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コレはチートと言うんじゃない?

悲鳴が聞こえて数秒、俺は角を曲がってその光景を見た。

アレは……コボルドか、大変だみんなが襲われてる……ココ!ココはどこだ?

 

「いやああ‼︎お兄ちゃああああん‼︎」


 今お兄ちゃんって言った!

ココの声だ、すぐさまココを見つける。


「うおおおおっ!ココォォッ‼︎」


 ココに一番近いコボルドにタックルして距離を離す。


「よ、よかったあ〜」


 安心して力が抜けそうになる。


「お、お兄……兄者あ……ぐすっ」


 なんで言い直したかな?

いやそんな事より大惨事だ、うわっこれどうすんだよ。

敵が多過ぎる、全員守るのは無理がある、いやすでに死んでしまった人もいるかもしれない。


 ココが無事なだけに俺自身は安心できたけど、他の人達にだって家族はいる。

なんとか全員無事に帰りたい。

そう思っていたけど……コレじゃ……。


「動ける奴は俺の後ろに回れ、痛がるのも泣くのも俺の後ろでやれ‼︎」


 出来るだけ大声で叫ぶ。

図らずもヘイトを俺に向ける効果もあったのか、コボルド達は攻撃をやめ俺の方に顔を向ける。


 不幸中の幸いとでも言うか、入り乱れていたせいで包囲の形は崩れて、俺の後ろはポッカリと空いている。

ありったけの魔力を込めた俺の眼光で、コボルド達は警戒するかの様に隊列を組み出した。さすが犬。


「きゅ、救助が来たのか」 「遅えよ!何やってたんだ!」 「この役立たず!テメエのせいで俺の彼女が」 「た、頼む、俺の娘が……」


 うるさいな、別に俺のせいじゃないし、中学生のガキにそんな文句を言うな。

……娘さんはどこだろうか、あそこにいる女の子かな……怪我をして動けない様だな。何とか助けたい。


「ココ、ここから動くなよ」


「おに、兄者……」


 まあ俺も何か当てがある訳でもない、やれるだけやってみるだけだ。

こんな事故が普通に起きて名称が付いているほどだから、何回かあったことなんだろう。

そういう世界になっちまったんだよな……いちいち“俺のせいで”なんて言うつもりはないけどせめて目の前で起こる事ぐらいは何とかしたい。


 特にあの女の子、ココと同じぐらいか……今のところコボルド達はあの子を気にしてないみたいだけど、どうなるか分からんしな。


『なあアッちゃん』


 脳内で会話を試みる。


『どうした』


 成功した。


『さっきタブレットに入ったアルミラージのツノって取り出せない?』


『うむ、それなら音声入力で取り出せる』


 そりゃありがたい。

近づいたところでツノを出して突き刺すって手も使えるな。

まあ欲を言えば出ろと思うだけで出てくる方がもっと相手の不意をつけるんだが。


『見たところピンチの様だな』


『ああ、ピンチだよ』


MPマテリアルポイントを使って武器を強化できるぞ』


『え、そんな事できるの?早く言ってよ』


『言おうとしたら後にしてって言われた』


 拗ねんなよ。


『どうやって強化するんだ?』


 正直武器をちょっと強化したところで解決には足らない気もするけど、何もしないよりはマシだろう。


『よし、今回は初回サービスだ、チュートリアルという事で便利そうな物に強化しよう』


『え、マジで。神様ありがとうございます』


『足りないMPは後払いで良い。今回だけだがな』


 借金した気分になるな。

おもむろにスマホサイズになった石版を見る。


《一角兎のツノをMP50使用して強化:一角獣の風槍 レア度☆☆☆☆》


 星四装備きたー!ってまんまゲームじゃねーか。


《装備効果:風の外套防御+10 攻撃力+30 任意の敵三体に風刃攻撃》


 ……+の数字がいまいち分からない、けど凄そうな武器だ。

いや悪ノリが過ぎない?

けどま、ありがたく使わしてもらおう。

風刃ってアレだよな、遠距離攻撃ののヤツだったよな。

……音声入力がちょっと恥ずかしいが、背に腹はかえられない。


 このやり取りの間にも睨み合いが続いていたが、俺が石版に目をやった隙にコボルド達も気勢を取り戻した。


「グギャギャア、ギャオオオン」


 奴らにしか分からない様な合図で一斉にこちらへ向かってくる。

隊列の意味があまりない。犬に失礼だったな。


 それでも数は驚異だ。


「一角獣の風槍」


 言葉と同時に俺の手の中に一本の槍が現れる。

柄の長さは二メートルほどで、穂先になっている黒い刃は一角兎のツノを加工したものだろう、突き刺すだけでなく切りつける事もできそうだ。

なかなかカッコ良くなってる。アッちゃんのセンスかな。


 試しに一振り……重さも長さも取り回し易いが、別に風刃は出ない。

コレも音声入力か?いちいち声に出すの恥ずかしいなあ。

コボルドは槍に構う事なく向かってくる。


「風刃!」

 

 先頭集団の一体に接近し、切りつけると同時に風刃を発動。

任意の三体に風刃を叩きつける、狙いは爪や牙に血をベッタリつけたヤツだ。

一撃で倒すのは無理でも、隊列を崩せば身動きも多少は鈍るはず。

槍の一撃とは関係ない所にいるヤツに攻撃が入れば、動揺も少なからずあるだろう。


 牽制程度の槍の一振りだったが、思ったよりダメージが入った様で、そのコボルドは倒れ伏し、風刃をくらった三体のコボルドは真っ二つに裂かれ瞬時に煌めく粒子となって石板に吸収されていく。

風刃つええ。


 とにかく今は考えるよりも体を動かす。

こうして攻撃をしていれば、こちらに注目が集まる筈だ。

他の人や怪我人からコボルドの意識を離し、万が一にも人質とか取られない様にしないと。


 突いて払って払って突いて。

あっという間にコボルド達はその姿を消した。

この槍性能高え。コボルド程度と言ってしまえばそれまでだけど、中学生がちょっと振り回しただけで十三体のコボルドが全滅、三分とたたずにだ、バケモノかよ。


「……よし、大丈夫かココ。怪我は無いだろうな?」


「あ、あにいじゃん……」


 混ぜるな、それとも噛んだのか。

周りも言葉をなくしているが、何事もなかったかの様に振る舞う。

俺の後ろにいるのはココを含めて五人。

全員何らかの怪我をしているが自力で動ける程度の様だ。

ココを庇ってくれたりしてたのだろうか。


 コボルドの攻撃力が大した事なかったのだろう事は幸いと言える。

皆が動けずにいるので、俺が倒れている人達の元へ向かう。

まずは女の子からだ。


 女の子は背中から血を流し倒れている。

意識はないが、か細い呼吸音から生きてはいる事が窺える。


『アッちゃん、コレどうなんだろ。助かるのかな」


 動かない人達も四人程いる。たぶんもう事切れているのだと思う。

けれどもまだこの子は生きている。

あくまでも“まだ”だ。早く治療しないと危ないだろう。


『ではその石板の治療ツールを開くのだ』


『治療ツール……そんなものが』


『MP消費で怪我の治療ができる様になっている』


 石板を見ると


《コボルド十三体の討伐》


《小犬鬼の爪・牙・毛皮・魔石X13獲得 経験点130取得 MP13を取得しました》


 と出ている。


《MP-35 素材をMPに変換しますかY/N》


 さっきの借金の分か、素材を変換してMPとやらを手に入れられるなら安いもんだろう。

武器はできたのだし、素材は全部MP変換に回そう。

Y e sを選ぶ。


《一角獣の毛皮・肉・魔石:MP5に変換 小犬鬼の爪・牙・毛皮・魔石X13:MP52に変換 フルセットボーナス+5取得 MP28》


 結構いい数字になったな、武器強化で50使ったのにもう黒字だ。

ひょっとしたら強化コストもチュートリアルサービスがあったのかもしれない。

スタートダッシュブースト的な。

おかげで治療に使う分の余裕ができた。足りるよな?


「この子の怪我の治療を頼む」


《治療ツール起動》


《応急処置:消費MP5 通常治癒:消費MP15 完全回復:消費MP25》


 程度が分からん。まあ、完全回復にしておけば間違いはないだろう。

幸いポイントは足りる。


「完全回復」


《MP25を使用して対象に完全回復を実行》


 指示を出すと、薄い幕の様なものが女の子を包み、エメラルドグリーンの輝きを放つ。

見る見るうちに怪我が癒えていき、血色も良くなってきた。


樹梨花じゅりか‼︎」


 ようやく立ち直ったのか父親が女の子の元にやってくる。

怪我をしているためその歩みは鈍く、表情もすぐれない。


「む、娘に何をしたんだ?酷い怪我をしてるんだぞ」


 非難がましく詰め寄ってくるけど、心配しなくてもたぶん怪我は治っている筈だ。


「もう大丈夫だと思いますよ」


 そう声をかけたが、ちょっとぶっきらぼうだったかな。

けどまあ愛想良くする必要性もないと言えばない。

後は脱出ための宝珠探しだが、石板のサーチ機能で探せるだろうか?

ダンジョン、モンスター、神様、チートツールと一通り要素は出揃いました。

数値的なものは今後の話次第で調整するかもしれませんので都度変更します。

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