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間に合った(間に合ってない)

「なあアッちゃん」


 走りながら神様に話しかける……ここでは神様じゃないとか言ってたけど、急にそんな事言われてもな。


「何か武器はないのか?」


『武器か……今の我はこの道具に宿ったこの世界で言う付喪神の様なモノだ」


「うん、で?」


『お前にはその拳があるだろう、その脚があるだろう、何のためだ? 前に進み障害を排除する為ではないのか』


 無いのね、素手でやれって事か……そう言いなさいよ。

でも確かにさっきの感触だと、魔法としての効果はなかったけど魔力の放出はあった様だから、手足に纏わせれば攻撃手段にはなりそうかも。

やたら移動速度も速い気がするし。


 動画で見た魔物は普通のモンスターだったが、今の俺が通用するかはぶっつけでやってみるしかない。


「まあいいや、それにしても付喪神なんてよく知ってんね」


『セティネストはこの世界のネットにも繋がっているのでな、調べてみたのだ」


 なんなんそのセティネストって?

便利使いしてるみたいだけど回線契約とかしてる?IPとかドメインとかどうなってんの。


 脳内相手に会話をしていると赤いポイントが一体こちらと接触しそうなルートをとっているのが見えた。 タブレット見ながら走るのちょっと怖い。

と思ってたら小さめのスマホサイズに縮んだ。

脳波入力とか出来んのかい。

自在性高いな。おかげでちょっと走りやすくなった。


 どうやらエネミーがこちらに襲い掛かろうとしている様だ。

相手をしている暇も惜しいが、迂回路もなく接敵もやむなしだろう。

とにかく時間はかけられない、楽に仕留められる相手だといいんだけど。


 ついに魔物との初遭遇。現れたのは額から黒いツノの生えた黄色っぽい体毛の兎の様な魔物。

アルミラージか! 異世界では凶暴でその突進力による攻撃は油断できないモンスターだった。


 こっちのはどうなんだ? 向こうではもちろん敵ではなかったが、今はちょっと魔力のあるただの中学生だ。は

向こうと同程度と仮定すると手強そうだ。


 迷いは一瞬。そのままスピードを落とさずにアルミラージに向かう。

アルミラージもこちらに狙いを定め、後ろ脚に力を溜め一気に突っ込んでくる。

見える。 相対速度は凄いが目で追える。


 眼前に迫る黒光りする鋭いツノ。

今さらそんなものに恐怖するようなメンタルではない。

平静な感情でツノを掴みそのまま首を折るようにしてツノも折る。

“パキィ”と乾いた音と同時に“ゴキリ”と鈍い音。

ツノとクビの折れた音だ。


 獲った。 一度止まり息をつく。

ふう……額に軽く汗をかいているな、どうやら少しは緊張していたようだ。

でも思ったよりも手早く倒せた。

今のは上手くいっただけで今後もこの様にいくとは限らないが、少なくともこのくらいなら手に余るということもなさそうだ。


 ん、なんだか違和感がある。

ふと掴んだツノを見ると煌めく粒子とともにボロボロと崩壊していく。

え、こういうのって素材とかにできないのか?折角いい武器になると思ったのに……折れた角だけに。


 振り向くと倒したアルミラージも同じ様に崩壊していった。

そういえば魔物の素材ってドロップするものだと聞いたな。

なるほど、魔物が消えた後に素材となるものが残り、ドロップアイテムと呼んでいるわけか。さすがは魔法生物。


 後は魔石とか経験値とか聞いたけどそれはどうなんだろう。

ってなんだ? 粒子が消えずにタブレットに吸い込まれていくぞ。


《アルミラージ一体の討伐》


《一角兎のツノ•毛皮・肉・魔石を獲得、経験点を15取得、MPマテリアルポイントを2取得しました》


 ……なんだって? 

なんか聞いてた話と違うな、ドロップしないでタブレットに入るの?


『それこそがその石板の真骨頂だ』


 急に話しかけないで、ビックリする。


「よく分からないけど今忙しい、後にして」


 分からない事は後回しだ、今はとにかくココの元に急がないと。

見ればもう赤いポイントが黄緑の集団を囲んでいる……一刻の猶予もない。


『ちぇ』


 え、今何て? 一体どんなキャラ付けで降臨したの。

ちぇはないだろちぇは。


「不貞腐れるのも後にしてくれ」


 その後二体の魔物とエンカウントしたものの、足の遅いタイプだったので殴り倒してトドメは刺さなかったが、なんとか振り切ることが出来た。

目の前の角を曲がればココ達がいる。


「うわあああ」


 悲鳴⁉︎ 男の声だ。まさか誰か……



 罰が当たったんだ……そう思った。

アタシは藤堂瑚琥那、小二の八歳。お姉ちゃんとお兄ちゃんが大好き。

先月お兄ちゃんが事故にあって行方不明になってしまった。

信じられなかった。

悲しいと言うよりも恐怖を感じた、お兄ちゃんがいなくなる恐怖。


 これから一生お兄ちゃんの顔を見れない、声も聞けない、勉強も教えてあげられない……ゴハンの時に席が一個空いている。

泣いても喚いてもお兄ちゃんは帰ってきてくれない。


 でも二週間前、お兄ちゃんは帰ってきてくれた。

いっぱい甘えたかった。毎日タックルした。ゴハンのおかずに醤油もいっぱいかけてあげた。

……クリスマスデートをおねだりした。


 でもみんなついてきちゃった。

お姉ちゃんも大好きだけど、今日はお兄ちゃんと二人っきりがよかった。

いつも友達とばっかり遊んでるお兄ちゃんが珍しくアタシのおねだりを聞いてくれたのに……だから、邪魔だなと思っちゃった。


 お姉ちゃん達も寂しい思いをしてたのに、悲しかったのに、それ以上に、また会えて嬉しかったのに。


「お前らこっちに来い、急げ‼︎」


 お兄ちゃんがそう言った時、アタシだけ動かなかったらお兄ちゃんがこっちに来て抱き抱えてでも動かそうとするかもしれない。

そう期待しちゃった。

お姉ちゃんを邪魔に思ってワザとお兄ちゃんの言う事聞かなくて……その罰なんだ。


 こんな所でこんな怖い目にあってお兄ちゃんもお姉ちゃんもいなくて。

ここは石で作られた円形のホールの様だった。

壁にはグルリと五つの入り口があるけどどこに繋がっているのか……ここはダンジョンだ。

初めて入ったけどわかる……穴堕ちと言うやつだと思う。


 魔導力場のせいで魔力酔いを起こしている人もいる。

アタシもちょっと気分が悪いけど、このくらいなら大丈夫そうだ。


 みんなもここがダンジョンだとわかっている様で、救助を待とうと言う意見が大多数だ。

探索者でもない人が魔物の相手なんてできるわけないし、道もわからないで帰れるはずもない。


 救助を待つべきだ、いつ来るか分からないだろ、迷うに決まってる、魔物に殺されちゃう……大人の人達が口々に言い合う。


 アタシも助けを待つ方がいいと思う。

お兄ちゃんだって救助隊に助けてもらったんだし。

アタシと同じくらいの女の子が泣いている。

アタシも泣きたいけど、お兄ちゃんがいないって事に比べたら全然我慢できる。


 どれくらい経っただろう、五つの入り口から“ギャッギャッ”と鳴き声が聞こえてきた。


 みんな息を潜めて声のする方を見る。女の子も泣き止んでる。

魔物が出てきた。やっぱりだ、やっぱりこれは罰なんだ。

胸から上が犬みたいな人型の魔物……コボルドって言う魔物だ。


 コボルドは全部で十三体。

こっちを囲みながらジワジワと近づいてくる。誰かが叫んだ


「うわあああ‼︎」


 ビクッとなってそっちを見ると男の人がコボルドの爪で腕を切られていた。

アタシは足に力が入らなくなってその場で座り込んでしまう。

いや……


 さらに別の人も襲われる。

阿鼻叫喚なんて言葉は知ってるけど初めて見た。

みんな逃げ惑うけど、囲まれちゃっててどうしようもできない

うそ……アタシ死んじゃうの……せっかくお兄ちゃんにまた会えたのに。

いや……


「いやああ!! お兄ちゃああああん!!」


「うおおおおっ!ココォォッ!」


 奇跡だと思った。夢だと思った。目を疑った。

なんで、なんで……なんでここにお兄ちゃんが⁉︎


回を追うごとに文字数減ってきてますが、おおよそ3000〜4000文字あたりを目安に書いていきます。

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