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何で名前呼びに抵抗あったんだろ


「と言った次第でございますです……」


 何だよ最後の方、半分わざとかよ。人騒がせな事をするなあ。

でもさすが神様というか、潤葱総士郎の事も見抜いていたんだな。その上俺と関わりを持ちそうな事まで予見していたとは恐れ入る。


 ガミは今でこそ大人しくヒナの話を聞いているけど、玄関から出てきて、俺にくっついてたヒナにさらに抱きつき泣き出したかと思えば、


「何だって藤堂がヒナと一緒にいる!」


 などと騒ぎ出し。


「ヒナにまで手を出す気か!許さねえぞ藤堂!」


 などと激昂し。


「こりゃ翔魔!なんて口の利き方じゃ、この方はワシを助けて下さったのじゃぞ!」


 などと怒られていた。面倒な奴だよ。

本当にちゃんと話聞いてた?ヒナはお前の経験値かっぱらって自分のモノにするために傍にいたって言ってたぞ、それでいいのか?

早いとこ朝ごはんでも食べたいとこだけど、このまま屋敷に入ってもいいもんだろうか。


 ヒナの姿は他の者には見えないとのことだったが、こういった力場のある所では普通に見える様になってしまうそうだ

その為、屋敷に入れてしまえばみんなにも見えてしまう。神様ってそんな簡単に見えていいものなのかなあ。


「ヒナをみんなに見せてもいいもんなのか?」

 

 神様なんだし、そう簡単に姿を現しては有り難みがない。

ましてやここはダンジョン高で、ヒナはダンジョンの神様だ。もはや主神みたいなもんだろう。

かと言って、こんな庭先で何時迄も駄弁っているわけにもいかない。


「ヒナ、一体藤堂と何があったんだ。その……何で藤堂なんかに抱きついてたんだ、何か脅されていたのか?助けた見返りとか……」


 あのさあ、俺結構苦労したんだぜ?大怪我までしたし。何でその見返りが人外少女の抱擁なんだよ。

俺にそんな趣味はない、あくまでキャラとして“のじゃロリ”と言うジャンルが嫌いじゃないってだけだ。


 逆にガミはそれがご褒美に感じるってのか?ヤベえ野郎だな、お巡りさんコイツです。

別に見返りとかいらねえよ。

なんか助けたくなったから助けただけだし、潤葱総士郎は敵なんだから、ヒナを助け出すってのはいい嫌がらせになっただろうし。


「翔魔よ、お主そう言う所変わらんのう。いい加減その直線的な性格を治さんか」


 確かにコイツは目の前しか見えてないきらいがあるな。ヴァーチャル訓練なんかでも、自分のやりたい攻撃をただ力任せに押し通している感じだしな。


 もっともそれは、短所ではあるが逆に長所にもなり得るとも言えるけど、それはコイツの今後次第だな。


「でもヒナ、俺は信じられない……藤堂がヒナを助け出したなんて。何の手掛かりもなかったのに」


 確かに今回は上手くいきすぎたな。

黄泉洞道とか言うワードから黄泉比良坂を連想して、比良坂霊洞に行ったら潤葱総士郎の殺人現場に居合わせて、実家に帰ってバクレイオン霊洞に行ったらまれなの兄を名乗る男が現れて、そいつに会いに行ったら実は潤葱総士郎の幻術で、ヤツの攻撃魔法で大怪我はしたけど、うっかり潤葱総士郎がこぼした岩屋洞と言う言葉とまれなから聞いた鬼面山と言うワードから哀太刀ヶ原の鬼面山に当たりをつけたらドンピシャヒナがいた。


 出来過ぎだな……まれな大活躍だ。

一々潤葱総士郎が出て来なければ俺も全く何も出来なかったと思うけど、あいつ墓穴掘りまくりだろ。

わざとかよ、と云わざるを得ないレベルだ。


 まあ実際は神薙とか言う組織も何か絡んでいるんだろうけど、鬼も何かの要因なんだろうか。

怪童丸の言葉も気になるよな……変な設定付けやがって。


「翔魔よ、お主いい加減にせいよ。この方に対する無礼は許さんぞ」


「何でヒナはそこまで藤堂を気にするんだ!せっかく再開したのに冷たいじゃないか」


 「ショウマ、その辺にしておきなさい。詳しくは言えないけれどその方はやんごとなきお方なんですよ」


「何だよやんごとって、適当な言葉を使うな!そもそもいくら藤堂がヒナを助けたんだとしても距離感が近すぎる!会ったばかりで何でそんな仲になってんだよ」


 ガミさあ、“やんごとない”ぐらい知っとこうぜ、高校生なんだからさ。

なんかポロッと本音出てるし……要はヒナと俺が仲良くしているのが気に入らないと。

別に仲良くはないぞ。むしろご主人様呼びされて恥ずかしいぐらいだ。


 それよりいつまでここにいる気だ。俺の質問にも答えてくれてないし。

人がせっかく覚悟決めて来たんだ、もたもたしてたら鈍っちゃうでしょうに。


「積もる話もあるだろうし、とりあえずみんなで出掛けてくればいいんじゃないか、リカはどうしてんだ?一先ずはみんなでヒメの無事でも祝ってこいよ」


 もう投げやりだ。付き合ってられん。

ヒメの処遇はそっちで考えてくれ、ご主人様云々も全部後回しだなる様になるだろ。


「俺は徹夜明けで眠いんだ、騒ぐなら静かにな」


 そういや徹夜明けだったんだよな……別に全く眠くは無いな。

ナル……才華や深優璃の事で頭が一杯だったからその辺気にもして無かった。

まあ若いんだからそういう事もあるか。


 連中を放っておいて俺は屋敷に入る。


「ああ、ご主人様!」


「ヒナ、何でそんな呼び方を……」


 ああうるさいうるさい。

俺は知らん!そっちで解決しろ。


「あっ……」


 リビングに行くと丁度起きて来た深優璃とばったり会う。


「おはよう、一週間ぶりだな。元気だった?」


「あ、その……おはよ。怪我は大丈夫なの?みんな心配してたんだよ」


 よかった、クラスにはちゃんと怪我だって正確に伝わっている様だ。

まあここにはまれなもいるし、死んだだのテロリストだのと誤報が伝わるはずないよな。


「ああ、もう元気一杯だ。テスト前に休んじゃったのが不安だけどな」


「あはは、そうだね。総代様は大変だ、いい成績取らないとカッコつかないもんね」


 うう、それを言わないでくれ。


「深優璃の方こそ大丈夫なのかよ、入学して最初のテストなんだから総代だろうと何だろうと関係なくいい点取らないとな」


「え?……今なんて?」


「いやだから、いい点取らないとなって」


「そうじゃなくて、今深優璃って言った?」


 むむ、耳聡いな。そこに気付くとは……そりゃまあ普通に気付くか。


「ああ、急にごめん。嫌だった?」


 キモかっただろうか。特にキッカケなどなく、あくまで俺自身の問題で呼び方変えちゃったからな。


「イヤ……じゃないけど、どうしたの急に?」


 よし、イヤじゃない頂きました。


「まあ何だ、こっちの方が仲良さげかなって思ってな」


 照れくさくてつい偉そうに言ってしまった……だいぶ感じ悪いな。


「そうなんだ……そう言えば昨日夜どこ行ってたの?」


 一応内緒だし霊洞言ってたとは言えないのか?でも上級生徒とやらには筒抜けらしいから、ルームメイトの深優璃とかには言ってもいいのか……まれなも知ってるし。


「ちょっと学院内の霊洞に行ってたら時間を忘れてうっかり朝になってたよ」


「え、霊洞に?ハルってば……玻琉綺ってば霊洞にもう入れるの?」


 おおう、名前呼び返しか、何だかこそばゆいな。

まれなもそうだった気もするけど、不思議と何も感じなかったな。

なのに深優璃に言われるとちょっとてれちゃうのは何でなんだかな。


「まあ総代にもなると色々ね……」

 

 こういう意味ありげなのに別に意味のない返答って、言ってて心苦しいな。


「じゃあお腹空いてるでしょ?待ってて、今ご飯作るから」


「ありがとう、助かるよ。最悪自分で作るかって思ってたんだ」


「確かにそれは最悪だね」


 く、反論は出来ない。俺の料理センスは壊滅的だからな。

おかしいんだよなあ、レシピ通りに作ってるはずなんだけど……。


「うっさい、深優璃と比べんな。いいなあ料理が上手くて」


「おだてても献立は変わらないわよ」


 うむ、昨日の事は無かったことに出来てるな、普通に話せてるはずだ。 


「あれ、いい匂い……あ、ハル……おはよう」


 才華も起きて来た。休みなのにみんな早起きだな。


「おはよう才華。心配かけたよな、でももう大丈夫だから」


「え、今サイカって言った……?」


 やっぱり才華も驚くか。名前呼びってそんな驚くことなのか?

それとも急に呼ぶから驚くのかもしれない。何か前準備が必要だったか。


「ああ、深優璃もそうだけど、才華の事も今後そう呼ぼうかと思って……ルームメイト感を全面に押し出す感じでこう……イヤ?」


「イヤじゃない!……あ、ごめん」


 何を謝ったのかは分からないけど、才華からも許しを得られて良かった。

もう完全に昨日の事は忘れる事が出来たな、あ、お土産渡さないとな。

昨日は書きそびれてしまいました。

連載開始して二か月、ここまで集中して書けるとは……。

まだまだ頑張りますので応援よろしくお願いします。


今回も読んで頂きありがとうございます。

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