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学院救助隊結成


 校舎内に戻ると、さっきの歓声とは打って変わって静まりかえっていた。

何だろう……当たり前なんだけど凄く注目されているな。

それはまあしょうがないけど、そういう風に無言で見てくるのやめてほしい、不安になる。


「藤堂……ヒナやカエデを助けてくれた事、礼を言う」


 ガミが口火を切って俺に話しかける。

見れば怪我は完全に治っている様だ、そういえば傷癒水ってまだ治験してなかったな。

けど、ちゃんと怪我が治っている様で良かった。

 

「同居人の面倒ぐらいどうという事はない、それより外にはもう人はいなかったか?」


 結界内だと俺の探知も使えない様だ、校舎内とか校舎周りならともかく、ちょっと離れるともう探知外になってしまう。


「ああ、俺達の見える範囲にはもういなかったと思う、多分100人くらいは校舎内に戻ったはずだ」


 100人……残りの人は大丈夫だろうか。

さっきのミノタウロスとか、あんなのに襲われたらと考えると楽観出来ないな。

それでもそれだけの数の避難を誘導してくれたのはありがたい。


「藤堂、君の戦いは見せてもらった……正直圧倒されたよ。ここの結界と言うのもどうやら本物の様だ、感謝する」


「えっと、羅豪君だったよな。総代としての責任は果たしたいと思ってる、感謝は不要だ……なんて言わないさ、その感謝はありがたい。この危機を乗り切るためにみんなの協力が必要だからな」


 感謝してくれるなら協力もしてくれるだろう。

近くにはあのガラの悪い取り巻き達の姿が見えないけど無事なのかな。


「さっきは疑ってごめんなさい。貴方の言う通りレベル5というのは本当の様ね」


 さっきの黒髪ロングの女子だ。彼女に言った通り証明はされたからな、疑う人はもういないだろ。

危険はちゃんと認識してもらわないと、迂闊な行動に出る者が現れちゃうからな。


「そうだ、見ての通り外は危険だが、校舎内はレベル2くらいで保たれている。強力な魔物は入ってこれないが、ちょっとした魔物は発生するかもしれないから注意だけはしておいてくれ」


 滅多にはないけど、普段の授業でやってる擬似霊洞より少し低い程度の力場だから、可能性はゼロじゃない。


「ハルー!凄えよお前、いやーつえーとは思ってたけど想像以上だ!あの化け物を瞬殺じゃんか!」


 タツのその言葉に周りの緊張も幾分和らいだ様だ。

まあ、あんなのを倒したんだからアレより強い奴にそうそう絡む気にはならないよな。

タツの軽口のおかげで俺もここの生徒なんだってみんなに思い出してもらえて様だ……いや思い出すって何だよ。


 

 その後の協議はスムーズに進んだ。ミノタウロスを倒して女生徒を救助してきた事で一応の信頼は得られた様だし、総代としての元々の立場もある。

貴族の羅豪君や黒髪ロングの女生徒、久城くじょう 玲奈れなさん、彼女も貴族だ。

この二人に早々に支持された事によって、他の貴族も俺を認めてくれた様だ。


 あれから自力で戻ってこれた生徒も結構な数がいるので、まずは全員を校舎に避難させようと言う意見に反対者は出なかった。

まだ100人以上の生徒達が寮などに篭っていたり、連絡も取れない状態になっている。

犠牲者が出たと言う報告は誰も受けてないが、時間が経てばその限りじゃない。


 とは言え外に出るのも容易じゃないので、チームを編成して事に当たってもらう。

索敵二名で魔物や要救助者を探ってもらい、力仕事及び万が一に備えて戦士系三名、魔法が使える者一名の六人編成で、一度の救助活動で最大二名までとする事を徹底して、多数の要救助者がいる時は応援を要請する事。

こう言った取り決めの元、15チームが作られた。


「交戦は可能な限り避けてくれ、救助は大事だけど自分の身を軽んじない事を肝に銘じておく様に」


 そう言って傷癒水を各自に二本ずつて渡す。

流石にそこまでは作り置きがないので、作りながら渡していく……もうこれアイテムボックス持ちだって隠しようがないよな。

せっかく作った行李行者スピリットポーター出す暇も無かったし。


「藤堂玻琉綺、お前一体いくつポーションを持っているんだ……それに一体どこから出してる」


 サジが聞いてきたか。


「玻琉綺のポーションには私が小型化ダウンサイジングをかけてるの、以前一緒に探索した時に大量にポーションを手に入れる機会があったのよ」


 まれなが庇ってくれた。


 以前した約束は黙っててくれるってだけだったけど、それ以上の事をしてくれている。

ありがたい、せっかくなので乗らせてもらおう。


「そうなんだ、おかげで助かってる。まあいちいち傷癒水ポーションって声を上げないとサイズを戻せないのが面倒なんだけどな」


 本当にそんな工程が必要なのかは知らないけど、そう言う事にしておく。

まれなにはアイコンタクトで、お礼のつもりのウインクを送っておく。


「そうか……貴重な品を感謝する。お前のリーダーシップには期待している」


 おお、サジがデレた。コイツからこう言う肯定的な言葉を聞いたのは初めてだ。


 ともあれ、救助隊はこれで頑張ってもらおう。

次に決めるのは、町への食料調達と住人達の安否確認だな。

でももう結界アイテムはないし、彼らには一体どこに避難してもらったらいいのだろう。


 そもそもまだ無事なのだろうか……さっきのレベルの魔物が出たら普通の人じゃひとたまりも無い。

ダメだな、悲観的な想像しかできなくなってる。


「才華、深優璃、まれな、タツ、ガミ、サジ、沙河楽、お前達には俺と一緒に町まで着いて来てもらいたい」


 協議でも物資の調達は最重要課題だった。

何せ人数が多いからな、日用品、食糧などを何とかしないと三日と保たない。

幸いな事に不思議ではあるが、電気ガス上下水道は使える。


 でも水だけじゃ無理だし、電気ガスがあっても食材が無ければどうしようもない。

寮までは徒歩で10分とかからないけど、町までは30分はかかる。

寮から持ってくるって事もできるだろうけど、日用品はともかく食料は寮の食堂にあるだけではそれこそ三日保たないだろう。


 この力場の中をそれだけの時間移動するとなれば、物資の輸送の意味でも俺がいく以外にない。

この異常事態に陥ってからもう三時間近く経つ。


 とにかく急ぐためにも、俺と軋轢なく行動できるのは今言った総代邸メンバーだけだろう。


「いや、ガミって俺の事?」「サジ……だと」「俺は沙河楽のままなんだなあ」


 おっと、それぞれ言いたい事はあるだろうけどそれは今度聞こう。

もう面倒なんだよ、心の声と喋りが別なのは。


「そうだ、で、どうだ?来てはくれないか」


 かなり危険な事に誘っている自覚はある……でも来てもらいたい。

協議でもまずは町へのルートを確保できないと先の事を考えられないと言うのが圧倒的な意見だった。


 でもそのためって訳じゃない。

俺も不安なんだ……さっきのミノタウロスだってもう一体ミノタウロスがいたらヤられてた可能性は高い。

みんながいてくれたら心強いし、俺自身最大限の力を発揮できそうだ。


「私は良いわよ、玻琉綺は結構迂闊なところもあって心配だしね」

 

 さすがチームメイト、まれなに着いて来てもらえるのは嬉しい。


「アタシもイイよ!さっき信じてくれって言ってたじゃん、その玻琉綺の頼みだもん」


 ありがとう深優璃、その言葉に救われる。


「わ、私も行くよ!玻琉綺君ばっかり大変なのは嫌だし」


 優しいな才華は、見てるだけでも元気になるよ。


「当然オレだって行くぜ、友達にそんな頼まれ方されたら断る選択肢なんかねえぜ」


 タツ、お前みたいな友人がいて俺は幸せだ。


「そりゃ行くさ!藤堂だけにイイ格好はさせない、ヒナを守るのは俺だ!」


「オレも行くぞ藤堂玻琉綺、貴族の義務だ、お前のためじゃない」


「まあ、俺は行かないってわけにもいかないんだよなあ」


 ありがとうX3。


 まったく、いい仲間だ。

でもガミは警察呼んどいた方がいいのかなあ。

この話は多分長編になると思いますので、どうぞお付き合いください。


今回も読んで頂きありがとうございます

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