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責任って言われてもなあ


 さて、放送室に着いたはいいけど……機材の使い方が分からない。

スイッチやレバーがいっぱいある。

緑や赤に光ってるランプもいくつかあるし、何が何やらだな。


「玻琉綺、マニュアルあったよ」


 でかした深優璃。

深優璃がマニュアルを見ながら、あとはマイクに向かって喋るばかりにしてくれた。


「あー、こちらは一年総代を務める藤堂玻琉綺です。現在原因は不明ですが異常事態が発生しています」


 よし、ちゃんと放送されてるな。深優璃さんってば頼りになるなあ。


「学院敷地内が霊洞に取り込まれた様な状態に陥っている可能性があります。魔導力場はレベル5と推測されますが、校舎に結界を張りましたので中は安全性が保たれていますので、決して外には出ないようにお願いします」


 うう、こんな時だけど校内放送初体験だ、緊張して言葉が硬くなってるな。

各教室からの悲鳴にも似た声がここまで届いてくる。

レベル5などと聞かせられては無理もないけど、ここで嘘を吐くよりもいっそ本当の事を言って、今のうちに存分に混乱しておいてくれれば、時間をおけばかえって冷静になれるだろう。


「皆さんの混乱も分かりますが落ち着いてください。今後の事を話し合いたいので、各クラス二〜三名の代表を選び、30分以内に実習室まで来てください。またこの場にいないクラスメイトにもそれぞれ個別で連絡を取って、可能なら校舎まで避難する様お伝えください。以上一年総代藤堂でした」


 ふう、どうにか言いたい事は言えただろうか……。


「よし、俺達も実習室に行こう」


「なんか……玻琉綺凄い冷静だね。レベル5ってホントなの?霊洞に取り込まれるって何?そんなの聞いた事ない!玻琉綺の結界ってホントに大丈夫なの?私達どうなっちゃうの!?」


 深優璃……無理もないか、彼女のいう様に俺みたいな態度の方がおかしいよな。

普通の15歳なら取り乱さないわけがないもんな。

でも今はそんな事言ってられない、やる事は山の様にある。


「落ち着いてくれ深優璃!」


 俺は彼女の両肩を掴み、軽く揺すって深優璃の顔を見る。

うっすらと涙を浮かべるその瞳には、不安の翳がおちている。


「俺は総代として皆をまとめる立場だ、俺達が不安がっていたら周りはもっと不安になる。痩せ我慢でいい、今は俺を信じて不安は押し殺してくれ」


 まったく、俺は本当に気の利いたことが言えない。深優璃もキョトンとしちゃってんじゃん。

彼女の不安を解消する言葉の一つも出てこない。ただ我慢してくれしか言えないとは……一体一万年以上も何をしてたんだか。


「すまないけど時間が惜しい、実習室へ急ごう」


 本当にすまないとは思うけど、全て終わったら土下座でも何でもして謝るからさ、今は堪えてくれよ。


「……うん」


 ちょっとは落ち着いてくれたか、深優璃も中々強い子だな。

ちゃんとそれに報いる様俺も頑張るからさ。


「結界の事は信頼してくれていい、俺の自信作だ」


 何せ魔導角に五条覇ボス素材を組み込んで魔熊体脂でコーティングした他に類を見ない代物ってセトちゃんからもお墨付きを貰った物だからな。


「……自作って、それホントに大丈夫なの?まあ信じてもいいけどさ」


 なんとなく口調も落ち着いた感じがするな、これなら大丈夫そうだ。


「サンキュー、他のみんなも不安だろうからさ、深優璃の明るさで元気づけてやってよ」


「うん、任せて!」


 俺は口下手だから助かるよ。


「オイ藤堂!どういう事だ!」


 実習室に入るなり怒声が飛んでくる。

俺によく模擬戦仕掛けてきてた奴だ、名前は知らない。だって彼名乗らないんだもの。


 実習室にはすでに十人以上の他クラスの生徒達がいた。

探索科だけで考えれば半分以上のクラス代表が集まってるって事か、まだ五分と経ってないのに早いもんだな。

それだけここにいる人らはクラスで信任を得てるって事だな。


「放送で言った通りだ、原因不明の異常事態だ」


「何にも分かってねえって事かよ!」


 今度は別の奴が怒鳴り出す。


「分かっているのは、ここが霊洞に呑み込まれて、魔導力場のレベルが5だという事だけだ」


 俺だってまださっき放送で言った事以外分からない。

アッちゃんは自然現象だというし、ヒナは“お姉様”とかいうし……神様のいたずらか?とか言うバカな答えしか出せない。


「藤堂さんの言う力場レベル5というのは何か根拠があって?」


 黒髪ロングの綺麗な女子生徒が落ち着いた感じで問いかけてくる。

そういう感じだとこっちも会話がしやすい。


「俺には分かる。それ以外の根拠はない……けど、それはしばらくすれば証明されるだろ」


 何せレベル5ともなればもうそこらじゅうに魔物が湧いていてもおかしくないし、総じて強力な魔物だ。

高校生が立ち向かうレベルではないし、プロの探索者だって上位クラスでもなければ危ないレベルだ。p


「じゃあ結界ってのは何なんだ、そんな強力な結界を本当に張ったと言うのか。一体どうやって」


 また別の男子生徒が疑問を発する。

短髪の体育会系イケメンだ、体育祭で目立ってたのを覚えてる。名前は知らない。


「そういうアイテムを持っていた」


「持っていたってお前……」


 さっき言ったことの復唱ばかりだな、今後の展望なんかを話し合いたいのに。

どうせ他の人が来たらその人らも同じ事聞いてくるんだろうな、時間の無駄だ。


「ふざけないで!そんな適当な答えで納得出来るわけ無いでしょう!何かあったら貴方責任をとれるの!」


 また別の女生徒だ。責任の所在は俺じゃなく学園側だと思うけどな。

俺は一応君らと同じここの生徒だぜ?でもそんなこと言ったら俺の言うこと聞いてくれなくなっちゃうよな……こう言った有事の際には指揮系統が大事だ。


 もちろん俺以外に誰かしっかりした奴が名乗り出るなら、総代として委任してもいいけどそんな奴いないだろ。

だから俺が総代として一先ず指揮を取るが、これはあくまで暫定的な措置だ。


「責任を問われるのは俺じゃないと思うけど、少なくともこの校舎が安全であると言うのは俺が責任を持つ」


 それはつまり、ここが魔物に襲われる様な事でもあれば、俺が責任を持って討伐するという事に他ならない。


 ここにいるのは全員最低でも一度は俺に挑んで返り討ちにあった連中だ。

俺の力は知っているだろうが、果たして高レベル帯の魔物にも通用するのかは当然未知数だ。

って事は分かっているだろう、それでも尚揺るがない俺の自信に皆言葉を呑み込む。


 あ、でもそうすると俺こっから動けないって事になっちゃうな。


「そうだタツ、剣ヶ峰や沙嶋達はどうした、まだ外にいるのか?」


「ああ、そうみたいだ。校舎を一回りして戻るって連絡がさっきあった」


 そうか、あんなんでも心配だな。

人影が見えなくなった時点で戻って来ればいいのに……カエデやヒナがいれば大丈夫だと思うけど。


「なら次の連絡を待とう、もう結構いるな……少し早いけど協議を始めよう。才華、議事録を取ってくれ」


「ええ!?そんなのやった事ないよ」


「みんなから出た意見をメモしてくれるだけで良い。発言者の名前や時系列も気にしないでいいし出来る限りでいいから頼むよ」


「う、うんやってみる」


 あ、そうだ大事な事忘れてた。


「それと才華、『寒暖烈士皮エンパイロマント!』これを羽織っておいてくれ」


 そう言って才華に寒暖烈士皮エンパイロマントを渡す。

みんなの前で出しちゃった……ま、しょうがない。


「ええ?この暑いのにマント?」


 まあそういう反応も分かるよ、でも大丈夫暑くはならないし何なら涼しくなるくらいだ。

あれ?待てよ……しまったな、いいやちょっと後回しだ。


「詳しくは後で話す、何も言わずに今はそれをすぐに羽織ってくれ」


 ここで説明しちゃうと、周りにまた色々話さなきゃならなくなる。

今はその時間が惜しい。


「玻琉綺君がそう言うなら……」


 才華は渋々ながらも寒暖烈士皮を羽織ってくれる。俺の信頼度も高くなったもんだ。


「ちょっと玻琉綺!やるなら早くしなさいよ!」


 何だよまれな、何をそんなにイラついてんのさ。

言われなくてもさっさと始めるよ。


「じゃあ……」


 “ガシャアアアン”


 言いかけたところで、けたたましいガラスの割れる音がした。

魔物は入ってこれないはず……って事は。


本当は昨日投稿したかったのですが今朝になってしまったので、今日は二話投稿です。

今回も読んで頂きありがとうございます。

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