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神タブレット

 今のは一体……?

俺は振り返りミツとキョウを見る。


「なんだ今のは、ココは一体どうなったんだ?」


 少なくとも俺よりはこの世界の事情に詳しいであろう妹達に心当たりを聞いてみる。

予想はつくが確証が欲しい。


「う、うそ……ココが穴堕ちしちゃうなんて……」


 ミツが愕然と呟く。


「あ、あ……コ、コ……そんな」


 キョウも茫然と佇んでいる。


 つまり不味い状況ということか、穴堕ち……大体想像はつく。


「アレはダンジョンなんだな」


 俺は歪んだ空間を睨みつける。

異世界のダンジョンとは見た目は違うが、似たような空気を感じる。

たぶんあの空間が入り口になっているのだろう。

吸い込まれた原理はわからないが、あの中にココがいるってわかってるならそれでいい……助けに行くまでだ。


「……じゃあちょっと行ってくる」


 二人の様子からココの身に危険が及んでいる事は明らかだ。

命の危険すらあるのかも知れない。

ダンジョンには魔物が出るって話だが、武器などは当然持っていない。

身を守る術も無く飛び込むのは無謀なのだろう。

でもそれはココや他の穴堕ちした人たちも同じだろう。


「え、ちょっと兄ちゃん!」


「まさか兄貴?」


 二人の反応を待たず俺はダンジョンへと飛び込んだ。


「だめええええ!」


 二人の声が耳に届いたがすぐに何も聞こえなくなる。

ダンジョンへの侵入に成功したのだろうか。

一瞬暗闇に包まれたかと思うと綺麗に磨かれた石造りの大広間のような空間が現れた。


「これが……ダンジョン」


 初めて入るこの世界のダンジョン。

マンションのエントランスの様な風情がある、尤も比較にならないくらいは広いが。

正面には三つの通路があり背面には例の歪んだ空間がある。

……そして周りには誰もいない。


 ランダム転移か? おそらく通常の入り口から入るとこのエントランスに出て、穴堕ちとかいう現象に巻き込まれるとどこか別の場所に送られる、と言ったところか。

問題は全員が同じ場所にいるのかバラバラに転移されているのかって事か。

なんて面倒くさい仕様だよ。


 不味いな、不慣れなダンジョンでマップも無しに要救助者は居処不明で全員がバラバラな可能性があり、魔物が徘徊し武器も無く今の俺はただの人。

ポジティブな要素が一つもない。


 とりあえず試しに出入り口と思われる空間に触れてみる。

自由に出入りが出来るかの確認のためだ、退路は大事だからな。


「うお」


 バチっと音がして手が弾かれる。 痛みなどは無い。

すると目の前にメッセージウインドが現れ、


《条件未達 要宝珠の獲得》

 

 と書かれていた。

メッセージウインドって……なんだそれ、ゲームじゃねえんだからさ。

つまりここから出るには宝珠とやらが必要って事か。

ちゃんと教えてくれるとは随分と親切なもんだな……これがフェイクじゃなけりゃあな。


 まあボスの討伐とか書かれてないだけマシか、嘘だろうがなんだろうがやってみない事にはわからないのだからな。

くそっ、ココを探して宝珠を見つけてってやらないと出られないか。

他の人も見つけたら放っては置けないし……これは難しいな。


 難しいはずだけど、ココが心配で焦ってるはずなんだけど……。

そういった感情とはうらはらに何か妙な高揚感がある。


“ダンジョンには高濃度の魔導力場が発生している”


 たしかそんな話だったな。

ダンジョン内では魔法が使えるとも……これは、俺の魔力が活性化している?

元々魔力が俺の中で脈打つのは感じていた。

けれども体内を循環するのみで外に放出ができずに魔法発動には至らなかった。


 まるでその力場に染み出す様に俺の魔力が外に溢れていくのを感じる。

高揚感はそれによるものか、この状態なら魔法が使えるのでは?

戻ってきた直後に使おうとしたマッピングを試してみるか。


 これは魔力をアクティブソナーの様に使う事でこういったダンジョンの様な構造物を走査するもので、まあサーチとも呼ぶべきものだ。

思えばこれを海上で使おうとしてたあの時の俺はどうかしてた。

なんせメッチャ魔力消費がデカいのだ。


 異世界においては問題にもならない程度ではあったが、今はただの人の身。

魔力があるとはいえ果たしてそれがどれほどの量なのかはわからない。

だからって手をこまねいているわけにもいかないからな、急がないと。


「サーチ」


 とりあえずこっちでの魔法の作法を知らないので声に出してみた。

あっちではこの程度は考えるだけで発動できたものだが、こっちにはこっちのルールがあるだろう。

……何も起こらない。


「スキャン」


 言葉を変えても無駄だった。

うーむ、使えそうな気配は感じるが何も起こらないな。

何かキーワードの様なものでも必要なのか? 魔導呪言語って授業があったぐらいだから、何か呪文の様なものが必要なのかも……。


 魔力の放出を試す事数回、コートの内ポケットが淡く発光している事に気づいた。

……コレは。

コレはアレだ、神様からの餞別の謎のお守りタブレットだ。

そうかコレがあったか。

俺を遭難から救ってくれた……かどうかは別に定かでは無いが、何かの魔法的ステキアイテムの可能性もある。


 内ポケットからそれを取り出す。

少々大きめのそれはとても内ポケットに入る様な代物では無いのだが、何故かすんなりと出し入れが出来る。


 そのタブレットの様な物の片面が光っている。

まるでタブレットの電源が入ったかのような状態だ、一体何が出来る物なのか。


『おおう、待ちかねたぞルキウス……いやここではハルキであったか』


 コイツ、直接脳内に⁉︎

って、え……コレまさかひょっとして。


『お前がコレを聞いているという事は、どうにも面妖な世界に変貌した様だな』


「神様……アルセティヌスなのか」


『うむ、この世界では神でもなんでもないが我はアルセティヌス、お前の友だ。親しみを込めてアッちゃんとでも呼ぶといい』


「……なんか随分と懐かしく感じるな」


 実際この世界に戻ってきてまだ一月も経ってないけど、なんかあっちの世界の事は夢でもみていた様な、古い前世の記憶の様な、希薄だけど思い出そうとすればしっかり思い出せるのに普段は記憶の底に沈んでる。


 いや、今は懐かしんでいる場合じゃない。


「ごめんアッちゃん、今余裕がないんだ」


『我をサクッとアッちゃん呼び出来るぐらいには余裕があるではないか』


「だから掛け合いをしている場合じゃない、俺の妹がピンチなんだよ」


 とは言え心強い相棒との再会だ。

現状打破のいい一手が打てるかも知れない。


「なんかこう……マッピングとか人探しとか、こう、なんか出来ないか?」


 スマホだかタブレットに身をやつしたとはいえ、曲がりなりにも神様だ。

少なくとも俺よりは頼りになるはず。


『む、では落ち着いてから再会を噛み締めるとしよう、ではその石板の表面を指で二度叩くのだ」


 ダブルクリックか。


《ようこそ、セティネストへ》


 などとテキスト浮かび上がる、呑気か。


『ある程度はプリセットしてある、それで探すといい』


 説明が雑だろ、どうやるんだ。

音声認識はするのか?


「ココはどこだ、どこにいる!」


《ここは新規ダンジョンの駅前霊洞です。名称未設定、現在地は入り口エントリーポイントです》


「違うわ!妹を捜している!どこにいるんだ!」


《ほんのジョークです、妹……瑚琥那さんの現在地を表示》


 クソうぜえ、空気を読め。今それどころじゃないと言ってるだろ。

ウザいテキストメッセージだが、画面にマップが表示され白赤黄緑のポイントが表示される。

そのうちの緑のポイントが点滅している。


《白がユーザー、赤がエネミー、黄がヒューマン、緑が該当人物です》


 わー便利、何コレ凄い。

黄と緑は一塊りになっている、みんな一緒のところに飛ばされた様でそこは安心だけど、赤……エネミーって事は魔物か、それが数体そこの集団に向かっている。


 俺は走り出す。目指す通路は三つの内の左側だ。


やっと本筋の話がはじまりました。

今までのは単なるプロローグです。

随分長かった気もしますが多分気のせいでしょう。

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