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ご主人様なのじゃ


 総代邸に着くと時間は朝六時。普段なら深優璃が朝メシ作っている時間だけど気配はない。

まだみんな寝てるのか。

……今日土曜日じゃん。せっかく復活を果たしたと言うのに。


 うっかりしてたな……どうしよう。

やっぱここは試験勉強に充てるべきか、それとも才華や深優璃を誘って町にでも遊びに行くとか……は彼女らの勉強の妨げになるか。


 今まで休んでたくせに、いざ休日となるとやる事がない。

そうだな……ちょっと時間が早いけどヒメの救出を伝えるか。


 庭、と言うにはかなり広い敷地内の片隅に、大きめの犬小屋がある。

龍犬ホロの住居だ。


「おーいホロ、おはよう。元気だったか」


  “きゃふーん” へふへふへふへふ……。

 

 と懐いてくる様子は随分カワイイ。


「カエデは起きてるか?ちょっと話があるんだけど」


 “わほーん”(すぐに呼び出しマスヨー)


 この従魔たちはお互い念話みたいな感じで繋がれるみたいなので、部屋まで行くのはガミがうるさそうだから、こうやって呼び出してもらう。


「お呼びでしょうか藤堂様」


 すぐに玄関先からカエデが出てくる。

一応ここに住んでる時は、普通にしていようと決めた様だ。殿から様になってるけど。


「やあ久しぶり、この間頼まれた事なんだけど……」


「緋奈津の事でしょうか!何か進展がございましたか、どんな些細な事でも構いません!」


 おおう、食い気味に来るね。よっぽど心配なんだろうな。


「ああ、一応は解決したよ。『緋奈津比売神子!』」


 俺のポケットから光の粒子が湧き出し、目の前に収束していく。

そのまま人型になっていき、桃の花びらに包まれたヒナツヒメが顕われた。

セトちゃんが気を使って棺は出さなかった様だ。


「ま、まさか……そんな、本当に……」


 まあアレじゃあ死んでるみたいだしな……死んでないよね?神様だもんな。

綺麗な花びらに包まれたヒナツヒメは、その場所だけ別世界の様に神秘的に見えた。


 あの薄暗い霊洞で、棺に入っていた時とは様相が違う。

これはなかなか神様感あるな、石板に閉じ込めちゃってごめんなさい。


 でもよく見ると、神々しさに紛れて顔色があまり良くないように見えるし、少々やつれているようにも見える。

無理に力を使わされた反動だろうか。


「ひ、緋奈津!ああ、なんて御労しい……でも、生きて……ここにいる。本物の緋奈津比売……」


 カエデは感極まって、ヒナツヒメに縋りつき涙を滂沱と流す。


「ああ、ああ……何と、何と御礼を申し上げればいいのか。この様な短期間で……緋奈津を助けて下さるなんて、いと尊きお方よ。深く感謝を捧げます」


 大袈裟だな……と思うのはやめよう。

それだけカエデにとっては大事な存在なんだろう。なんせ神様だしな。


「眠っている様だけど、目を覚ますのか?」


 見るからには、魔力……神力か?が枯渇気味な様に見える。


「大分無理をさせられた様に見受けられます。時間は掛かるでしょうが、しかるべき場所で神力の回復に努めればお目覚めになられるかと存じ上げます」


 うーん、天翼の角杖(セラフィックロッド)とかどうだろう。この分だと回復するのに何年かかる事やら……。

せっかく助け出したんだから、元気な姿を見たい。


『玻琉綺よ、そんな物など使わなくともお前の力を分けてやれば良い』


『アッちゃんどう言う事?』


『この世界の全てのものはお前の力を根源にしておるのだ、あの杖も他の者を癒せる様にお前の力を変換する物に過ぎぬ。それ故に少ないMPで作成できたのだからな』


『じゃあヒメちゃんは神様だから変換なんかしなくても、俺が魔力だか神力だかを注げば良いって事かな?……俺に神力なんてあるの?』


『言ったであろう、お前が根源だと。魔力だろうが何だろうがお前が力を分け与えればそれで良い』


 そんな雑な感じでいいのかなあ。

力を分け与えるって言われても……魔力譲渡みたいな感じでいいんだろうか。


「カエデ、ちょっといいか」


 カエデに退いてもらってヒメちゃんの前に立つ。

えーっとどうしよう……手を握ったり胸に手を当てたりはなんか抵抗あるな。

額に手を当てるってのが無難かな。


「緋奈津比売神子、もう悪い奴はいない、大丈夫だ。さあ起きる時間だよ」


 額に手を当て声をかける。神様だって分かってるけど、見た目に引っ張られてつい歳下相手みたいになっちゃうな。


 俺の身体からヒナツヒメに、発光しながら力が流れていくのがわかる。

その身体を包む白い光は、とても自分から発せられたとは思えないほど、厳かで慈愛に満ちた安らぎが感じられる。

これが神力で合ってる?それともヒナツヒメ側で合わせられたりするのかな。


「これは……何と言う僥倖。まさかこの様な光耀溢れる祝福を頂けるとは……緋奈津比売もお慶びになられます。誠に恐悦至極で御座います」


 だから堅いしオーバーなんだよ。


「う、うん……ここは……ワシは一体何を」


 さすがは神様、ワシっ子で来たか。まさかこの流れは“のじゃロリ”じゃないだろうな。

まあ嫌いじゃないぞ。


「緋奈津ぅー!」


 カエデがヒナツヒメの元に駆け込みそのまま体当たりの様に抱きつく。

体格差があるので、見ててヒヤヒヤするな。


「おおカエデか、息災そうじゃな……いや、ワシはどうなったのじゃ!?あやつめに無理矢理棺に閉じ込めら……」


 のじゃったー!やはりそう来たか。


「お、おお、おおお!まさか……」


 話を途中で止めたヒナツヒメは俺を見ながらぷるぷると震え出す。

あ、やべえ……怖がらせちゃってるかな。

いやまさか、ちょっと顔が強面系だからって神様がそんなんでビビるわけねえ。


「お会いしとう御座いましたああ!ご主人様ああ!」


 いや何でやねん!誰がご主人様だ、そんなんあかんだろがい!キミ神様でしょ!

確かに前にアッちゃんから俺の子供みたいなものだって言われたけど、だったらせめてお父様とかだろうよ。


「実在すると信じてました!まさかご主人様が助けてくださったのですか、ヒナは感激です」


 のじゃはどこ行った。実在するってどう言う意味?一人称と略称はヒナか。

いや違う違う、だからご主人様って何なんだよ!あーコラ抱き付くな、ご主人様って言うならそれっぽく振る舞えよ。


「あーヒナ?そのご主人様ってのは何だ、俺とは初対面だろう」


 それから喋り方変わり過ぎじゃないかな?キャラ的に“のじゃロリ”好きなんだけどな。


「これは失礼しました。初対面でも分かります……総ての根源たる創造主様。ヒナ達神々には貴方様の存在が確と刻み込まれてます。こうして貴方様を目の前にすれば本能が直感で分かるんです」


 何々、何て?言葉遣いバグってんじゃんか。


「ストップだヒナ。いいか、人前で俺の事をそんな創造主とか言うなよ。人違いとは言わないし、勘違いとも言わない。けど俺は人間なんだ、ちゃんと人間扱いしてくれ」


 なんだか変なセリフだ。


「分かりました、それがご主人様のお望みならヒナ頑張ります」


「あ、あの緋奈津?貴女藤堂様に何を……」


「控えるのじゃカエデよ、このお方を誰と心得るのじゃ。畏れ多くも我等が父、天地分仮実日従彦大神あめのつちわけみのひずきひこのおおかみ様なのじゃ、頭が高いぞよ」


 何だその長い名前、勝手に変なあだ名付けんな。のじゃ語に戻ってるけど?


「申し訳ない、でも緋奈津、妾はその様な大神知らぬのだが……」


 俺も知らん、それ本当に俺への呼び名で合ってんの?やっぱ人違いとか勘違いじゃないの?


「その様なお方という事で八百万会議やおよろかいぎで採択されたのじゃ」


 人の名付けで遊ぶな。意味もよく分かんねえよ。


「ああ!!」


 今度は何だよ?


「ヒ、ヒナ!帰ってきてくれたんだな、無事だったんだな!」


 ガミかよ……また面倒くさいことになりそうだな。


一応このまま学校編を続けていきたいと思ってます。

でも未来のことは分かりません。

唐突に話が変わる可能性もありますが、どうかお付き合い下さい。


評価を入れて下さった方、ありがとうございます。

また、今回も読んで下さっている読者の方もありがとうございます。

今後も応援よろしくお願いします。

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