俺と友達になって下さい
ではまず準備をしよう、と言う事でそれぞれ自分のロッカーを探りに行く。
実習などが多いこの学院には、同じ階にクラス別男女別のロッカールーム兼更衣室がある。
皆そこに思い思いのアイテムや武器などを置いている。
高価のものが多いので、ロックは厳重だ。
「俺は着替えを見られたくない、みんなが終わったらロッカーに行くから先に準備しておいてくれ、30分後には昇降口で待ち合わせよう」
恥ずかしがり屋さんみたいな事になってしまうのはしょうがない。
別に隠さなくてもいいかとは思うけど、物事には順序がある。
勿体ぶりながら、小出しに“な、何だそれは!”みたいな驚きと共にお披露目するのが様式美ってもんだろ。
いきなり全部見せでは情緒がない。
回避特化型で作った夏服仕様のアゴヒゲドラゴンの鱗をメインにした鱗帷子、腕力強化の魔熊皮製ガントレット、真銀を織り込んだバンダナには魔法効果アップ、魔鹿皮のレギンスは速度アップに回避アップの効果がある。
武器は虎牙斬りでいいか、盾は邪魔になるのでなし。そのための回避装備だしな。
行李行者を出して準備は整った。
日が伸びたとは言え、さすがにそろそろ暗くなってきてるからな、急ごう。
「うお、ハル!新しい装備か、暑くねえのかよ」
夏仕様で作ったから通気性は高いし、ガントレットに寒暖烈士皮と同じ素材を使っているので、その効果でむしろ涼しい。
みんなは制服に強化を施した霊洞実習用の物を着ている。
実際の霊洞にはまだ入れないので当然だけど、やっぱり心許ない。
しょうがない、俺も覚悟を決めるか。
「出発前に一言言っておくことがあるんだけど……」
……なんて言おう、こんな事言ったら普通に変に思われるよな。
「俺と友達になってくれないか」
“何言ってんだお前?”
と言うみんなの気持ちがよく伝わってくる顔をされた。
そりゃそうだよ、何を今更……もう一学期も終わろうかと言う時に。
でも“いいよ”と言う返事が必要だ。
【友達登録】
とか言う気恥ずかしい名称の機能が石板にある。
これに登録されると、俺の作った装備品が使える様になる。
さらに俺の持つ“経験点”と言うものを割り振ってステータス強化やスキル取得の補助をすることが出来るようになるし、何と言っても念話通信が使える機能がある。
今まで使わなかったのは、せっかくこういう学び舎に通っているのに、自分の力じゃない所で成長すると言うのは何か違うだろと思ったのと、さすがにこの機能を使ったら只事じゃないってなるのと、今みたいに友達になって欲しい旨を伝えて、了承して貰わないといけないと言う恥ずかしい仕様だからだ。
……あと一応マスター権限とかもあるけど、それは考えないでおこう。
さっき才華に寒暖烈士皮を渡した時に気付いた。
今は結界の中だけど、表に出るならこのままってわけにいかない。
友達登録して貰わないといけない……ネトゲとかなら当たり前の登録なんだけど。
「何言ってんだと思うのは分かる、俺もそう思うし。ただみんなの今後にも関わる可能性があるから説明をさせてくれ」
やっぱ説明が必要だよな、二つ返事でOKされたら事後承諾って事になるし、不誠実だよな。
と言うわけで、石板の入手経路は言えないという前提で説明をした。
せっかくまれなが上手く誤魔化してくれたのにあっという間に無駄になってしまった。
ごめんなさい。
「そんなバカなアイテムなんてあってたまるか!じゃあ藤堂が強かったのはそれのお陰だったのかよ!」
ガミは俺の事ライバルだとか言ってたからな、怒るのも無理はないか。
「装備に関してはそうだ」
それ以外の部分に関しては、異世界で一万年以上過ごしたせいだとかは言えないし。
潤葱総士郎とか辺りと一緒にされたら堪らない。
「やはりそうか藤堂玻琉綺、貴様は何かインチキをしてるに決まってると思っていたが……とは言え流石に想定以上のインチキだったがな」
だからズルをしたって言ったじゃん。
「とは言えだ、アイテムの力ならそれは貴様の力と言える。優秀な探索者ほど強力な魔道具を使いこなすからな」
どうしたサジ、今日はめっちゃデレるじゃん。
「そうね、沙嶋の言う通りそういうのを揃えるのも探索者の実力よ」
まれなには以前白状させられた時にこの話はしてある。
その時は友達登録は保留にしてくれとの事だったけど、今回は受けてくれるだろうか。
「ハル、その話ホントか?お前のその経験点とかで俺達のステータス上げられんのかよ……それどういう仕組みなんだよ、鍛えんのが馬鹿馬鹿しくなりそうだ」
そうだと思って言えなかったんだ。
特にタツは筋トレとか好きだしな。
「その気が無ければしなくてもいいけど、今は非常時だ。どうしてもというなら装備を貸そう」
うーん、こんな言い方も卑怯か?こんな機能を話しておいて、そっちの気持ち次第だなんて、まるで責任を相手に投げているみたいに思ってしまう。
「いや、悪いけど問答無用で一段階はステータスを上げる。これは俺のエゴだ、怒られるのも覚悟の上だ」
あくまでもステータス上の話ではあるけど、3上がれば一段上にいったと認められる。
この場所でそのくらい上げたところでって思うけど、俺が言ってるのは全ステータスを3上げるって意味だ。
つまりトータル18アップという事になる。
これは一般的に言われている高校三年間で上げられるステータスを超える数値だ。
さらに今の装備を強化する。
これは友達登録してあれば、装備したまま出来る。
素材を使う事は出来ず、MPでの性能強化だけになるけど、10づつ上げればだいぶ違うはずだ。
わあ、MPめちゃくちゃ使っちゃったな。
「これで今度こそ……」
「ねえ玻琉綺君」
俺の声と才華の呼びかけが被った。
ここは才華に譲ろう、大事な話かもしれないし。
「このマント、ひょっとして私の体質を考えてくれてのモノ?」
早速効果でもあったかな?通常時の学院よりは少し力場が高いから、少しは体調が悪かったのかもしれない。
「そうだよ、それは寒暖烈士皮って言って、周囲の悪環境を完全にシャットアウト出来るんだ」
ついでに冷暖房完備だ。
「……やっぱり、ねえ、いつも霊洞実習の度に玻琉綺君がくれる飴玉って……薬?」
そこまで察しちゃうか。
まあバレて困る事でもないかな。
「騙す様に渡しててごめん。お節介かと思ったけど、才華が霊洞に入れないのは寂しいからね」
「今まで気づかなくてごめんね。ありがとう」
面と向かって礼を言われると照れてしまう。
「気にすんなって、じゃあ出発しよう。俺が先頭に立つ、殿はガミだ、中間はまあ適当に」
町までは迷う様な道でもないし、視界を遮る様な林の中じゃないんだ。
このくらいの取り決めで十分だろう。
ちょっと暗くなってきたのが少し心配だけど、早く行かなきゃな。
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