らかに眠る少年の顔を見る
「この子が起きてから考えよ」
とりあえず布団を被せておく
最近注意報に緩和されたと思えば、とうとう一帯の地区に自宅謹慎令が出された
今回の件は政府としてもかなりセンシティブに捉えている様で、数時間単位で変わる為、特に不平不満が溜まっている
入念に捜査した結果、その脅威度が上がったということだろう
(この子ってそんなに?…)
それによりつきっきりで看病できたのは幸いだった
昼下がり、コップに注いだ水を飲みながら、テレビに目を向ける
『速報です、奈良県宇陀市にて魔族による被害が発生しました。直ぐに現場の自衛隊が対応し、被害は最小限に抑えられたとのことです。続いて、先日未明の東京で発生した魔族について未だ調査中……』
画面に映る綺麗なニュースキャスターが、真剣に情報を伝える
「この人好きなんだよなぁ、綺麗で大人だけど、どこかあどけなさが残るというか…お?」
少年が微かに動いた
とりあえずテレビは消しておく
少年はゆっくりを目を開けた
「まだ…いきてるのか…」
「多分な」
「!!…」
小さな呟きに答えると、慌てて起き上ろうとした少年は痛みにより停止、目線がぶつかり何かを悟ったのか、ゆっくりと上体を寝かせた
「貴様は?」
声変わり前の高い清々しい声
「貴様?俺はゆべあすか、ただの大学生」
「ゆべあすか…」
自己紹介を咀嚼する様に呟いた
赤い瞳は発光していなかった
黒く、濁った瞳
「我をどうするつもりだ」
「特にどうもしないよ、名前聞いてもいいか?」
「…」
一呼吸、物音が消えた
「…樋口だ」
クキュ〜〜〜ウ〜
樋口のお腹が大きな声で鳴いた
「とりあえず食べれる?」
初めこそ警戒していたが、上体を起こした樋口はおかゆを黙々と食べ続ける
「質問していい?」
「^%☆#*(何なりと)」
「今までどうやって飯食ってたんだ?」
「虫とか…」
「よし、もっと食え」
めっちゃ食ってた
「もう一つ、君は…
お粥を掬う手が止まる
…魔族なのか?」
少しの沈黙の後、飲み込み俯いた
「…恐らくそうなのだろう」
否定して欲しかったが、割とすんなり答えた
「!、刀はどこだ!?」
思い出したように辺りを見回す
「それならここに…!!」
ものすごい速さで取り上げられた
(死んだな、俺…)
とても解像度の低い走馬灯が流れる
(…まだですか?目、開けますよ?)
「すまない!わはなんてことを…すまない…」
目を開ける前に樋口が謝罪した
少しずつ目を開ける
樋口は刀を手放し頭を下げていた
「いや、死んでないからいいや、頭あげなって…ハハッ」
乾いた笑いが出た
(怖ぇぇぇ…)
「てか俺変な顔してたよね」
「あぁそれは凄く…わがいては迷惑だろう…刀は返して貰うが、世話になった…」
ふらふらと立ち上がり、よろよろと二歩歩いて壁に手をつき膝から崩れる
(…………)
「…もう少しゆっくりしていけば?」
「それは出来ない…」
「何で?」
「わがいては、貴様にも追っ手が…」
軽く息切れを起こしていた
「とにかく、これ以上お主に迷惑はかけられない…」
「いや、もう無理ぽよ」
「ぽよ?」
「これ見てみ?」
スマホの画面に映しだされた原則を見せる
「なんだ?それは?」
一瞬たじろいでから聞いてきた
「世界人類同盟なんちゃら第なんちゃら目、ざっくり言えば魔族と出会えば即報告しろ、しなければ重罪、匿えば死罪って事だね」
「報告はしたのか?」
「してない」
「なぜ…」
「樋口の意識ない時に俺が勝手に判断しただけだから」
「嫌だ…」
小さく呟いた
「え?」
「嫌だ嫌だ嫌だやだ!頼む、それだけは…」
小さく唸り、頭を抱えてゆっくりとうずくまる
「おい大丈ぶ…「来るな」
近づいて手をかけようとした刹那
刀身が鞘から半分出た状態で固まっていた
熱気を放ち、赤暗く光る強い殺気が向けられていた
(ッ!!)
圧力により息が詰まる
一触即発、少し前とは比にならない本当の危機
殺気に満ち満ちた表情は、瞬く間に罪悪感と後悔の表情に変貌した
「すまなぃ…」
許容を超えた感情は涙となり溢れ、樋口は意識を失い倒れた
「首繋がってる?…偏頭痛は手足を温めると治りやすい…地震雷火事おやじ、親父では無く台風を意味するおおやじが由来…松坂牛はぎゅうではなく、うしと読む」
走馬灯で思い浮かんだ雑学を口にした
「どれも使えねぇ」
倒れた魔族に目を配る
とても不安定で儚さと脆さを内包していた
こうして世界を巻き込む出会いがあったとさ
この主人公肝が座りすぎじゃね?樋口さんは空腹と孤独のストレスでかなり限界だったみたい!どこからきたのかなぁ?黒いゴミ袋は燃やせたのかな?




