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さらばまれな!みんなによろしく


 宮藤さんが病室を去った後に訪れる一瞬の静寂。


「なんか声の大きい人だったわね」


 まれなはそれを破るように呟く。

俺に聞きたいこともあるだろうし、その糸口を探る様に視線を彷徨わせている。

ここは俺の方から話を振っていこう。


「だな、しっかし酷い目に遭った、潤葱にはやられたよ」


「そう、その潤葱よ!一体アイツ何したの?あの爆発って何だったのよ、何で玻琉綺があんな大怪我をしたのよ!」


 まれなが我が意を得たりと捲し立てる。


「アイツ、潤葱は魔法を使って来た…… 魔導力場もない地上の普通の場所でだ」


 事情を説明していくと、まれなもお兄さんと思わされていた時に、異世界転移とかの話を聞かされていたとかって設定になっていたけど、その辺の記憶はちゃんと残っていたのか『異世界に行ってたって本当の話だったの?』と驚いていいる。


「それで逆上した潤葱にあんな強力な魔法で攻撃されたわけね……貴方迂闊過ぎよ。そんな奴を追い詰めたら何してくるか分からないじゃない」


 あ、ハイ、それはもう言われました。


「大体貴方自分で何でもやろうとしすぎよ!騙されていた私が言うのも何だけど、私と連絡を取るなりして戦力を集めるとか……」


 まれなのお叱りは、それはもう長々と続きましたとさ。


 それにしても潤葱総士郎も迂闊な奴だな、いくら兄と誤認させるためとはいえ自分の情報を相当量流出させてんじゃん。

奴の魔法ってのもそこまで融通の効く代物でもないのかもしれないな。

流石に有用な情報までは漏らしてなさそうだけど。


「……そもそも貴方は、って聞いてるの玻琉綺!」


「聞いてるって、反省してるからその辺で勘弁してくれよ」


 こうして心配して怒ってくれる人がいるってのはありがたい事なんだろう。


「気になってたんだけど、潤葱って今どうなってんだ?アイツ多分転移魔法とか使えるから下手な方法採ったら逃げられちゃうぞ」


「一応アレはテロリストって事で逮捕されてるから、厳重に捕縛されてるはずよ。でもそうね、異世界の魔法ってのが、こっちの常識が通じないものなら無駄かも知れないわね」


 確かに、前提が狂ってるんだから完全な対策は取れないよな。

奴の転移阻害を永続的に仕掛けられる魔道具でもあれば話は別なんだろうけど。


 普通の場所で魔法を使うことが出来ないと言うのは実は誤りだ。

正確には、魔法で外的な変化をもたらすことが出来ないと言うのが正しい。

 

 魔法で火を出したり水を操ったりは出来ないが、自身の身体強化の様な、内的なものは使用することが出来る。

とは言え、これも別にそんな便利なものでもない。

例えば時速100キロで移動するほどに強化出来たとしても、力場がある場所なら不都合なく動けるし、壁などに当たっても破壊も出来るだろう。


 だけど、力場の無い場所で100キロものスピードを出そうものなら、空気抵抗などで呼吸はしづらいし、虫に当たるだけでも大分痛いし、壁になんてぶつかったらペチャンコになる。


 例えば災害現場なんかで巨石を持ち上げようとすれば、骨がへし折れる事だろうし、高々とジャンプをすれば着地時に大怪我をするだろう。


 魔法と言うものはあくまで事象を変化させる技術の事なのだ。

身体強化などと言っても肉体が超人の様に進化する訳じゃなく、あくまで巨石を持ち上げると言う事象を起こすものだし、100キロで移動すると言うのも、その速度で目標地点に辿り着くと言う事象を起こしているだけに過ぎない。


 その際の肉体への負荷を無視できると言うのが、力場内で魔法を使うと言う事。

まあ例外はある。例えばナルの様に自身の魔力が溢流するほど強大であった場合、その部分だけは力場と同じ様な効果がある。多分ナルが肉体強化魔法を使ったら、通常領域でも超人になれる。


 けれど、魔道具というものは例外的な存在だ。特に霊洞産の“魔導製品プロダクト”とカテゴライズされる物は通常領域であっても魔法的な効果を生むものが多い。

当然力場内よりは効果が落ちるし、直接的に身体を害する様な効果を出すほどでは無い。


 そういった魔導製品プロダクトで転移阻害を掛けられるものがあれば、潤葱総士郎の転移もある程度は制限させられるかも知れない。

ただ転移自体珍しい魔法なので、そういった措置を施しているかは微妙だ。


 魔力が回復次第潤葱には逃げられてしまうと思っておくべきだろう。

ヒメの救出をするなら、その前に隠れ家を発見して乗り込まないといけないかもな。


「考えてもしょうがない、取り敢えずは潤葱がどこでも魔法が使えるって事を伝えておけば取れる対策もあるだろうし、今回逃したとしてもいずれまた捕まるだろ」


 だからこそ潤葱総士郎も今まで目立たずにやって来たんだろうし。

霊洞外であれば警察や軍の持つ銃火器もかなりの脅威となるはずだ、今までほどには好き勝手動けなくはなるだろうし、計画の要かも知れないバクレイオンとシャスティフォルはこっちで確保している。

異世界魔力の解析が済んだ今、シャスティフォルの精神誘導も封じる事ができる。

 

 だけどまだ隠し玉を持っているかも知れないと言う警戒はしておこう。

これ以上は奴を追い詰めない様にして、素早くヒメ救出に乗り出すか……あ、そういやもう休みって終わりだな。


「そういやまれなは学校どうするんだ。俺はこのザマだからもう少し入院しておくけど」


 なんか俺入院してばっか。


「もちろん行くわよ、玻琉綺が目を覚ました事だしもう今日は帰るわ。明日の早朝にはウチのヘリで学院に向かう予定よ」


「へえ、鈴の役目はいいのかよ。兵藤院さんに怒られんじゃない?」


 籐家って事は多分ウチの学院で言えば生徒総代の兵藤院先輩の事だろう。

上級生徒ってのがどんな基準で選ばれてるのか知らないけど、あの人ほどの立場ならそうじゃないと思う方が間違ってるよな。


「そうね、貴方そのザマでも何かやりそうだから心配だけど、学院をサボる方が問題だわ。学生なんだし授業優先よ」


 意外に真面目だな。それだけモラルがあるなら裏から牛耳ってても安心だ。


「そうか、じゃあみんなには心配かけない様に上手く言っといてよ」


「それは無理ね、学院に復帰したらみんなに心配かけた事存分に謝りなさい」


「へいへい、分かりやしたよ。じゃあせめて授業のノート取っといてってだけ伝えといてよ、俺だって授業に遅れたくないし、テスト前には戻るつもりだし」


 そういやテスト以外にも体育祭の役員みたいなのもあったっけか。

総代としてその辺の事も蔑ろには出来ないからな、何とかするか。


「そのくらいなら伝えとくわ、じゃあ帰るわね。おやすみなさい、お大事に」


「ああ、ありがとう。おやすみ」


 “パタン”と静かにドアを閉めて出ていくまれな。

ここ数日ずっと一緒だったからか、いなくなるとちょっと寂しい気分になるもんだな。


 さてと、ちょっと色々反省する事はあったんだけど、一応身体は動く様になったんだし軽く魔物討伐にでも乗り出すかな。


 ここは霊山病院って言ってた。

霊山ってのは山全体に魔導力場が発生している特殊な場所だ。

基本的に奥深く、頂上に向かうにつれて力場レベルは上がっていく。


 それほど標高の高い山ではないみたいだけど、それでも頂上付近はレベル4くらいにまでは届きそうだ。

それなら結構MPを稼げるはず。無駄遣いしちゃった分ここらで稼いどかないとまた必要になるだろうしな。


 まだ光の槍(ライトジャベリン)の試し撃ちもしてないし、ちょっとは慣らしておかないとな。

看護師さんの巡回とかもあるんだろうけど、トイレに篭ってたとでも言い訳しとけばいいかな?

いやでも俺がこれだけの状態にまで治ってるって知らないはずだな。


 まあいいや、なんかあったらその場その場で誤魔化していくってのが俺のやり方だ。

別に悪さをしに行くって訳でもないし、ちょっと怒られるくらいで済むだろ。


『お前は本当に反省しているのか』


『おっとアッちゃん、もちろんだよ。それを踏まえてMPが必要だと思ったから稼ぎに行くだけだよ」


『……無理はするなよ』


『分かってるよ、ありがとう』


 辺りの気配を探りながら慎重にいけば、見つからずに魔物発生場所まで行けるだろう。

と思ってたけど……いや、発生場所までは見つからず来れたけど。


 なんか人一杯いるなあ。何ここ、有名な討伐スポットとかなの?

何でこんな時間にこんなに人が多いの?


「おーい、交代の時間だぞ!」


「あー、やっとかー。じゃあ引き継ぎすっか、病院の方には一匹も逃してないから大丈夫だ……」


 なるほどそうか、病院警備のための人員だったか。

これだけ経費かけてれば、そりゃ入院費も高いわな……俺の入院費って……。

こりゃなおのこと稼いでこないとな。


 俺は更に山奥に分け入り、一晩中魔物を思う存分に討伐したのだった。


一人になった玻琉綺はきっとまた無茶をするでしょう。

そうするとまた話が長くなりそうです。

作者的にも大人しくしといてほしいんだけどなあ。


今回も読んで頂きありがとうございます。

応援よろしくお願いします。

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