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ハルキイヤーは地獄耳


 “霊征学院前〜霊征学院前〜、降りる際は足元にお気をつけ下さい、駆け込み乗車は危険ですのでおやめ下さい”

 

 折り畳んだテントを片手に、そんなアナウンスを聞きながら電車を降りる。

車内で他の乗客に怒られると言ったアクシデントはあったけど、無事に学院まで帰って来れた。

あそこで怒られて良かったかもしれない、あの後どんどん混んできたからもしあのままだったら相当な迷惑をかけていた事だろう。


 着いたと言っても、まだここから15分くらいは歩かないといけないけど。

それでももう力場は薄らながら発生している。ちょっとトイレに行ってテントを石板にしまっておこう。


 手ぶらになり、学院までの道のりを歩き出す。

もう昼過ぎだ、道行く人並みは少ない。学生など俺ぐらいのもんだ。


 こんな時間だけど、一応登校はしておこう。

怪我で入院したと言うのはまれなが学院に報告してくれたみたいだけど、退院の報告は流石に無理だろう。


 GW中は彼女に随分世話になった。

せめてもの気持ちでお土産買ってきたけど……なんか改まって渡すのって恥ずかしいな。

まあ、同じ家に住んでるんだからいつでも渡す機会はあるだろ。


 もちろん他のみんなにも買ってきたし、何ならクラスのみんなの分もある。

ナル、ヨミ、タツの分も個別であるし、まれなが特別って訳じゃないのに何故かちょっと緊張するな。


 きっと俺にお土産のセンスがないから、渡すのが恥ずかしいと感じるんだろう。

“なんじゃコレ?”とか言われたらかなりヘコむ。


 それにしてもこの気分、向こうの世界から帰って来て初めて中学に登校した時を思い出すな。

俺の怪我に話は広まっているのだろうか、だとしたらどんな具合の怪我だと思われてるんだろう。


 慣れないな、こう言う面映さは……慣れたらダメなんだけど。

中学の時とは違って学院には守衛さんが立っている。

俺はデバイスに学生証を表示させ、それを見せる。そして守衛さんがそれを照会して、


「怪我で入院していたみたいだね、無事に退院出来た様で良かった。お大事にね」


 と、声を掛けてくれる。

こういった何気無いやり取りだけで、少し緊張が和らぐ。俺は単純なんだなあ。


 中学と違うのは校舎内もだ。

昇降口で靴を履き替え、廊下を歩くとまばらではあるが生徒の姿が見える。

授業中に何やってんの?と思う所だけど、実習なども多い学校のため、結構授業時間にバラつきがあって、昼休み以外は意外と他クラスと被らない。


 今うちのクラスは午後一の授業中のはずだけど、他のクラスは終わったとこもあるんだな。

学年ごとに校舎が違うので、ここにいるのは全員一年生だ。そして俺は一年総代。

当然顔は売れている。


(オイ、総代じゃねえか) (ええ、死んだって聞いたぞ) (俺が聞いたのはテロの容疑で逮捕されたって)


 ヒソヒソ


 なんだか変な話が出回ってるのか?死んだはともかく何で俺がテロリストになってんの?

噂ってのはそんなもんなのかなあ、俺も噂される程の男になってしまったか……あまり嬉しくはないけど。


 変な視線を向けながらも声を掛けてくる者はいない。

あ、アイツ毎週俺に挑んでくるくせに顔背けやがった。あ、アイツはこの前俺の陰口叩いてた奴じゃん、なんか隣のやつと内緒話でもしてんのか?陰口ってのは陰で言うもんだぞ、本人の前ではやめておけよ。


 何故俺が陰口を知っているかと言うのは、まあ俺は結構話し声拾っちゃうんだよなあ。

地獄耳ってやつだ、ちょっと離れたぐらいじゃ俺の陰にはならないんだよ。気をつける事だ。


 自分の教室に近づくとみんなの声が聞こえてくる。

どうやら授業は終わった様だけど、出てくる人影はないな。

まれなも隣のクラスだから喋ってれば聞こえてきそうなもんだけど、クラスじゃ無口なのか?

俺もそうだから気が合うな……って言うのかコレは?


「それにしても才華ってさ、藤堂君のことどう思ってんの?」


 何!?ナルが俺をどう思っているかだと!……気になる。


「わ、私は……別に」


 むう、別に、か……まあ分かっていた事だ、嫌われてなければそれでいい。


「とか言っちゃって〜、深優璃はどうなの?やっぱ才華がライバル?」


「えー、ハルってばいい奴だけど……恋愛的には考えた事ないよ、その、いい友達?」


 うう、わ、分かってた事だ……そう、当然そうであろうとも。


「でも二人ともあからさまじゃん、一緒に住んでるし」


「あ、あれはだって……その、えっと、ひ、広いし立派だし、あと、は、箔が付くじゃない、総代のお付きみたいな……ねえ才華」


「あ、そそ、そう、うん……そんな感じ」


 …………………。


「えー、じゃあ二人とも藤堂君の事何とも思ってないのー?」


「そうよ、別に特別好きって訳じゃないわ……ただの友達!」


「わわ、わ、私もそう、好きって言うよりは、その、興味本位って言うか」


 ふう、今日の所は帰るかな。こんな立ち聞きまがいの事はするべきじゃない。

今日は帰って今の事は無かった事にしよう、そうしよう。

ヨシ!回れ右だ。


「あれ!藤堂じゃん、お前怪我はもういいのかよ!」


 わあ、高津見たかつみ はやて君。初めて声聞いた。何でこのタイミング?

急にドアを開けて教室から出てきた。聞き耳に集中してて気づかなかった。


「え、ハル!?」


「ハ、ハルッ!!」


 ナルとヨミの驚く声が聞こえる。コレじゃ帰れないじゃないか……かくなる上は聞こえてなかったフリをするしかないだろう。

俺は何も聞いていない、ナルもヨミも俺のことなんか何とも思ってない。


「やあみんな、久しぶり。元気だったかい?俺はちょっとした怪我で今までGWを延長しちゃったけど大丈夫元気だよ、今日は顔見せに来ただけだからコレで失礼するよ。先生によろしく」


 早足でその場から去る俺……いややっぱ無理。

あの場にはなんか居られない。別に嫌われて訳でもない、悪口言われた訳でもない。

でも何だか居た堪れない。


 何だコレ?何と言ってもらったら満足だったんだ俺は?

図々しい、まさか“実は好きなの”とでも言ってもらいたかったのか?


 意図せず彼女らの本心を聞いてしまった後ろめたさ、立ち聞きと言う行儀の悪さ。高津見君の間の悪さ。

そう言った諸々のことが合わさってこんな気持ちになったんだ。

それ以外何があるってのさ。

今回は少し短いです、すいません。


今回も読んで頂きありがとうございます。

ブックマークをくれた方々、重ねてお礼を申し上げます。

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