縛りのキツイお兄さん
さて、実はまだ解決していないことがある。
お兄さんを連れてどうやってここから出るか、と言う大問題だ。
指名手配されてたぐらいだから当然顔は知られているだろう。陸堂さんも知ってたし。
「まれな、陸堂さんとの取り決め中にお兄さんの脱出方法って何か案は出た?」
一応人数的には一人欠員が出てるから合わせられはする。問題は顔バレと、身分的には鬼になった石動さんの身代わりという立場になる
顔はどうにか隠すとしても、石動さんが、こちらについて来るというのが不自然になるし、逃亡を防ぐために縄は解けないから縛られたままという事になり、重ねて不自然だ。
上手い言い訳が思いつきそうもない。
「その必要はないの、兄様にはここに残ってもらうわ」
ふむ、逆転の発想か、出られないなら出なければいいと言うわけか。
うん、何言ってんのこの子?
「待ってくれ、ここには調査が入るんだろ、それに鬼の怪童丸もいるんだ、危険すぎる」
お兄さん狙われてるし。
「貴方が何で兄様の心配をそこまでするのか分からないのだけれど、心配は要らないわ」
まれなの話では威薙会の者達をここに呼び寄せる事にするそうだ。
探索ギルドとの取り決めがあり討伐ギルド系である威薙会も当然立ち入りは制限されている。
けれども、まれなは今ここにいる。
つまり、経緯はどうあれ今回の行動は討伐ギルドと探索ギルドとの共同作戦という扱いになる。
前例ができた上に、問題解決の功労者という事にもなるまれなの発言力は、そのくらいの事なら容認させられる程度には上がっている、陸堂さんのお墨付きだ。
彼女もその口添えはするという事で、数人程度の立ち入りは問題なく通るだろうとの見通しだ。
元々探索ギルド側もまれなを通した時点でこうなる事ぐらい想定済みらしい。
そうせざるを得ない程に切羽詰まっていたみたいだ。
「そこまでは分かったけど、でも結局出られないのでは?」
霊洞に入る際に入場記録ぐらいは取るだろう。
「さあ?そこからは家の連中が何とかするでしょ」
投げやりに聞こえるけど、確かに手段なんて人道とか倫理とかを無視すればいくらでもあるだろう。
まれなもそれは分かってるんだろうけど、確かに今ここで口に出す話じゃないよな。
威薙会ってのがそこまでやるギルドなのかは知らないけど、どんな手段を使おうが好きにしたらいいと思う。
でもそれじゃあダメなんだよな、お兄さん逃げちゃうよ。
俺もまだ聞きたい事とかあるし、潤葱と合流されると面倒な事になるかな。
二人とも異世界帰りで、どんな能力をこっちに持って来てるかも分からない。
俺の鑑定が通用しなかったし、アッちゃんが言ってた様にこの世界の魔力じゃないってのが厄介だ。
それにバクレイオンが魔王で、それをこっちに移住させたいみたいな事を言ってたのも気になる。
今なんかやってるのはその布石なのか?でも多分どっちも俺が持ってるんだよなあ。
ちょっとその辺二人とすりあわせしたいな。
「お兄さんちょっといいですか?」
「玻琉綺君、この縄解いてくれないか?まれなの奴こんなにキツく縛りやがって、絶対このままにしていくつもりだ」
おや?ひょっとして……
「お兄さん、縛られていると転移出来ないんですか?」
「俺が転移できる事を知ってるのか!?」
そりゃね、霊洞の奥から出て来たり仲間の潤葱も使ってたし。そう考えるのが普通ですよ。
だから転移阻害かけたわけだし……あ、俺が転移阻害してる事に気付いてないのか。
「まあ状況的にそうかなって」
「そうか、さては君がこの転移阻害をかけているんだな」
「気づいちゃいました?お兄さんはまれなとちゃんと話し合った方がいいかなあって思って、逃げられない様にしときました」
まれなも楽しそうにはしゃいでたし。
「君は一体何者だ。そんな真似が出来るなんて……まだ高一だろう」
どうしようか、一応同類って事になるのか?
俺も同じだとか言って仲間意識を持って貰えばもっと聞き出せるだろうか。
いや、変に策を弄する様な真似はやめておこう、まれなのお兄さんだし。
「それよりもこちらにはバクレイオンとシャスティフォルがあります」
他の人達もいる事だし手短に終わらそう。
「今、何と……」
「逃げないで下さいね。また会いに行きます」
それだけ言って俺は踵を返す。藤堂玻琉綺はクールに去るぜ。
お兄さんには申し訳ないけど、しばらく縛られといてください。
「玻琉綺、兄様と何を話していたの?」
「お兄さん面白い人なんで、また会いましょうって言って来た」
「あんまり兄様の話を間に受けないでね」
普通はあんな話信じないよな。お兄さんが戻って来てから何があったか詳しく聞きたい気持ちもあるけど、よそのご家庭の話に首を突っ込むのはやめておこう。
「まれなももう少しお兄さんに優しくしてやれよ、妹にキツくあたられるのって、お兄ちゃん辛いんだから」
「貴方も妹さん多いものね。ま、考えとくわ」
こうして無事に今回の探索依頼は終わった。
魔物も出ては来たけど、問題にもならなかったので特に語ることもないだろう。
今回のは依頼という事なので報酬も出るそうだけど、俺はまれなのポーターだからな。
まれなの口座に振り込まれる様だ……今度お小遣い貰おう。
でもやっぱりあの怪童丸の呟き気になるなあ……スサノオとか言ってなかったか?日本では大物の神様じゃんか。
「今回は本当にありがとうございました」
霊洞を出て陸堂さんにお礼を言われる。
いえいえ、此方にも利のある探索でしたし、お互い様です。
お礼よりももう二度とあのクソジジイを俺の前に出さないで下さいね。何なら加納崎さんに苦情を入れようかな。
「さあ、これからどうするの?」
まれなはまだついて来る気なのだろうか?
「今回のGW探索はここまでで終了だ、まれなも家に帰らなくていいのか?まだ何日かGW残ってるだろ、俺も明日辺りまでは地元の友達と遊んでから学院に戻るつもりだ」
「え、玻琉綺の友達会ってみたい!」
何でだよ。
「まさかまた家に泊まるつもりなの?」
「もちろんよ。だって妹さん達と約束したしね」
いつの間に……昨日銭湯に行ってる間にか。
「あ〜、じゃあ母さん晩飯とか準備しちゃってるのか」
「じゃあ、今から連絡するから一緒にカラオケでも行く?」
カナタもセナも、俺と違って人見知りするって訳じゃないから、連れて行っても大丈夫だと思う。
まれなにカラオケのイメージとか無いけど、今時の高校生ではあるんだからカラオケぐらいやったことあんだろ。
「え、カラオケ……ボーリングとかにしない?」
ほう。
「何で?いいじゃんカラオケ」
「いやホラ、私最近の曲とかあんまり知らないのよ。玻琉綺の友達だってそう言うのなんか気まずかったりしない?」
「それなら問題ない、俺たちもアニソンとか懐メロとか古い洋楽とかばっかだからむしろ丁度いい。決まりだな、近くにあるからそこに行こう」
ふ、さてはまれな歌が苦手だな。
今まで散々俺の弱みを握られたけど、お返しだ。お前の恥ずかしい所も見せてもらおう。
そうと決まれば早速奴らを呼び出そう。
「えー、ハル友達って女の子だったの!」「わっ可愛い……あれ?見たことある」
こっちから呼んどいて何だけど、お前らヒマなの?男女二対二でなんか合コンみたいになったな。
「あ!まさかナギCHAN!」
何だそれ?
「あ、あー……ひょっとしてリスナーだったりします?」
そういや動画配信もしてるって言ってたっけ。カナタもよくチェックしてんな。
前にもペロってさんが何だのって言ってたし。
でもそんな事はどうでもいい、それよりもカラオケだ。
まれなの弱点を曝け出させてやる、何せ此方は三人だ、精々いじり倒してやるぜ。
「玻琉綺ってあんまり歌は得意じゃないのね」
く、しまった……いつも三人でばっかり行ってたから気にして無かったけど、俺ってあんまり歌は得意じゃ無かったんだ。盲点だった。
そしてまれな、お前歌上手えじゃねえか!何でさっき苦手感出してたんだよ。『自慢っぽくて嫌だったのよ』じゃねえよ!
カナタも『ナギCHANの生歌キター!』とか言って喜んでるし、セナもアイドルデュオの曲デュエットしてるし、最近の曲知ってんじゃん、俺は知らない歌だったけど。
おかしい、なぜ俺のテリトリーで俺が阻害されてんだ?ちくしょう、まれなに弱点はないと言うのか。
今日は野球のクライマックスシリーズを見てて書くのが遅れました。
贔屓のチームが勝ったのでご機嫌です。
ようやくGW編も終わりが近づいて来ました。
まだまだ続きますので応援よろしくお願いします。
今回も読んで頂きありがとうございます。




