やっぱり実家に帰ります
「さあ玻琉綺、これから貴方の家に行くわよ」
そんなまれなの一言で今俺は出雲県から実家のある神流倭県に向かうヘリの中にいる。
燃料どうなってんだろ、詳しくは無いけど持つもんなのか?そういやこの世界の燃料はほぼ魔石なんだったっけか。
あれから警察などへの事情聴取を斑鳩さん達に任せた。
俺達は当事者と言うよりはただの第一発見者なので……いや、一応は犯人を見てるので目撃者とでも言うべきなんだろうけど、セトちゃんに動画が保存されてたのでそこから顔写真と鑑定で判明した名前、年齢を斑鳩さん達に託して、高校生である俺達は聴取に参加しなくても良い様に計らって貰った。
『動画なら今までの霊洞内のものは全て保存してあるぞ』
と言うアッちゃんの言葉には驚いた。今までそんな事一言も言わなかったじゃん。
情報提供についても斑鳩さん達は詳しいことは何も聞かずに“……感謝する”とだけ言っていた。
もちろん、まれなは別だ。
洗いざらい吐かされた。コイツ……その為に俺を送ってくなんて程のいい言い訳をしたんじゃないだろうな。
当然だけどアッちゃんやセトちゃんの存在は匂わせすらしていない。
ただ、石板の性能は……あくまで俺の知る限りはだけど全部話させられた。動画とかさっき知ったばっかだったけど。
別に無視しても良かったけど、もう今更っちゃ今更だしな。
あんまり隠し事してるのも今後の行動が面倒だし、一緒のチームになったんだからちょっとぐらい説明も必要だろう、信用も出来るし。
そう、俺はもうまれなを信用してる。
約束は守ろうとしているし、仲間思いではあるし、最初の出会いからして堂々としてて潔かった。
少なくとも嫌う要素はない……苦手な要素はあるけど。
それに……何と言うか我ながらチョロいとは思うけど、まれなは可愛い。
学院の全員は知らないけど、美形の多い世界ではあるけど、どう考えても学院一の美少女だろうよ。
緑がかった黒髪は長くサラッサラで毛先はクルッと内巻き気味に跳ね、眉は太くはないが凛々しく、力強いその瞳は年相応の幼さをも残し、綺麗に通った鼻筋もふっくらした頬もピンクの花弁の様な唇も、あれほどの技量を持つとは思えない小さい肩やほっそりした腰も、慎ましやかなその胸元もその全てが……っておい!
何だそれ?一体俺は何考えてんだ!何でまれなの容姿の詳細な感想を今更……。
可愛いからって信用するんかい!だから俺には好きな人がいると何度も……
・・・『別に何人好きになろうと構わんではないか』・・・
アッちゃんの言葉が思い出される。
だが果たしてそうなのだろうか?何人好きになろうと構わないのだろうか?そりゃあ別に構わないかも知れないけど、俺が持たないんじゃないのか?
「何よ玻琉綺、ジロジロとこっち見て……いやらしい」
く、バレた。
「……別にミテナイヨ」
「嘘っぽいわね、ここでは確かに二人っきりだけど、操縦席にはパイロットがいるし格納庫には皆連寺がいるんだからね……変な事考えないでよね」
変な事なんか考えてません、ただまれなって可愛いなって思ってただけです。
でもそうなんだよな、別に二人っきりって訳じゃないんだよな……いや全然残念とか思ってねーし。
小太りさん(皆連寺さん)は稲城本家に連行される事になった。
身内から逮捕者を出したく無いと言う事や、組織の事を詳しく聞き出さないといけないとかで警察に身柄を渡す訳にはいかないと言う事だった……それってどうなの?隠匿とかそう言うんじゃ無いの?
まあ俺が口出す事じゃ無いから何も言わんけど……俺命狙われたんだよなあ。
稲城本家は吹嶋県にあるそうで、いまだに県名がピンとこないけど福島県の事だ。
会津若松の辺りにあるらしい。
俺を神流倭で降ろしてから向かうみたいだけど、結構な長距離飛行になるよな。
時間にすると出雲から神流倭まで約二時間弱……速えな。元の世界でもそんなもんだったのか?でもこの世界何か土地広がってる気がするんだよな、地図とか見ても……まあ元の面積とか分かんないから気のせいかもだけど。
「変な事考えてないで準備をなさい、そろそろ着くわよ」
だから速えよ、二時間どころか一時間くらいしか経ってないじゃん。
「随分早いんだな、事前説明じゃ二時間とか……」
「急がせたわ、魔石をたくさん手に入れたからね」
それでこんなに早く着くもんなのか?別に良いんだけどさ……残念とか思ってねーし。
「そうなんだ……で、何でまれなも準備してんの?」
オイまさか……。
「私も行くから当然じゃない、もちろん泊めてくれるわよね?チームなんだし」
マジか、学院を出た時のは本気だったのか。
でもチームって別にそう言う事をする関係じゃ無いと思います。
「妹さんもいるんでしょ?会ってみたいわ」
「別に珍しいもんじゃ無いよ」
こっちは妹なんか見飽きてる。……ほど時間が経ってる訳じゃ無いのに、なんか見飽きた感があるな。
違和感も全然ないし、もうこっちの世界にすっかり馴染んだんだろうか。
……そう言えばまれなって前の世界ではどうだったんだろ?
実は男だったりしたのかな……いや、考えても分からない事なんだけど、だったら何だって話なんだけど、つい考えちゃうよなあ。
まれなから視線を外す様に、ふと窓の外を見ると山々が見える。
家からそう遠くない足柄山系の山々だ。
この世界では明日香良峠って呼んでるけど……何かの漫画のキャラとか、ニートのセリフみたいな名前だ。
そういやこの山にも鬼の伝承と深い関わりのある伝説があるな。
坂田金時……金太郎だ。
アレって確か鬼退治の話とかあったもんな、酒呑童子とか。
この世界、伝説が伝説だけとは限らないからな、阿久羅童子とか知らない名前だけど繋がりあったりするんだろうか。
「さあ着くわよ」
まれなの声に合わせた様にヘリが降下していく。
「あ、そう言えばまだ連絡してない」
スッカリ電話するの忘れてた。
「でしょうね、電話してるとこ見てないし」
「分かってんだったら教えてくれよ」
「サプライズのつもりじゃ無かったんだ。って言うかそのくらい自分で気付きなさいよ」
「だって何かゴタゴタしてたし……」
ドギマギもしてたし……。
「言い訳しないの!」
「ハイ、すみません」
何で俺謝ってんだよ。
おっと、それより早く荷物とか確認しないと……カバン一つだけど。
今考えると、側から見てこんな軽装備で霊洞潜るとか狂ってんな……そりゃまれなも心配するか。
程なくしてヘリポートに降り立つ。
近所と言うほどではないけど、実家まで車で三十分くらいのとこにヘリポートなんてあったんだな。
「ではお嬢、お気をつけて。藤堂君もくれぐれも頼むよ!」
「ええ、そっちも気を付けて。襲撃が無いとも限らないわ」
小太りの皆連寺さんを載せてるんだから奪還とか口封じとかあるかもだもんな。
稲城家内部にもまだ組織の手が入り込んでるかも知れないし……うわ結構ハードな状況だな。
「じきにハイヤーが来るわ、何か手土産でも……お饅頭売ってるわね」
律儀なもんだな、まあこの辺に土産屋なんてないし普通に饅頭屋の饅頭だけど足柄……じゃなくて明日香良茶饅頭美味いんだよな。
地元の名産を土産ってのもどうかと思うけど、こう言うのは気持ちだからな。
「俺も払うよ、金は無いから魔石払いで」
もちろんそんなのを請け負ってくれる店は無い。
まれなに払ってもらって魔石を渡すってだけだ……魔石っていくらなんだろ?
学院内で売っただけなので正確な金額が分からない。
「良いわよ、泊めてもらうんだしこのくらい」
そうか、やっぱ泊まるのか。
良いと言った覚えは無いけど断りもしなかったしな、仕方ない……でもウチ予備の布団とかあったっけ?
地元に帰ってきた玻琉綺ですが、まだ一月ちょいしか経ってないんですよね。
時間の進みが遅くてすいません。
こんなんで三年間とか気が遠くなりますが、頑張りますので応援よろしくお願いします
今回も読んで頂きありがとうございます。




