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兄弟が兄妹になっても

 ……霊奧学園高校 全寮制。

家に帰りちょっとネットで調べたらところ、こんな表示が目についた。

ほほう、これは……。


 ふうむ、悪くないのではないか?

よく調べてみると普通科、探索科、魔導工学科とあって、二年生から普通科は一般事務科と戦闘技術科、魔法理論科に分かれ、探索科は攻略科、採掘科に。

魔導工学科は、工学科、制作科、情報科に分かれる……か。

結構手広いな。


 さらに実技のみの試験というのは探索科の入学試験であり、これは魔導力場に適応できるかどうかの試験なので、実際にダンジョンに入って適性を調べるためのものとなっている……か。

仕組みはわからないけど、一応安全性は担保されているようだ。

まあ、試験で怪我人、ましてや死人を出すわけにはいかんよな。


 ダンジョンかあ……異世界にいる時は殆どダンジョンマスターみたいな事もやってたなあ。

あそこでは八割裏方というかパシリというか……そういや餞別のデカめのお守り。

ポケットに入れててもあんま邪魔になんないんだよな、これも魔法的な細工がしてあんのかな、神様製だしな不思議はない。


 魔法的な品だとすると力場の発生しているダンジョンとかじゃないと作動しないとかなのか、まさかホントにただのお守りとは思ってない。

これは本格的に霊奧への入学を考えるべきか……。


「兄者ードーン」


 おいおいココちゃんや、寝そべってスマホいじってる無防備な背中に飛び乗るのやめて?

この子こうゆう絡み方する。

一日数回はこうやってダイナミックスキンシップを謀ってくる。

呼び方以外は子供らしいんだよな。


「兄貴ー、メシできたよー」


「ん、今行くわ」


 キョウちゃんは料理が得意。

意外だ、まだ小五なのに帰りの遅い母に変わって……料理センスのヤバい俺やミツに変わってよく晩ごはんを作ってくれる。


「オラココ、いつまで兄貴に絡んでんだ、メシだぞ」


「わーキョウちゃんこわーい」


「うるせ、はよこい」


 ててっとリビングに向かうココちゃん。 あらかわいい。

そうなんだよなー、コイツらも可愛いんだよなあ。

元が弟だと認識してるから素直には認めたくないけど、一般的に可愛いと言われる程度には造形が整っている。


 寮に入ってみたいと思ったのもコイツらと一緒の部屋で暮らすのに気疲れしてしまうからだ。

もちろん騒がしいのもそうだけど今まで気にしてなかった事にも気を遣わなければならないし、何よりコイツらに対してカワイイなどと思うのがどうにも納得がいかない。


 その日の食卓、ミツは部活……バレーボール部だ……があったのでシャワーを浴びてたようで、雑な格好でリビングにやってくる。

もー、そうゆうとこー。


「キョウちゃんいつもありがとう、美味しそう」


 今日の献立はナスの味噌炒めにツナサラダ、味噌汁、豆腐。

それなりに美味い。

きっと将来はいいお嫁さん……になるにはもっと言葉遣いとか問題ありそうだけど男の胃袋くらいは掴めるだろう。


「ミツ姉も料理くらい出来りゃあもっとモテんじゃね?」


 ほう、ミツはモテているのか……なんだろう、さもありなんと思いながらも微妙な気持ちになる。

別に妹に彼氏ができてもなんも思わん……はず。 

これまで見てきて感じた事だが、この三姉妹に限らずなんか全体的に顔面偏差値の高い世界になってる。

鏡を見る限り俺もちょっと美化されてるような気がしないでもないけど、なんか方向性が気持ーちコワモテ側に寄ってるきがする……解せぬ。

カナタとかは結構なイケメンになってるのに。


「やめてキョウちゃん、別にモテとかいらないし」


 まあ可愛いが多いって事はより内面が重視されるって事なんだろう。

料理が出来ないってのは年齢的に考えても致命的ではないし、一つくらいわかりやすい弱点も可愛げがある。

ミツは中々の完璧超人だ。一年生ながらに部活でレギュラー、成績優秀、人当たりが良く面倒見もいいし、裁縫が得意で絵も上手けりゃ字も綺麗。


 こやつ、俺の妹だって事忘れてないか?

ミツだけではなくキョウも中々のスペックを誇る。

料理に限らず家事全般得意な上にピアノが超得意で、コンクールで優勝した事すらある。

リズム感が良いのだろう歌もダンスも上手いが、『兄貴ィ、見てくれよ』とか言いながら部屋で踊るな。

コイツはそれでどうしてそんな言葉遣いなんだ? イメージ詐欺だろ。


「兄者ー、醤油とって」


「ほらよ」


 ココちゃんはなんかもう天才だ。

俺の横で高校レベルの数学の問題解いてたり、海外文学を原文で読んでたり、俺のPCでなんかプログラム組んでたりしてる。

試験勉強中のお兄ちゃんの心を折るんじゃない。


 ちょっとこの子たちうちで育てちゃダメじゃない?

俺なんか期末は赤点だろうし楽器なんて縦笛すら怪しいし、本好きだが基本ラノベやマンガばっかだし……あれ?なにこのダメ兄貴。

セルフダメージがデカい。


「お、兄貴食うの早いな、お代わりよそってくるな」


 ちょっと世界を救ってきた……とか言ってる場合じゃない。

そんなもんここでは何の関係もない、今この世界で俺は何者なのか、何が出来るのか、何をやるのか。

彼女らの兄として、俺は相応しい何かが出来るのだろうか……。


「キョウちゃんのご飯ホント美味しい」


「ミツ姉ちゃんのお世辞は聞き飽きたぜ」


「アタシもキョウちゃんのごはんすきー」


「ハイハイ、ありがとよ」


「いつもすまないねえ」


「ちょ、兄貴、それは言わない約束だろ」


「俺とミツがポンコツなばっかりに……」


「ポンコッ!……ちょっとキョウちゃん、料理を教えなさい」


「いやー、ミツ姉ちゃんにはまだ早えな」


「まだって何よ!」


 黙って食え、俺は今思考に耽っているのだ……今何考えてたっけ?

そうだ、進路について考えていたんだった……?

まあいい、そうだ進路だ。


 全寮制の学校って事はコイツらと離れて暮らすという事。

さっきは何となくウザいから寮にでも入りたいとか考えたけど、実際こうやってるとなんだかほっこりしてきて、家族の和やかさ、暖かさ、ありがたみを感じないこともない。


 やっぱりコイツらは俺の肉親なんだな。

そう感じる。 男とか女とかではなくちゃんと同一の存在だと理解できる。

性同一性存在とか言うのか?いや言わないな。


 まあ学校の方は学費やなんかの問題もあるし、男が父さん一人だけになってしまう。

あまり安易に決められない、ちゃんと相談しないと。


「ねえ兄者……来週の24日なんだけど」


「ん、なんかあんの?」


 そういやその日は終業式だな、そんでもってクリスマスイヴか。

去年のクリスマスはカナタとセナの三人で遊んだなあ……今年はどうだろう、追試とかあんのかなあ。


「兄者とお出かけしたい」


 ほう、可愛い妹の頼みだ、やぶさかではないぞ。


「何だ、クリスマスプレゼントでも欲しいのか? でもにいちゃん金はないぞ」


「プレゼントよりも兄者と遊びたい」


「え、何それアタシも遊びたい!」


「あ、兄貴……オレも」


 キョウちゃんオレっ娘である。

家庭的なスペックとホント合わない。


「遊ぶって……なにすんのよ?」


「駅前のモールでクリスマスツリーを兄者と見たいなーって」


「あ、それワタシも見たい、確かおっきく作り変えたんだよね」


「おし、じゃあ24日はツリー見て晩ごはんの買い物な、みんなで」


 キョウちゃん、なんか所帯染みてる。

あと俺の返事も待たずに決めないで。 追試の予定がまだ出てない。

でも言えぬ。

まさかお兄様が赤点で追試のピンチだなんて、このスーパー三姉妹には言えぬ。


「じゃあ学校終わったらそのまま家に集合な、寄り道すんなよ」


 やったー、とリビングに響く声……だからでけえって。

ま、最悪ドタキャンだな、怒られそうだけどツリーぐらいしばらく出てんだろ。

何ならもう出てるだろうし、まあそんなに見たけりゃもう見てるだろ。


 そういうところだぞー……ん、今誰かなんか言った?

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