銃なんて初めて見た
何か仕掛けてある。
これはどう言う事だろう……俺が何かしたか?何か稲城家の気に触る事でも。
まれなに近付く男は許せん的な理由ってのも考えられるな。
でもなあ、それにしちゃあちょいと大掛かり過ぎないですかね?
俺にはまだ力場の発生の仕組みは分からないけど、そう言う技術がある事は知っている。
まれなの持っているテントはミスリルの糸を編み込んで魔力を反射させるとか言ってたけど、テントに使われている物が何だか知らないけど、これは力場を発生させる何かが使われているのだろう……テント内部は霊洞と同じく魔導力場によって魔力が発生している。
その上、テントの中の敷物には多分魔法陣の様な物が描かれている。
魔力の流れや質を見ると、どうも時限式の何かみたいだな。
爆破とかでなければ掛かってみるのもまた一興と言えるかもしれないけど……。
振り返るとさっきの小太りオジサンはもう見当たらない。
怪し過ぎんな、本当に稲城家の手の者なのかすら疑わしいぞ。
さっきの殺人犯の仲間か?油断させておいて罠にかけるとか……。
でもそうだとすると動きが早すぎる。
最初から見張られていた?まさか……考えたくはないけど稲城家にスパイでもいるのか。
俺達がここを調べようとしてるのって今朝まれなに伝えたばかりだ。
送ってくれた稲城家がそれを知っていたとしても、そこから情報を得るのに即時という訳にはいかないだろう。 内部犯以外には。
まれなは俺が何か探っている事に気づいていた。
だったらそんな事を送迎班に伝えていたかもしれない……口封じが目的なのか?
まだ何にも分かって無いけど、調べに来ただけでダメって事か。
でもここ普通に探索されてる霊洞だよな、何か事情が変わったとかか?
……隠された階段、解除キー、妙に多いゴブ、コボ、殺害現場の目撃。
このぐらいの成果しか得られなかった。
この中で考えられるのは隠し階段が有力だけど、俺が知ったという事はまれなだって知らない事だし、他の誰かが知る事だってあり得ない。
そういや、まれなは考えから外してたけど、害するつもりは無いってのは本当だろうか?霊洞内での様子からは害意を感じなかった。
でも俺のアイテムボックスを狙ってと言うのは考えられない事もないのか?
ダメだな、疑い出したらキリがなくなる。
一先ずはまれなの事を疑うのは、実際に行動を起こして来るまではしないでおこう。
であれば……まれなの身が危ない?
くそっ、鑑定結果とかちゃんと見たかったけど後回しにするしかないか。
「おっと、藤堂君……何処に行くんだい?」
踵を返す俺の前にさっきの小太りオジサンが立ち塞がる。
手には拳銃を持っている。俺に対する殺意なのか牽制なのか脅しなのかは分からない。
「これはどう言う事ですか」
それにしても拳銃とは……実物を見るのは始めてだ。
こっちの世界ではもちろん向こうの世界にはそもそも無かった物だ。
探索者の武器としてもこっちでは使われていない、威力はともかく跳弾が不味いからだ。
霊洞内の物理法則は不安定と言うか歪んでると言うか、外に比べると違って来る場合が多い。
普通にしてる分には問題は無いけど、例えば銃弾の様に実体弾を高速で打ち出した場合、先ずは空気抵抗ではなく力場抵抗と言うものが壁になる。
これによって弾速は著しく低下し、さらには入射角と反射角が一致せず、法則性すら無い。
どの様な熟練者だろうと天才だろうと跳弾が読めない。
威力が落ちる上、狙いを一発たりとも外せないとなれば、これほど扱いづらい物も無いだろう。
でも、霊洞の外なら話は別。
一転して俺が通常知る危険度に跳ね上がる。
「なあに、別に殺そうって訳じゃ無いから安心してくれ。まあ、死なない程度に手足を撃ち抜くぐらいだよ」
十分嫌だよ、殺す気なくても下手すりゃ死んじゃうじゃん。
「この事まれな……稲城さんは知ってるの?」
「ああ、お嬢はなあ……ま、別に君とお喋りするつもりは無い。大人しく言う事を聞いてもらおうか」
「何を要求する気ですか?」
大人しくって言っても、事と次第によっちゃあ荒事を起こさなきゃならないかも知れない。
でも、拳銃はなあ……どうなんだろうか、見て躱すとか無理があるよな。
きっちり長袖着てるから向きは分かっても筋肉の動きが見えないから多少反応が遅れる。
「そうだな、簡単に言っちまえば……仲間になれ」
「稲城さん家の、仲間?」
「おっとそうじゃねえ、正確には俺たちの組織“神薙”に入れって言ってんのさ」
神薙か、どう言う意味なんだ?そのままの巫女的な意味じゃ無いんだろうな。
神を薙ぎ払う……神を殺す?
もしそう言う意味だったら多数の神を殺すって事になるな。
「……組織の目的は?」
「いったろ、お喋りをするつもりは無い。言っておくが断るってなら気が変わって殺しちまうかもなあ」
まれなは関わって無さそうだし、コイツは敵って事で良いな。
「まれなが関わって無いならそれで良いや、ちょっと助けに行ってくる」
この手の奴がコイツ一人だとは思えない、まれなの方にも変な奴が付いている事だろう。
斑鳩さんが敵じゃ無いと良いんだけど……そうだったらまれの身の安全は保証されたも同然だ。
まれな自身も相当な使い手だし、斑鳩さんもかなりの実力者と見受けられるし、むしろ霊洞内なら仕掛けないかもな。
「分からんガキだな」
“パアン”
乾いた音が響く。が、その時には俺はもうそこに居ない。
どんだけとろい奴だと思ってんだ?銃を構えた相手にボーッとしてる訳ないだろ。
慌てて狙いをつけようとする小太りだが、こっちものんびり真っ直ぐ走ってる訳じゃない、フラフラと狙いを定められずにいる。
大した実力じゃないな、高校生と侮って格下を当てがったか。
小太りが懐に手をやった。
何をする気か知らんけどやらせるかよ。
「ちぃ、舐めるなこのガキ!」
喋ってる余裕があんのかよ。
重心を落とし、その勢いそのままに飛び込み前転、着地地点は小太りの足元だ。
小太りが懐から手を引き抜いたと同時にその手の甲にこちらの拳を合わせる様に繰り出す。
「ぐあっ!」
何かを取り落とした……何だ?
小さな鉄パイプの様なものにスイッチが付いているそれはには、噴出口の様なノズルも付いていた。
何だ、この期に及んでガスの類か?拳銃持ってる男が催涙ガスの様な生温い物を使うとも思えない。
殺すつもりは無いみたいな事を言っていたが、鵜呑みにするほど能天気じゃ無い。
このタイミングで使うとなれば、毒ガスなどであれば自分も巻き込まれてしまう。
じゃあ何だ?
考えながらも関節を取り小太りを拘束する。
「何を使おうとした」
関節を極めた手を強め、問いかける。
これは質問ではなく尋問だ。拷問でも良いかも知れない。
「……」
黙秘か、
まれなの家の人だから出来れば穏便に済ませたかったけどしょうがないなあ。
そのまま関節を常とは逆方向に折り曲げる。
“ボゴキ”
鈍い振動と音が極めた腕から伝わってくる。
「おぐ、くああがああああ!!」
煩い悲鳴だ。
「もう一度聞く、アレは何だ」
「ぐああ、い、いだだ……いだいいくおおおぐぅ」
「何だと聞いている」
もう一撃今度は足首でも壊そうかと思いながら、くるぶしを踏みつけ力を込める。
でもまた煩い悲鳴を聞きたく無いし、喋るどころじゃなくなるか?
「い、いう、だからは、はな…… はなじで、くで」
「ダメだ言え」
喋る気になったか、でも俺は拘束を緩める様な甘ちゃんでは無い。
「……アレは、人工魔物の、呼び出し装置……だ」
人工の……魔物?
ちょっと遅めでしたが何とか今日も投稿出来ました。
出来ればこのままこのエピソードは寄り道なしで進みたいです。
でも進めるうちにどうしても寄り道しそうになるんですよね。
まあ予定通りに行く様頑張ってみますので応援よろしくお願いします。
今回も読んで頂きありがとうございます。




