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癖になったら不味いよな

 どうやら俺は相当な大怪我だった様だ。

両脚左腕の骨折どころか、頸椎、頭骨骨折、内臓破裂に咽頭外傷、Ⅲ度熱傷30%、感電による筋組織の壊死、大量出血と、何で生きてるの?と言われる程の有様だった様だ。


「ここは霊山病院の一つ、御霊櫃ごりょうびつ病院よ。ウチのヘリで緊急搬送したんだけど大変だったんだか……ら、うう、よかっ、良かった……本当に、もう、ホントに、ダメ、かと……」


 崩れ落ちるまれな。張り詰めていたモノが切れた様だ。

凄い心配させちゃったな……正直舐めてた。

散々自分の事をただの人間、ただの高校生とか言いながら、心のどこかで自分に危害を加えられる存在なんていないだろうと……そう思っていたのかも知れない。


 アッちゃんやセトちゃんの言う通り猛省しないとだな。

でもなんか俺軽いんだよな……いつの間にこんななっちゃったんだっけ?

こんだけ長生きしたからもう自分の生き死になんてどうでもよくなっちゃったのかな。


 良くねえな、家族や友人を悲しませるだろうし、何より一生懸命生きないと今まで俺が切り捨てて来たモノに申し訳が立たない。


「ごめん、まれな。色々面倒みてくれたんだよな、ありがとう」


 それほどの怪我だったにも関わらずこうして生きてるって事は、治療魔法でも掛けてもらったのかな。

ここ力場があるし……そう言えば聞いた事がある。


 力場があれば治癒魔法が使えるから、病院の中には霊洞内に建てられる物があるって。

病院だけでなく、研究施設や工場なんかもあるって話だったから、学院にあったのも納得したんだっけ。


「う、ひっく……グズッ」


「だからごめんって、泣き止んでくれよ……まれなが泣いてると、その、困る」


 女の子が泣いてるのってどうしたら良いのさ。

気の利いた事は言えないし、俺のせいだし、頭ポンポンとか気持ち悪いし、そもそも手がまだ動かないし。

分かんないからこのまま話を続けさせてもらうぞ、だからモテないんだってのは承知してるから言わないで。


「まれな、俺このまま自分で治癒しちゃっても大丈夫かな?」


 せっかくお医者さんが手を尽くしてくれたんだろうけど、実はまだだいぶ痛いし身体中動かしにくい。

治癒師とかの人に治癒の魔法とかも掛けてもらったんだろうし、自力で治しちゃったらそう言った命の恩人のプライドを叩き壊しかねない。


「……ヒック、そうね、別にいいんじゃない?早く治れば病室も空くし」

 

 そんなドライな考えでいいのかなあ。なんか投げやりになってない?


「じゃあ医者には悪いけどそうさせてもらうかな、あ、まれなも怪我してんじゃん」


 潤葱総士郎とのバトルで怪我はしてなかったと思うんだけど、その後でコケたりでもしたのか?

膝が擦りむけてる。


「セラフィックロッド!」


 おお、コレが回復していく気分か……うん悪くない。

ってか気持ち良いな、やば、癖になりそうだ。背中が痒くて手が届かなたったところに孫の手でゴリゴリかいた時の10倍は気持ち良い。


 まれなも自分の膝を見ながら、傷が治っていく様子を興味深そうに見ている。


「貴方の治癒魔法?って、この前も見たけど……凄いものね」


 確かに凄いなセラフィックロッド。もう殆ど痛みはないし、身体も動く。


「でも玻琉綺って魔法の授業の成績良くないわよね、治癒は別なの?」


 うぐ、怪我を治したばかりなのに傷が増えた。


「気にしてるんだから、あんまり本当の事言わないでくれよ」


 魔法じゃないから使えるんだよ。


「不思議ね、あんなに勉強してるのに……魔法の素養が無いわけでもないし」


「どゅおおお!」 「うきゃああ!」


 何だ?隣の病室から奇声が聞こえる。


「ねえ……隣の患者まで治しちゃったんじゃないでしょうね」


 特に範囲指定しなかったから俺を中心に20㎡か、俺のベッドは壁際で、隣のベッドも同じ壁際だったら十分隣届くな。


  “バタン!ドドド、ガチャ”


「今誰が治癒魔法を使ったのか!」


 ゴツい筋肉の塊みたいな若い男が乱入して来た。なんか『ハイ』って言いたくない。


「何の話ですか?」


 すっとぼけるに限る。治ったんならいいじゃん。


「今このフロアにはウチとこの部屋にしか人は居ない、この部屋の誰かが治癒魔法を使ったはずだ」


 そうか、別に気配なんか探ってなかったから知らなかった。

俺の怪我具合から察するに、ここは重傷、重病の患者専門のフロアなのかも知れない。

って事はこの人さっきまで寝込んでたの?それにしちゃ元気過ぎるな。


 そういやもう一人声が聞こえたし、その人が患者さんなのかな。

女の子の声だったよな、今夜一晩過ごすのに隣りに女の子がいると思うとなんかドキドキしてきた。


「そこの女子高生、君が治癒魔法を使ったのか!?」


 あ、まれなに飛び火した。『違います』とか言いながらジト目でこっちを見てくる。

えー、言いたくないなあ。なんかもう暑苦しさ全開じゃんこの人。声でかいし。


「えーと、じゃあ俺です」


 この天翼の角杖(セラフィックロッド)は大分異常な性能だとは俺も思ってる。

俺がそれを持ってるって話が広まったらあっちこっちに呼び出される未来ぐらい俺にも見える。

だからなるべくならこっそりと使うぐらいにしたいんだよな。


 苦しんでいる人を治してあげたいとは思うけど、それで忙しくなるのは嫌だ。

それにやっぱりお金を取らない訳にはいかない。


 タダとか激安とかにしちゃうと軽い気持ちで大怪我する奴増えそうだし、確かな技術を持っている医者や他の治癒師の仕事を取っちゃう事になるのも不味い。

かと言って高額にすると今度はお金がない人が困ると言うジレンマに陥る。俺に商売は向いてない。


 いっそ誰かにあげちゃうかな?自分用のはまた癒回な角杯(バイタルホルン)辺りでも作ろう。

何だっけ?大威震五連制覇だっけ、それをカンセコすればそれっぽいのが出来そうだ。


《威徳霊征五条覇です》


 セトちゃんからツッコミが入ってしまった。なんか声可愛くなってる。


「君は!昨日大怪我でここに担ぎ込まれた少年じゃないか!」


 良く知ってますね、声が可愛くない、でけえ。昨日って事は丸一日は経ってるのか。


「何と、アレで生きていたとは!死体にしか見えなかったぞ!そうか、自分で治したのだな、素晴らしい!」


 この人は名前を宮藤くどう 強透きょうすけと言うらしい。

彼の妹が難病の全身性石皮症という難病に罹っていて、四肢が完全に石化してしまっていたそうだ。

ここの設備で何とか進行を遅らせて延命させていたのだが、流石に医療費がそろそろ苦しくなって来ていたところ、突然石化が解けたと言うのがさっきの奇声の理由らしい。


「君には感謝してもしきれない!動けるようになってからでも良い、妹に会ってやってくれないか!謝礼も出来るだけ支払わせてくれ!」


 妹さん凄い病気に罹ってたんだな……俺もお兄ちゃんだからこの人の心配もわかる。

なんせ今度は本物のお兄さんなんだから。偶々だったけど良かった。

でも多分完治はして無いんじゃ無いだろうか、いくら凄い魔道具でも75パー回復だし……でも恒常性復帰ってなってたから、病気の原因次第では治ってるのかも。


「とても苦しい病気に罹っていたんですね、石化が解けて良かったです。ところで原因とか分かってるんですか?」


「ああ、桃花ももかは先々月に穴堕ちに遭ってしまった。幸運にも救助が間に合ったんだが、その時にはすでに石皮症に罹ってしまっていて、どうしてそうなったか聞いても桃花にも分からないそうなんだ」


 穴堕ち……潤葱総士郎の被害者か。これはやっぱりヒメの身柄の奪還は急務かもしれない。

奴の目的はともかく、手段が分からない。霊洞を作り出して一体何がしたいんだ。


「そうなんですか、お気の毒です。自分も去年穴堕ちした妹がいるので気持ちは分かります。でも命が助かって本当に良かった」


 実際亡くなった被害者も多いみたいだからな。生還できた事自体は本当に良かったと思う。

せっかく助かった命だ、そんな謎の病気で命を落とすなどあってはならない。


 明日にでもお見舞いして、セトちゃんに解析してもらおう。


昨日の投稿に間に合わなかったです。

まあ日は変わっちゃいましたけど取り敢えず投稿します。


今回も読んで頂きありがとうございます。

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