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駅前霊洞の真相?


 郊外にある華四魔神流稲城派杖剣術道場、その裏手にある平家建ての小さな建物。

そこに招待された俺は、まれなと二人その平家の居間に胡座をかいてお茶を飲んでいる。


 まれなのお兄さん稲城華樹臣がここに幽閉されているらしい。

敵対組織と思われる神薙のメンバーである皆連寺はどこで尋問されているかは知らないけど、こんなに良い待遇で扱われているとは思えない。


「それでは地下の根切部屋にいる華樹臣さんを呼んできますね」


 そう言って俺を招待してくれた斑鳩さんが席を離れる。

お兄さんもあんまりいい待遇じゃなさそうだ。根切部屋が何なのか分からないけど、良い部屋じゃないのは何となく察せられる……地下牢の呼び方変えたやつっぽい空気を感じる。


「私は別に兄様と話す事なんてないんだけど」


 ぶっきらぼうに言い放つが、その顔に険はない。きっと内心は喜んでいるはずだ。

一応ざっと説明はしてくれた。


 なんでも、高校入学してすぐにお兄さんは姿を消したらしく、懸命な捜索にも関わらずその足取りは全く掴めなかった。

元々武術の才能はまれなの方が秀でていたため、時期当主をまれなに指名する事には流派内でも異論は無かった様だ。


 お兄さんには武の才がまるで無かったみたいだけど、長男でもあるし名前に“華”の字を取る事からも大事にはされていた様だ。

まれなも当時はとても悲しんだらしい。お兄ちゃん大好きだったんだな、良い事だ。


 そしてその二年後、唐突にお兄さんは帰って来た。いいなあ、俺もそういう風に普通に帰って来たかった。

しかし、その言動がまるで変わっていて、別人にしかまれなには思えなかった様だ。


『家出中に変な連中と付き合って、おかしな宗教にでもハマったのか、やたら神がどうとか言い出すし、敵だの魔王だのと何かの物語みたいな事ばっかり言ってるし』


 と、まれなに怒っていた。

そして二年前、まれなが中学二年の時の秋。お兄さんは実家から家宝の“生穂奈留太刀いくほのなるたち”を盗み出し、その際に居合わせた同門二人を殺害。


 その後追跡を受けたお兄さんは鬼面山という山で崖から転落死、と言う事になったらしい。

けれども遺体は見つからなかったとの事。


 さらに殺された同門と言うのが、実はお兄さんと同じく生穂奈留太刀いくほのなるたちを盗むために入門した新参者であったこと。警察の現場検証では二人はお互いに刺し合いをした形跡があるとの事で、お兄さんへの容疑は証拠不十分という事だった。


 それでも指名手配されたのは、盗みを働いたのは事実であるし、事件の詳しい事情を知っていると目されていた事と、全探連が問題を殊更に重大視して探索者全体に強盗殺人犯として指名手配を通達したからだったそうだ。


 それには法的な拘束力こそ無いものの、全国の探索者から狙われるのは結構大変だ。

そしてその数ヶ月後に転落死発表。同時に被疑者死亡で通達解除という事らしい。


 ……全探連ってのは何がしたかったんだ?大事として捉えてる割には死体も上がって無いのに手配を取り下げるなんてあまりにも不自然。


 何か目的があったはず…っと、別に俺が気にする事じゃ無かったな。

ただでさえやる事が多いんだから、余計な事に頭使ってる場合じゃない。

 

 こう言った話を来る途中にまれなから聞いたのだが、まれな自身がこの事件をどう思っているかは話してくれなかった。

盗まれた刀というのが、まれなにとってどう言った物なのか分からないけど、おそらく深い思い入れがあるのだと思う。


 親父さんが剣をプレゼントしたのも、まれながそれを使おうとしないのもそれに関係があるんじゃ無いかと睨んでいる。


「やあ、まれなに藤堂君、待たせたね」


 お兄さんが力無い笑顔で部屋に入って来た。

心なしかやつれて見えるのは気にしないでおこう。


「ご招待頂きありがとうございます」


「いや、此方も君には聞きたい事がある」


「兄様、あんまり変な事言わないでね」


 まれなにはお兄さんから聞きたい事があるとしか言ってない。

この場に留めてもいいものだろうか悩む所だけど、追い出す訳にもいかない。


「まれな、言っておくけど俺はお兄さんの異世界での話が聞きたくて招待を受けたんだ。余計な茶々で話の腰を折らないでくれよ」


「ああ、そう言えば玻琉綺小説書くんですってね。セナさんから聞いたわ」


 む、そんな話まで聞いていたか…アイツいつまでその話引っ張るんだよ。

しかし話を聞く理由には丁度いい。


「まあそんなとこだ、お兄さんの話が面白そうでね」


 誤解されるといけないのでお兄さんにアイコンタクトをする。


(ここはそういう事にして話を進めましょう)


 するとお兄さんも察してくれたのかアイコンタクトを返してくる。


(わかった、そうしよう)


 ちゃんと伝わるって素晴らしい。


「なによ二人で、気持ち悪い」


 そんなに嫌そうな顔しないで。まれなは本当に厳しいな。


 前回聞いた話をもう一度最初から聞く。

確か魔王バクレイオンを此方の世界に移住させるとかいう話で終わってたはずだ。


「そこで魔王の話なんだが、話の途中ではあるが君に聞きたい事がある」


 おっと、丁度前回の話のところで質問か。


「君がバクレイオンの魔導書を持っている事は予想していた。信じ難い事だがあのキメラコーンを倒したという事なのか」


 あの一角虎の事か?それほど驚く事じゃ無いと思うけど……誰も勝てないってほどの強さでは無かった気がする。


「アレは風と雷以外の属性には絶対的な耐性を持っている。それこそ強力な魔法でも叩き込まない限り攻撃など通らないはずだ」


 あ、はい。丁度その風系の武器で倒しました。

マジか、そんな弱点見抜けなかった……ちょっとショック。


「いえ、順番が違います。魔導書を手に入れた途端にあの魔物は湧いて出ました」


「なに?そんなはずは……ではキメラコーンを倒して何か出なかったか?」


「通行を自由化する宝珠が出ました」


 父さんを通じてどっかに売っちゃいましたけど。


「……そういう事か。ではシャスティフォルは?アレは生穂奈留太刀の代わりにと置いて行った物だったはずだが……」


「アレはまれなから貰いました」


 がっくりと項垂れるお兄さん。おかしいな、アレって霊洞産で碌な値が付かなかったから死蔵されてたんじゃ無かったっけ?


「そうか、シャスティフォルは君を選んだという事か」


 アレって意識のある剣で、他人の意識誘導とか出来る能力があるんだよな。

って事は、そういう風に周りの意識を操作したって事だったのか。

なるほど、どうやってか分からないけど、俺が魔導書を持っている事に感付いて俺の元に来た訳だな。


「よし、その話は一旦置いておこう、では君が本当に聞きたいであろう事……緋奈津比売神の話をしよう、事態は急を要するかもしれない」


 此方から振る前にその話をしてくれるとは、さすがお兄様。

途中になっている異世界話も気になるけど、本題はこっちだ。


「今ヒナツヒメには、何と言うか……少々強引ではあったが協力して貰っている」


「今急増しているイレギュラー霊洞の事ですか?」


 その霊洞のせいで多くの犠牲者も出ていると聞く。

事と次第によってはいくらお兄さんとは言え、さすがに見過ごす事はできない。


「誤解がある様だな。確かに俺達はヒナツヒメに霊洞を創って貰っているが、それはバクレイオン霊洞とシャスティフォル霊洞、後は三つほどの霊洞を創って貰っただけだ」


 全部で五つか、結構創って貰ってるじゃないですか。

それに弁解しようとしてますけど、そのバクレイオン霊洞にウチの妹堕ちたんですけど?

他にも何人も巻き込まれて死者も出てますよ。


「もちろん君の言いたいこともわかる。そこは謝罪させて欲しい……すまなかった。許してくれとはとても言えないが、それでも敢えて言わせて貰いたい、許して欲しい」


「一応は受け取りましょう、幾ら犠牲が出たとは言え俺や妹は無事でした。義憤に駆られてここでお兄さんを責めても意味がないですから」


「ありがたい、詫びと言っては何だがヒナツヒメの身柄は返そう」


 え、そんなあっさりでいいんですか?こっちは助かるけど。


「ヒナツヒメも限界が近い様だ、バクレイオン霊洞の異変もそのためだろう」


 元々バクレイオン霊洞はあの魔導書を核に作られた霊洞で、そこにはお兄さんや潤葱の魔力も混ぜてあり、それを可能にする産霊むすひの神力を持つのがヒナツヒメなのだとか。


 それぞれ五つの核を使って霊洞を創った。

魔導書、剣、宝珠、鏡、杯を核にしたはずだったが、ヒナツヒメの力が限界に近かったのか、魔力の混入がそもそも無茶だったのか、不具合が起こりバクレイオン霊洞には二つの核が存在する事になってしまった。


 そもそも魔導書は宝箱に入る様な代物ではなく、霊洞の核として霊洞の奥深くに結界に守られて安置されるはずだった。

そこにもう一つの核である宝珠が存在してしまった為エラーが起こり、それぞれ宝箱と魔物の体内に配置されてしまった。


 さらにそれらが直ぐに霊洞から失われてしまった為に、代替として杯が彼らの手から消えてしまいバクレイオン霊洞の核として強引に組み込まれてしまった。


 また悪い事に、その杯は神変鬼毒酒しんべんきどくしゅと言う神酒の杯で、彼ら二人の魔力に当てられその効果が反転し神殺しの《神滅鬼毒酒しんべつきどくしゅ》になってしまう。

もっともそれ自体は狙い通りだったそうだが、バクレイオン霊洞に組み込まれた際にその反転の力のみが暴走状態になってしまった様だ。


「ヒナツヒメの消滅は此方も望むものではない、俺を潤葱の元に連れて行ってくれ、そうすればヒナツヒメは君に託そう」


 それはつまり俺に脱走の手引きをしろと?……おい、まれな。

ふと横を見るとまれなはいない。

トイレかな?それとも飽きて道場にでも行ったのだろうか。


 さあどうしよう。何か俺騙されてない?

たとえ騙されてようとも、ヒメを助ける為には飛び込むしかないのか?でもまれなに怒られそう。


ちょっと間隔が空いてしまいました。

色々悩みましたが、大体固まりましたのでこれでまた書き進められます。

ちょっと時間的に今まで通り毎日投稿できるか分かりませんが、頑張ります。

どうぞ応援よろしくお願いします。


今回も読んで頂きありがとうございます。

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