怒られました
ヤツの質問に対してすげ無くしてたら、なんか急に下向いてぶつぶつ言い出したな。
そうかと思ったら今度は周りに不穏な魔力が漂出した。
魔導力場のないこんな所で魔力を感じるなんて、やっぱりコイツ魔法が使えるんだな。
でも、魔力は魔力だけど何か濁っている感じがする。
……コレはアレだ!ナルが魔力の再取り込みをして具合悪くなった時の有害魔力と同じだ。
あの時は癒回な角杯で応急処置が出来た。
て事はコイツの魔力を今の天翼の角杖を使って無効化できるかもしれないな……でも今使えないけど。
異世界の魔力と潤葱総士郎自身の魔力が混ざってこう言った気持ち悪い魔力になってるんだな。
身体に変調をきたしてないのは女神の力か?
《獄炎雷破弾》
うお!撃ってきやがった、マジで魔法使えんのか。
しかもコレ結構強力なやつ……回避したらこの辺めちゃくちゃになりそう。
でも受けたら死ぬな。
……出来るかどうかは賭けだな……
巨大な炎雷の塊が俺に当たる寸前、かろうじて石板を翳すことが出来た。
ヤツ自身の魔力なら吸収出来るだろうけど、異世界魔力はどうだろうか……。
“ドゴゴオオオオッ”
轟音と共に激しい爆発、そして激しい衝撃が襲ってくる。
物凄い熱と筋肉が収縮する痺れ、衝撃で吹き飛ばされ地に叩き伏せられる。コレ今までで一番痛ってえ。
ヤバい、身体が動かない……何とか意識を保つのが限界だな。
「ば、馬鹿な……防いだだと。塵すら残らない俺の単体特化の魔法だぞ」
単体用だったのか、危なかった。範囲攻撃だったらこの辺一帯無事じゃ済まなかっただろう。
石板の吸収と俺のダメージで何とか被害は最小限に出来たか。
とは言えそのダメージエグい、声すら出ないのは不味いな。
天翼の角杖、コレさえ使えれば回復は出来る。
まだヤツの魔法の余波が残っている今の状態なら、多少の力場が発生している。
多分異世界魔力に触発されたこの世界の魔導素粒子が、それを打ち消そうと結合して活性化。一時的にこの一帯に魔導力場が形成されたんだろう。
『セトちゃん、MP回復って出来る?』
調子に乗って使い過ぎたな、もうあんまり残ってない気がする。
杯の複製はやり過ぎだった。全く騙されたモンだぜ。
《現在異世界魔力吸収の影響でシステムに異常が出ています。回復まで五分必要です》
げ、そんな掛かんの?ちょっとは異世界分も吸収しちゃったのか、完全分離吸収は無理だったか。
コレだけの騒ぎだ、これじゃ……
「何なの今の爆発は!玻琉綺、兄様、一体何が……」
ほら、やっぱり来ちゃった。
今までどこに行ってたのか知らないけど、こんな爆破があったんじゃそりゃ来るよな。
ここ自分家みたいなもんだろうし。
「きゃあ!は、玻琉綺、え、何が…大丈夫なの?しっかりしなさい」
すいませんまれなさん、揺さぶらないで、ちょっと脳震盪みたいになってるんで気持ち悪い。
「兄様!何をボケっと突っ立ってるの、早く救急車……って」
呆然と佇む潤葱総士郎を見てまれなは妙な表情になる。
「兄……様?……あれ?私に兄様何て……はっ、お前は潤葱!」
え、と思って見ると、確かに姿が潤葱総士郎に戻っている。
今まで幻術でも使っていたのだろうか。
俺が見抜けなかったのはシャスティフォルによる精神誘導のせいでもあるだろう。
でも魔王ってコイツに封印されてるんだよな、それなのにコイツの味方すんのかよ。
「お前が玻琉綺を!」
激昂するまれなの手には薙刀がある。どうやら道場の方にでも行ってたみたいだ。
寸前でかろうじて躱す潤葱総士郎。
何だか動きに精彩がない、今の魔法で魔力使い過ぎたのか?
今まで幻術とか精神作用系の魔法を使い続けてきてさっきの強魔法だ、そうなってもおかしくない。
畳み掛けるまれなの攻撃に防戦一方の潤葱総士郎だが、そんな状態でまれなの攻撃を喰らわないのは大したものだ。
「ええい、往生際の悪い!」
まれなが振るった薙刀が蛇のようにうねって見える。
しなりを利用した幻惑の型なのだろうか、いやそんな生優しいモンじゃないな、コレはスキルだ。
そういや、今ここはまだ力場が残ってる。
まれなは気付いてないようだけど、繰り出した技がスキルに昇華したんだろう。
薙刀の先から龍みたいなオーラが出て、潤葱総士郎に食いつこうとする姿が見える。
何とかバリアみたいなのを出した潤葱総士郎だが、それは無情にも破壊され龍の顎によって全身が刻まれ、血まみれになりながら倒れる。
こっわ、まれな潤葱総士郎を倒しちゃったよ。
異世界で魔王を封印して、世界を救ってきた勇者を薙刀一本で……。
かっけえ、さすがまれな。さすが免許皆伝、次期当主。
遅れて駆けつけた斑鳩さん達によって拘束される潤葱総士郎だが、魔力が回復したら逃げられそうだな。
「玻琉綺!……酷い怪我だわ、斑鳩、救急車を早く!」
いや、そこまで慌て無くても声さえ出れば回復できるよ、まあ肝心の声が出ないんだけどさ。
改めて自分の状態を確認しようとすると、首がめちゃくちゃ痛い。
今まで麻痺していたのが取れかけているのか、とんでもなくあちこち痛い。
コレ両足と左腕折れてんな、声が出ないのも肺をやられてるか?顔にあったかい液体が垂れてくるのも感じるし、血まみれっぽいな……なんか、意識が……あ、落ちる。
『ハルキ、気が付いたか』
『あれ?アッちゃん……どうしたの?』
なんかアッちゃん顔が怖い、怒ってんのかな?何にだろう、って言うか此処は……。
あれ、夢かな?何でアッちゃんの顔が見れるんだろう。あと隣にいるちっちゃい女の子誰?
『まだ呆けておるのか、此処はお前の意識の中だ、まあ以前と同じく夢の中みたいなものだな』
『え、ああ……あ、そうか!俺潤葱総士郎にやられて……えっと、今俺って意識不明なの?』
『そうだ、お前は今病院で治療を受けている最中だ。全く無茶しおって』
そうか、確かにあんな威力の魔法を避けずに、石板一つで受けるなんて確かに無茶だったな。
『でも、そうしないと周りの被害が大変な事になっちゃってたろうし……』
他所様の所をめちゃくちゃにしてしまうのは忍びない。
俺がやった訳じゃないけど、それでも防げるのに防がなかったらまた後悔しそうだ。
『そうでは無い、いやそれもそうなのだが、そっちでは無くあの不逞の男を無闇に挑発した事を言っておる』
『別に挑発した訳じゃ無いよ、問いただしただけって言うか、ちょっと勇み足だったかも知れないけど、問題解決に向けて……』
『だからそれを言っておるのだ!あの場であの男をあそこまで追い詰める必要はあったのか!あの男が魔法を使えると言う推論を立てた段階で、もっと他に持っていきようがあっただろうに!何故正体まで口に出して追い詰めたのだ、窮鼠に噛まれるなどお前らしくも無い』
『いや、だって……』
アッちゃん、顔が怖いよ。
『だってでは無い!その結果がこれなのだぞ、反論では無く反省をしろ!いくらお前でも死んだら死ぬのだぞ!それと我の顔は最初にハルキがこの顔を想像したからこうなのであって、本来我には顔も性別も何も無いのだ、それをお前が……』
『……ハイ、すいませんでした』
そんな昔の話で怒らないでよ。
『ふう、まあハルキが死んだら我の世界に連れて行って、今度こそ一緒に世界再生を手伝ってもらうから、それはそれでいいのだがな』
何ですって?何その終わりのない恐ろしい計画。
『はは、まあそれは追々……それよりさ、その子誰?』
なんかさっきから一言も喋らないで膨れっ面でコッチを睨んでるんですけど。
いやね、まあね、想像はつくんですよ。
この空間にいるって事で、もう他にいないだろってくらい分かってるんだけど……
『ん、おお、そうだなコヤツはセティネストだ。ようやく姿を表せるようになった』
現せるじゃなくて表せる……ね。
うわー、セトちゃん女の子だったんだ。俺がアッちゃんを最初に女神様とか認識してたらアッちゃんも女の姿だったのかな……よかったオッサンで。
《マスターの無茶でシステムにエラーが出たためこの様な幼い容姿になってしまいました》
あ、ハイ、また俺のせいですか。だってしょうがないじゃん、ごめんなさい。
で、マスター呼びですか。まあ俺がセトちゃんのオペレーターみたいなモンだしそれでも良いか。
オペレーターじゃ無くてマニュピレーターかも知れないけど。
《異世界魔力の解析が終了したので、今後はこの様な不具合が起こる事はありません》
『え、凄い、解析できたんだ。そう言えば五分で復旧とか言ってたね、俺が持たなかったけど』
復旧するだけじゃ無く解析まで出来たのか、さすがの高性能だな。
《ですがマスターの向こう見ずな行動はまた起こるかも知れないので猛省シテクダサイ》
最後急にロボっぽいの何故?
めっちゃ睨んでくるじゃん、悪かったよ、猛省します。
「はッ!?」
ガバリと身を起こして目が醒めた。
あ、ここ病室か……もう暗いな、夜なのか。フッと、顔を巡らせるとまれなと目が合う。
どうやら付き添っててくれたらしい、時間どんぐらい経ったのだろう。
「こ、この……バカ玻琉綺!どんだけ心配させんのよっ!!」
あ、ハイすいません。……また怒られたよ。
また一日空いちゃいました。
今後もこんなペースになりそうですが、どうか読んでやって下さい。
今回も読んで頂きありがとうございます。
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