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俺は別にバカって訳じゃないんだよ


  何だか拍子抜けだ。帰りの電車の中で俺はそんな事を思っていた。

早く終わる分には何の問題もないけど、こうも簡単に終わってしまうと罠を疑いたくなる。


 けど、アレがそんな高度な罠を張れるとは思えない。

正体見破られて、テンパって隠していたはずの魔法まで使ってしまう様な、短絡的で直情的で堪え性の無い馬鹿が伏線まで張って俺やセトちゃん、アッちゃんにまで気づかれない罠を仕掛けるとか不可能だろう。


 だからこの気分は、終わったーとか言う達成感と共に、燃え尽き症候群と言うか、肩の荷が降りたと言うか、これからのテストの事を忘れたい逃避とかが混ざった複雑な虚無感とでも言うものだな。


 今は早朝の6時。このまま電車とタクシーを使えば、最低でも検査には間に合うだろう。

昨日は思ったより早く終わったから、テントで一晩明かしたけど、考えてみたら寝具も何も無かったんだよなあ。

荷物になるのも嫌なので、テント内で石板に収納したら、ちゃんと収納できた。


 おかげであんまり眠れなかったし、身体が痛い。俺も贅沢になったもんだ。

まれなには感謝しないと、霊洞でテントという発想は俺には無かった。

おまけに力場発生機能まで……正確には自分の魔力をテント内に充満させて飽和状態にする事で強引に力場を作り出しているという言わば自家発電だ。


 今回これだけさっくりいったのは全てそのおかげだ。拍子抜けってのは言い過ぎだったな。



「信じられない事ですが、完治しています。」


 検査を受けた翌日、医者にそう告げられた。まれなから聞いた怪我の具合や心配する様子から考えても、確かに信じられない事だろう。


「失礼かもしれないけど、死んでないのが不思議なほどの大怪我だったんだ、本当に人間なのか疑わしくなるよ」


 そうですと自信を持って答えたい所だけど、実際どうなんだろうな。

睡眠欲はあるし、食欲もある。性欲だって……まあ、あるし、喜怒哀楽の感情もあるし、ちゃんと子供の頃からの記憶だってある。


 まあ記憶に関しては確かに怪しい部分もあるけど、身体機能や内臓配置、血液成分に脳の造りだって人間そのものだ。検査でもそう出てる。


 多分俺がおかしいのは魔力的な何かの部分だろう。

元々の世界には無かった力なのだから、それを得た俺がこんななのも魔力のせいだろう。

それは他の人達だって同じはず……じゃあ人間だな。


「もちろん、俺はただの人間ですよ。ちょっと頑丈で運が良かっただけです」


「いやね、それはそうなんだろうけど……君ちょっと人体実験に興味は無いか?」


「ありません!じゃあこれで退院させてもらいます」


 危ねえ……何言い出すんだこの医者。

素早く退室すると、俺は桃花ちゃんの部屋に向かう。一足先に退院する挨拶に行くためだ。

そういやヒメは桃の花に埋まってたな、桃花ちゃんの名前……何かあるのか?まさか偶然じゃなく狙われたとか……流石に無いか。


 名前なんて親が勝手に決めるもんだし、精々願掛けくらいのもんだろう。

普通に偶々だよな、他にも同じ名前の人いそうだし。


《桃の花の花言葉は【気立てがいい】【魅力的】【天下無敵】などがあります》


 豆知識ありがとセトちゃん。

桃花ちゃんに挨拶する時使ってみるか。


「藤堂です、桃花ちゃん入ってもいい?」


 ノックをしながら声を掛ける。これ基本。


「先輩ですか!どうぞぜひ入って下さい!」


 許可が降りたので入室する。別に吸血鬼じゃなくたってこれくらい当然だ。


「おはよう桃花ちゃん。今日も元気そうで良かった。今日はお別れを言いに来たんだ、退院が決まってね」


 もちろん今生の別れというわけじゃ無いけど、日本は広いしね。


「そ……そんなっ!これで終わりだなんてアタシ嫌です!」


 終わりって、別に何にも始まってないよ。


「なーんちゃって!大丈夫ですよ、住所も連絡先も学校も知ってますし、いつでも会いに行けます!」


 やだ怖い。何言ってんのこの子。


「あ……ああ、まあ普段は学院寮に住んでるから、家にはいないけどね。」


 って言うか、何で会いに来るのさ、受験勉強頑張りなさいよ。

たとえ霊征に合格できなかったとしても、その頑張りは無駄にならないよ?


「大丈夫です!」


 何がよ。


「そ、そうかい?まあ、また縁があれば会えるだろう、元気でね」


「ハイ!また会いましょう!退院おめでとうございます!」


「うん、ありがとう。じゃあ」


 と言って退散してきたけど、どう言う意味のセリフだったんだ?

気にはなるけど、俺はまずテスト対策を練らなければならないな。

そういや花言葉使ってる暇なかったな。


 ちゃんと勉強はしてるはずだから、それなりの点は取れると思うんだけど、なんせ相手がエリート連中だからな。

相対的に低い順位になる事は避けられない。


 まさか成績順を壁に張り出すとか漫画みたいな事しないよな。

ウチは別に有名進学校と言うわけじゃなく、あくまで優秀な探索者を輩出するための学校なんだから、そんなマネはしないと思いたい。


『セトちゃん、俺の勉強の進捗状況ってど思う?』


《頑張っていると思います》


 ……それはなんだい?慰めているのかい?


『違くって、何点ぐらい取れそうだと思う?』


《問題次第で振れ幅が出る事ですので回答は実際のテストの点数を持って代えさせて頂きます》


 何その読者プレゼント。

ダメだ、セトちゃんにはぐらかされるレベルか。


 

 帰りの電車の中、セトちゃんに教わりながらの脳内学習。

本数は少ないが探索者専用車両なるものがあったのでそれに乗ると、座席が一つもない。


 それぞれが思い思いの格好で休んでいくスタイルの様だ。

運良く空いていたのでテントくらいは張れそうだ。

外見は一人用のテントだからそんなに大きく無いので、文句も言われないだろう。


 しかも郡山駅……何故かこれは元のままだ……から学院前駅まで直通だ。さすが探索者専用車両。

路線まで引いてあるなんて剛毅なことだ。


 これは助かる。おかげでこうやって時間を無駄にせずに済む。

テストは来週末からだ、もうあまり時間がない。俺だって格好ぐらい着けたいし恥はかきたくない。


 でも、こう何と言うか……普段の睡眠学習のクセでセトちゃん講義は眠くなってくる。

じゃあ寝ればいいじゃない……と言う訳にもいかない。


 セトちゃん曰く、睡眠学習はあくまで潜在意識に刷り込むだけであって、それが顕在化するのは日々の努力次第であり、いつ開花するのか読む事はできない。


 と言う事だった。


 それでは試験に間に合わない。

その為、ちゃんと集中して講義を聞いていないと、身にならない。

そんなに覚えは悪い方じゃないと思ってるし、実際記憶問題とかは得意分野だった。


 では何が悪いのかと言うと、以前の世界の知識が邪魔をするのだ。

現在の教科書と同じ部分もあれば微妙に違う部分もあるし、まるっきり違う所だってある。


 なまじ記憶がいい分、前世界知識を結構な割合で覚えていて、そこに現世界の知識が上書きされるのではなく乗算されていっている。

妹達が弟達だった頃の名前は思い出せないけど、セナのフルネームは覚えている、とかのばらつきもあってややこしい。

良く狂わないでいられるなと、むしろ褒めてくれてもいい。


 そんな言い訳は通用しないし、言えない。こんな言い訳を誰に対して言えと言うのか。

テストの点数よりも精神こころを心配されるわ。

怪我で心配させたばっかりなのに、今度は頭まで心配させらんないよ。


「オイ、誰だこんなとこにテント張ってるバカは、常識的にあり得ねえだろ!」


 やっぱりダメか、いくら探索者専用とは言っても流石に無理があったかな。

混んできたのかもしれないし仕方ない。

セトちゃん講義はここまでだな……総代邸に着いたら猛勉強しなくちゃ。


ハルキもテストに向けて頑張っているので、こちらも負けじと執筆頑張ります。


評価、ブックマークをくれた方ありがとうございます。

これでまだまだ頑張れます。


今回も読んで頂きありがとうございます。

PVの伸びを見るのが楽しみです。

皆さんのおかげで執筆が続けられます。

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