しばらくギルドはいいです
ハア、やっと終わった……。
今回俺が呼ばれたのは治癒の魔道具や、潤葱総士郎捕縛関連で学院側も調書を取ると言うのが名目だった。
治癒の方は霊洞で見つけた傷癒水というアイテムがどうのと言って誤魔化し、潤葱総士郎に関しては霊洞で偶々行きあっただけで、なんの関係もない為、事実確認だけで済んだ。
アイツはまだ脱獄とかはしてないみたいだ……時間の問題かもしれないけど。
それよりもむしろその後の話の方がメインだった気がする。
俺に複数のギルドから誘いが来ているそうなのだ。
どうも今回のテストで十分な成績を納めたという事で、学校側で止めていたものを解禁したらしい。
探査者ギルドからは加納崎さん名義で勧誘の書面が届いていて、それによると探索者ギルドにもそれぞれ小ギルドと言うか、クランという組織があって、探索者はそのクランに所属するという形になるみたいだ。
ちなみに探索者ギルドは全日本探索者協会と大日本探索者連盟と新日本探索者組合と言うものがあり、加納崎さんのところは全日の方みたいだ。
大日と新日からも書状は届いている……なんかプロレスの団体みたいだな。
紛らわしい事にどれも霊洞探索ギルドと言う通称で、元々は一つの組織だったのが権力、利益、名誉などで闘争があって分裂した様だ。
それぞれが自分の所を元祖だの本家だ本元だと言い合っているらしい……ラーメン屋かな?
討伐ギルドからも誘いが来ていて、まれなの威薙会からも話が来ていた。
さらには素材系のギルドからの勧誘もあった。
俺の学院での販売実績なんかも知られている様で、ミッカド商会がその筆頭になっている。
またさらに、軍からもお誘いがある様で、基本的に学生が所属できる組織ではないが、下部組織に当たる霊撃隊で予備生としての入隊を打診されている様で、なんと国家公務員だ……高校生なのに。
その辺の法律どうなってんだろ。
他にも様々なギルドがあるけど、今回お誘いがあったのはその四つのギルドだ。
探索者ギルドは一般的に探索者と呼ばれる人達が所属していて、日本最大のギルドだ。
活動は多岐に渡り、およそ霊洞関係であれば全てがその範疇になる。
討伐ギルドはその名の通り魔物討伐専門のギルドだ。
とにかく霊洞に入り浸り、魔物を倒す目的のみで、攻略や調査、素材収集などは二の次で中には一切関心を示さない人もいるらしい。
素材系ギルドは専門分野ごとに分かれていて、鉱物、ドロップ・宝箱、植物系、などがありそれぞれで情報共有して、各ギルドが分担して収集に当たっているみたいだけど、戦力的な問題もあって、主に討伐ギルドと連携して霊洞に潜っている様だ。
そして軍、霊撃隊だけど、通称が霊撃軍と言われるぐらい独立した存在として認知されていて、組織的には日本軍の一組織でしかないが、独立採算制や独立した指揮系統などもある事から俺みたいな高校生ですらスカウト出来る様だ。
仕事としては、救出や警備、調査、攻略、討伐、素材収集と探索者ギルドともろ被りなので、縄張り争い的な感じで、他のギルドと共に仲はあまりよろしくない。国営だけにフットワークでギルドには一歩遅れがちだ。
心情的には探索者ギルドか討伐ギルドなんだけど、探索者ギルドにはあのクソジジイがいるし、討伐ギルドもなんかヤクザっぽいと言うか、後ろ暗いところが多そう……まれなには悪いけど威薙会の対応を見てそんなイメージを持った。
もっとも絶対どこかに入らなければいけないって事でもない。
決めるのはもっと知識をつけたり、自分のやりたい事や方向性が定まってからでもいいだろう。
GW前に加納崎さんに連絡を取った時とは状況が違う。
無理に学院外での霊洞探索をする必要は無くなったのだから。
と言うわけで、返事は保留という事で今回は見送って総代邸に帰って来た。
「む、藤堂玻琉綺!今回のテストでは貴様に不覚を取ったが今度の体育祭では必ず俺が勝つ!」
サジ……一応俺とお前は同じチームなんだが。出会い頭に訳のわからんことを言うな。
そもそもお前がなんの競技に出るのか知らんし、なんなら俺も何に出るのか知らない。
「沙嶋、俺の知らないうちに参加競技が決まったみたいだけど君は何に出るんだ?俺と勝負する種目でもあるのか?」
「うるさい!屁理屈を言うな、とにかく貴様には負けん!」
ええ〜、屁理屈って……。
でも体育祭かあ……マジで俺何にも分かってないんだけど、普通練習とかやったりするもんじゃないのか?
この学院の体育祭って何やんだろうな。
で、晩御飯時にみんなに聞いてみると、やっぱりGW明け初日に説明があったみたいだ。
なんで誰も教えてくれないんだよ。お土産のキーホルダーが微妙だったからか?みんな“お、おう”みたいな反応だったしな。
一応休みの内に探索者専用電車で郡山まで戻って饅頭も買ってきた。
老舗の有名店で買ったのでそっちの評判は良かった。
ともかく聞いた話によると、生徒人数が多い為と、学科によって運動能力に開きがありすぎる為、学年別、学科別で執り行うそうだ。
こういうのって全校生徒でやって学校全体の一体感を高めるとかが目的なんじゃない?
確かに探索科に限っても500人からいるんだし多いとは思うけどさ。
うちのクラスの実行委員は深優璃と男子はあの不良顔の牧浦康太君だ。
俺嫌われてんだよな、実行委員で一緒になるの気まずいなあ……何で委員になんてなったんだろ。
待てよ、まさか深優璃に気があるのか?そういえば以前話しかけられた時は俺と深優璃の初絡みの時だったな……怪しい。
だとしても俺にはどうすることも出来ないけど。
次の日に判明した俺の仕事は開会と閉会の挨拶、選手宣誓、結果発表……とにかく喋ること全般だ。
そんな長話をする訳じゃないけど、結構プレッシャーかかるな。
それよりもプログラムの真ん中にある総代パフォーマンスって何よ。
「なあ、俺聞いてないんだけど……このパフォーマンスって何やんの?」
「決まりはないみたいだけど、例年だと幻術の魔物の討伐実演とかが多いみたい」
総代ってそんな事までやらされんの?
でも力場レベル低いと魔物も弱体化するって話だし、幻術ならその縛りはないから見せ物としては面白いのかもな……何で見せ物になってんだよ!総代の地位って実は低いのか?
深優璃も楽しそうに言うなよ。
「なるほどなあ、その線が一番手っ取り早いか……ところで俺何の競技に出るの?」
「玻琉綺君は騎馬戦の大将とリレーのアンカー……だね」
今度は才華が答えてくれる。
「そんな重要な役を俺がやっていいのか?」
実行委員の牧浦君に“ちょーし乗んなよ”とか言われる男ですが?微妙なキーホルダーをお土産に買ってくる男に任せてもいいのか?
「いや、ハル以外にその役やる奴いねえよ」
タツはそう言ってくれるが……。
「そうね、私は他クラスだけど玻琉綺以外がやったら何だかモヤっとするわね」
まれなもそう言ってくれるが……。
「藤堂玻琉綺!仕方がないから大役を譲ってやったんだ、もっと堂々としてろ!」
「譲るも何もなあ〜、誰も竜司に任そうとしてないんだよなあ」
サジに沙河楽君までそう言ってくれるならまあ……。
「ご主人様の晴れ姿!ワシも楽しみじゃあ」
何でお前いんの?
「ヒナちゃんも観に来るならいい席用意しとくね」
何で深優璃も普通に相手してんの?
「藤堂!君にばかりいい格好はさせない、ヒナの応援は俺にだけ向けられればいいんだ!」
お前も何言ってんだよ、警察呼ぶぞ。
何でも学院上層部をヒナ自ら説得して、この総代邸に住む事を認めさせたそうだ。
皆には学院長の孫だと説明してあるようだ。
それで何で俺をご主人様って呼ぶんだよ、やめろっつったろ。
そもそもいつそんなの決まったんだよ、俺が知らないのおかしいだろ。
なんか俺知らない事多すぎない?脳が二つある弊害なのか?
「玻琉綺ちょっといい」
食後、皆が散り散りになっていく中まれなが俺に話しかけてきた。
「どうしたんだ?」
「貴方……気をつけなさいよ」
どう言う事?
「ほとんどは貴方を認めているけど、中にはよく思っていない連中もいるって事よ」
「……やはり嫌われているのか」
へこむわー、やな情報聞かせないでよ。
「そう言う事じゃなくて、邪魔に思ってる人たちがいるってこと。上位貴族の中でも特に権威にうるさい家柄の人もいるのよ」
あー、俺みたいな庶民が総代ってのを嫌がる奴いそうだなと思ってたけど、やっぱいるのか。
「生徒だけじゃなく教師にもいる様だしね、それから……神薙の連中も学院に入り込んでるみたいなのよね」
え、ここ学院だよ?別に狙いは俺じゃなかったって事なのか。
「神薙……あの小太りおじさんから聞き出したのか」
「小太りって……そうよ、皆連寺からは結構情報引き出せたみたい……私もそんなには知らされてないけどね」
俺が邪魔な貴族に先生に神薙か……。
ヤベエな、絶対体育祭でなんかあるだろ、こりゃあ一筋縄では行きそうにないな。
周りに変な被害が出ないといいんだけどな。
久しぶりにルームメイト勢揃いです。
たまには出さないと忘れてしまいそうです。
忘れない程度には今後も出したいですね。
今回も読んで頂きありがとうございます。




