道中エンカウント
いつも歩いていた道がまるで初めて歩く道の様に感じられる。
風景そのものは見知ったものだけど、空気の匂いや色、立ち並ぶ街路樹、舗装されて路面までもがいつもと違う。
アスファルト舗装だったはずなのに荒い石畳の路面に変わっていたり、桜並木は謎の樹木に入れ替わっている。
雨が降る直前のオゾン臭を感じたかと思えば、下水の硫黄臭がところどころに発生したり、空気が紫っぽいし。
「なんだか幽霊とか出てきそう……」
深優璃はそういうの苦手系かな。この世界でも幽霊って怖いのかな、ゴーストとかいそうだけど。
……そうか、ゴーストは魔物だから倒せるけど、幽霊は霊魂だから魔物じゃないもんな。
比良坂霊洞の隠し扉の先に黄泉の国があるんじゃないかととか思った事あるけど、もしそうなら死後の世界がそこにはある訳か……幽霊一杯いるんだろうな。
「レベル5ともなれば幽霊より魔物の方が怖いわよ」
まれなでもレベル5は恐怖の対象なんだな……幽霊も怖いは怖いのか。
「でもハルにレベルアップしてもらったからな、ちょっとモヤっとはするけど力を試したい気持ちもあるぜ」
「ダメだぞタツ、あくまで念の為の措置なんだから自分から突っかかるのはナシだぞ」
「藤堂玻琉綺の言う通りかもしれんが、登川の言うことも分かる。力が漲る感じがあるし、強化してもらった装備も魔力のオーラが違う……試したくもなる」
サジも気分が高揚してるのが見て取れるな。
ステータスは普通に高校卒業を卒業した場合よりも高くはしたけど、レベル5にどこまで通じるか。
こう言うのは経験が大事だからな、ステータスの高さだけでどうこう言えるのは精々レベル3辺りまでだろう。
いきなり全部すっ飛ばしてレベル5が初実戦となれば冗談抜きで命の危険がある。
俺だってどうなるか分かったもんじゃない。
救助隊の方は大丈夫だろうか……戦闘が避けられないほどの強敵に遭わないと良いんだけど心配だ。
いや、その辺は散々協議したんだ、みんなを信じるしかない。
こっちも仕事はちゃんとやり遂げないとな……ちっ、きた!魔物の反応。
「みんな右だ!右から二体、左に三体!」
姿を現した魔物は右に単眼鬼二体、左に食人鬼一体と猪頭鬼二体だ。
道路脇から湧く様に出てきた。
「うおお、出たな!」
「キャア!」
交戦的な男子勢(まれな含む)とは対照的に悲鳴を上げ抱き合う女子勢(まれな除く)。
「俺は単眼鬼をやる!まれなはそっちの指揮を頼む!」
左の魔物は三対とは言え、まれなやガミの従魔もいる。七人いれば遅れは取らないはず。
俺の方も、相手はミノタウロスよりも大きいのが二体だけど、今回は装備も整えたし回避特化装備の性能試験として、どの程度の回避能力なのかを確認しておいた方がいいな。
単眼鬼は鉄の棍棒を武器に持っている。
まともに食らえば当然アウトだけど、当たらなければいいだけだ。
鉄の棍棒をビニールバットでも振り回す様に軽々と操る単眼鬼。
でもマジカレギンスのお陰かステップが軽い、思った以上の動きで易々と躱せる。
スピードに振り回される事なく普段通りの感覚で、体捌きもキレが違う。
多分アゴヒゲメイルの回避性能も影響しているんだろう。
どこかの回転少女じゃないけど、一生回避してられる。
すれ違い様に斬撃を入れているので、徐々に二体の単眼鬼の動きも鈍くなってきている。
その時、背後で巨大な何かの気配がして、気を緩めずにその気配を探ってみると、巨大化したカエデだった。
凄い魔力を感じる。ガミのステータスが上がった事で、従魔の能力も一段以上上がった様だ。
これならあっちは楽勝かも。
じゃあこっちも、なんだか出来そうな気がしてるスキルを試してみるか。
「波刃斬!」
スキル名を口に出して虎牙斬りを水平に振るうと、波紋の様に透明な刃が飛んでいき、単眼鬼二体に対して斬撃を与える。
丁度攻撃範囲に二体が納まっていた様だ。
綺麗に上半身と下半身に切り離された単眼鬼はそのまま粒子となって石板に吸い込まれていった。
このスキル強ぇ、ミノタウロスと同格以上に見えた単眼鬼を二体同時に一刀両断かよ。
「よし、そっちはどうだ!」
振り向いて線局を見ると、巨大化したカエデが食人鬼を引き千切った所と、まれなの槍が猪頭鬼を貫いた場面だった。
もう一体の猪頭鬼はもう倒したのか姿が見えず、タツは膝立ちになり、ガミは剣化したリカを構えてカエデの後ろに立ち、サジはまれなのサポートなのか横で剣を構え、沙河楽君は弓を構え、矢を番えている。
才華はいつでも魔法を放てる準備をしているし、深優璃は新手の警戒をしている。
凄い、それぞれがちゃんと役割分担して事を成している。
このメンツで組むのは多分初めてだけど、見事に連携が取れている。
俺みたいに単独で好きに動くのとはまったく違う、まさに洗練されたチームプレイだ。
いいなあ、そういうの……いや、今はこれでいい。
一番安全なのがこのフォーメーションだろう。
「うおおお!勝ったぞ、レベル5を倒した!」
「やったな」「ああ」 「か、勝てたぁぁ」「やったね、みゆちゃん」「手強かったな」
それぞれが健闘を称え合っている。
これで目処がついた、物資の調達をするのに魔物を必要以上に警戒する事もないだろう。
もちろん油断する訳じゃない、必要な警戒はきちんとした上での話だ。
後は町の人達の避難場所か、この霊洞化した学院に魔鹿がいれば結界のアイテムが作れるんだけど、一応森はあるから、ひょっとしたらそこにいるかもしれない。
ただ、こういった開けた場所で戦うのと、森の中で獣型の魔物とやり合うのではこっちが相当不利だ。
以前霊場で魔物狩りをした時にそれは嫌ってほど体験した。
ましてやここは今力場レベル5だ。
魔物の強さはあそこの比じゃない、現実的なプランじゃないな。
敷地内にあった霊洞も、この状態ではエントリー不可になっているってヒナから聞いた。
五条覇霊洞で素材集めも出来ないから、手持ちでなんとかするしかないけど、いい案が思い浮かばない。
一体何人の人が町にいるんだろうか。
すいません、少し短いんですが、すごく眠いので今日はここまでで投稿します。
また明日から元気に書いていきたいと思います。
今回も読んで頂きありがとうございます。




