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みんなよく頑張った


 廊下のガラスを割ってダイナミックエントリーしてきたのはやはりガミだった。

結構あちこちに怪我をしている様だけど、どれもそれほど深くはない。

これが魔物との戦闘でついた傷ならガミも中々にやる様だ、レベル5相手でこれで済むとは。


「どうした剣ヶ峰、何があった」


 駆けつけた俺は、傷癒水の入った小ちゃいペットボトルをガミの渡して飲めと促す。


「お、表でみんなが……ミ、ミノタウロスだ。あ、あんな化け物、みんなやられちまう!」    


 ミノタウロスだって!と、周りも騒ぎ出す。確かにそれは強そうだな。


「分かった、ここは安全だから少し待ってろ」


 急がないと不味い、ガミでこの怪我ならサジや沙河楽君じゃ大分キツイだろう。

窓から飛び出すとリカとホロがこちらに向かって来ていた。

ガミの救護に来たのかな?


「剣ヶ峰は大丈夫だ、お前らもここに避難して後は俺に任せろ」


 責任を持つと言った手前それを証明しなきゃな。

手強いとは思うけど、ここで圧倒出来ればみんなからの納得も一応は得られるだろう。


「うおおおおおお!」


 校舎裏の雑木林からサジと沙河楽君が叫びながら走ってくる。

二人とも背中に人を背負っているところを見ると、なるほど彼らの救助のために林に入って行ったのか。


「沙嶋、沙河楽!急いで校舎に入れ」


 サジも怪我をしている、念のため沙河楽君の分も傷癒水を渡しとこう。


「これを飲んで中に入れ、よくやってくれた」


 ミノタウロスなんて出る中で、よくぞ怪我人を救出してくれた。見直したぞ。

四人分の傷癒水入りペットボトルを渡して俺も林に向かう。


「まだ一人怪我人がいる、剣の従魔が抑えているが……長くは持たない」


 確かに、実習霊洞の幻術ボスに蹴散らされたくらいだしな。でもカエデは違うはずだ。

アイツは力場が濃くなればその分力が増すはず。

まあガミと契約してるなら、そっちに引っ張られているだろうけど、それでも腐っても神鬼だ。


「分かった、任せろ!」


 そういやサジはガミの事剣って呼んでるのか、剣ヶ峰じゃ長いよな。

俺もガミって呼んでやるか、一回うっかり呼んだ事あるし。

沙嶋もサジにしよう、貴族に向かって不敬かもしれないけどサジならいいか。


 林に目を向け走り出したところでなんか塊が飛んできた。

受け止めるとそれはヒナだった。


「何やってんのお前?」


 おっと、口に出てしまった。


「これはご主人様、お恥ずかしいところを……」


 ご主人様はやめろっつってんのにやめないなこいつ。


「これはおそらく姉様の羽化繭うけのまゆですのじゃ、申し訳ないのですのじゃがワシの力では打ち消されてしまうのですのじゃ」


 “ですのじゃ”もやめろ。

なんかリアル婆さんみたいでヴィジュアルに合わん。

うちの璟珂きょうかと同じぐらいに見える。


 なんかこいつ馴染んでんだよなあ……ご主人様呼びも誰も気にしてないし、神様なのにあんまりそういう扱いもされてない。

この世界で神様ってそんなもんなのか?


「無理をするな、俺やカエデに任せておけ」


 そう言いながらヒナの頭に手を乗せ、俺の魔力を送る。

何となく消耗している様に見えるのでちょっと回復させておこう。


「はわわわ、ご、ご主人様……恐れ多いですのじゃ」


「気にすんな、じゃあ俺は行ってくる」


 必要はなかった。カエデが林から出て来たのだ……巨大な斧を持ったミノタウロスにその頭を掴まれ引き摺られながら。


「何してんだテメエええ!」


 俺沸点低くなったかな?なんか無茶苦茶頭にきた。


「虎牙斬り!」


 みんな見てるけどしょうがない、手品だとでも言っておこう。

およそ三十メートルの距離だ、二秒もかからん。

それを見たミノタウロスがカエデを投擲してくる。


 悪知恵の働く野郎だ、三メートル近いその巨体からそんな勢いで投げられたら、避けた時のカエデのダメージもバカにならん。

受け止めるしかないけど、間違いなくその隙を狙われる。

レベル5ともなるとそんな事までしてくんのか、でも甘い。


 剣を持ってない方の腕でカエデをキャッチ。凄え衝撃だ。

その衝撃を無駄にはしない、片足を軸に一回転して逆方向に飛び距離を取る。


 思った通りに俺がカエデをキャッチした場所にミノタウロスの斧が振り下ろされた。

地面に叩きつけられる斧に取られ、逆にミノタウロスに隙ができる。


 悪知恵は働いても、戦闘知能は低いのか?避けられた後のことを考えない大振りをしてくるとはな。

悪いが当然その隙は見逃さないぜ。


 硬そうな筋肉部分ではなく狙うはその牛面の鼻先だ!


 「ブフォォォオオ!!」


 よし通った、切り落とされた鼻を両手で押さえるミノタウロスの腋へと虎牙斬りを突き刺す。

肋骨の隙間から心臓に目掛けて……入った。巨体のおかげで狙いやすかったな。


「ブォグアアア!」


 ミノタウロスが頭突きを敢行してきた、ツノで俺を串刺しにする気か?

嘘だろ、あれで即死しねえのかよ!

虎牙斬りから手を離してその場から転がりながら離れる。

不味いな、剣を手放しちまった。


 だがミノタウロスはそのまま光の粒子となって石板に吸い込まれていった。

危ねえ、即死せずに最後の一撃かましてきやがった。

これがレベル5かよ、甘く見てたつもりは無かったけど複数に囲まれたらやられるかもしれない。


 いやしかし……倒せたのは良かったけど、ちょっと突発的な戦闘になっちゃったから、武器とか粒子とか見られちゃったな。

何事も無かったかの様に、当たり前のことの様に振る舞えば有耶無耶に出来るかなあ。


 “うおおおお!!”


 びくっ。


 結構な人数、っていうか殆どの生徒達が窓から今の戦闘を見ていた様だ。

凄い歓声が上がっている。


 凄え何だ今の、ありえねえ動きだったぞ、楽勝じゃねえかよ、アレを倒すのかよ……みたいな声があちこちから聞こえる。

……なんか見せびらかしたみたいで恥ずかしくなってきた。

いやね、結構危なかったんだよ、アレが力任せに大振りしてくれたのと、武器の性能のおかげなんです。


 まだ怪我人が林の中にいるはずだ、急いで助けないと。


「セラフィックロッド!」


 意識の無いカエデの傷を癒やし、すぐに林の中に分け入る。

怪我をしているという生徒はすぐに見つかった。

見覚えのない女子だ。


「大丈夫か!急いで校舎に戻るぞ」


「あ、足が……」


 見れば太腿の辺りに深い傷がある、これでは動けないだろう……あまり女の子の足をまじまじと見るもんじゃないな。

痛みも大分あるだろうに騒ぎ立てる事もない、流石は学院の生徒だ。


「セラフィックロッド!」


 見る見るうちに塞がっていく怪我に驚く女生徒。


「まだ痛みはあるだろ、俺の背に乗ってくれ」


 流石にお姫様抱っことかは、これからみんなのとこに戻るのに恥ずかしい。

おんぶってのも、なんか色々密着して気まずいけど言ってる場合じゃないからな、魔物の気配がまだ近くにある。


「走るぞ、揺れは我慢してくれよ」


 俺が女生徒をおぶって走り出すと、魔物の気配も追ってくる。

くそ、狙われてるか……何とか校舎まで逃げ切らないと。


 林を抜けて校舎まであと少しという所だけどギリ追いつかれそうだ。

そう判断した時点で俺は魔法の詠唱に入り、それを終えていた。


 振り返り対象を視界に入れてロックオン。

高速で飛んでくるそれは、片翼の鳥が二体くっついた五条覇ボスのカルランビナに似た魔物だ。

比翼鸞離ひよくらんりとセトちゃんによって表示されている。


光の槍(ライトジャベリン)


 俺の眼前から飛び出したライトジャベリンは比翼鸞離ひよくらんりに真っ直ぐ向かっていく。

だが当たる直前に二体に別れ、それを躱そうとする。

名前からそれは連想出来たので、すでに織り込み済みだ。


「マルチパースート!」


 指を鳴らしてそう声に出すと、ライトジャベリンが二つに分かれてそれぞれを追尾して撃ち落とす。

魔導呪言語を実は覚えていたと知った俺は、光の槍(ライトジャベリン)に改良を施し、複数の敵に対応できる様にしておいた。普通はそうそう出来ることではないけど、セトちゃんに上手いことやってもらった……MPもそこそこ使ったけど。

当然、威力も上げてある。


 ミノタウロスほどの強度はなさそうだとはいえ、一撃で落とせて良かったよ。

何とか無事に救出して、校舎に戻ってくることが出来た。

林にはまだ魔物の気配があるけど、こっちまでは来なさそうだ。

これで結界は期待通りに作動していることが分かって、俺も安心した。

 

一年の生徒は千人いるので、このままですと登場人物が際限なく増えてしまいますので、都合上人数を絞って書いていきますので、臨場感的にはあまり大勢いる感じが出せるかわかりませんが、頑張ってみます。


今回も読んで頂きありがとうございます

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