無駄に考えちゃうんだよなあ
神話関係の知識は俺の方がこの世界では異端だろう。
俺もラノベとかで読んだぐらいの知識しかないから、そもそも前の世界基準で考えても合っているのか今となっては不明だけど、流石にイザナギ、イザナミとかの話は有名なので大体分かる。
あれは確か黄泉の国で食べ物を食べたから帰れなくなったとか、そんな話の流れだった。
この霊洞の噂も何だかそれに近い気がする。
霊洞の食べ物を食べて魔物になるかはともかく、出られなくはなったのかも知れない。
それが噂になって、尾鰭が付いて魔物がどうとかって話になったと考えられない事もない。
死んだとかの話じゃないから、目撃者もいるのかも知れない。
霊洞で死んだとかじゃ噂になるわけもないしな。
やっぱりこの比良坂霊洞は黄泉の国との繋がりはありそうだし、普通に知られてるくらいには黄泉の国と霊洞とは同一視もされてる様だ。
となると、解除キーか。
駅前霊洞では一角虎を倒したら脱出宝珠が出て来たし、この霊洞でもそう言う魔物かなんかがいるのかも知れない。
今まで遭遇した人はいないんだろうか?
「どうしたのよ玻琉綺、何か気になる事でもあるの?」
「すまない、ちょっと考えをまとめたい。周りの警戒を頼む」
立ち止まってるのも何だから、取り敢えず下の階層への階段なりを探すか。
まれなにはそう伝え、歩きながら沈思黙考といく。
ここまでの事を整理してみよう。
まずヒメは霊洞の神様、霊洞は昔は黄泉の国と同一視されていて黄泉洞道などとも言われてたらしい。
対して黄泉比良坂は黄泉の国そのものではなく、あくまでそこに繋がる道だ。
そしてこの世界にはその言い伝えはない様だ。
けどここは比良坂霊洞と言う名が付いている。
平坂ではなく比良坂と言うのはやはり、今は黄泉の国関係のものだと考えておいても良いだろう。
噂の元ネタも黄泉戸喫と考えられるしな。
あくまでも推測になるけど、隠し階段の先ってひょっとして本当の黄泉の国なんじゃないか?
そして黄泉の国に、死後の世界に行くための鍵……か。
死者の国……三途の川、渡賃、閻魔大王、
神道と仏教が混じってしまうな、神仏混淆っていつだっけ?
それを前提に考えを発展させても大丈夫だろうか?でも黄泉の国って情報少ないんだよな。
黄泉醜女とかぐらいしか登場人物に心当たりがない。
後はイザナギの千曳の大岩ぐらいしか。
でも、その大岩を隠し階段の入り口を塞ぐ壁と考えると……。
「ちょっと玻琉綺!いつまでボーっとしてんの」
「っとゴメン、何かあった?」
流石に考え込み過ぎたか。
「アレからコボルドとかゴブリンとか出て来たけど、私に全部押し付けて良い気なもんね」
「悪かった。取り敢えず考えるのは後にするよ、情報も少ないのにあまり考え込んでも推論しか出ないからな」
「もう、そんなの最初から分かりきってるじゃない」
そうなんだけど、それでも一応の指針として何かあった方がいいかなって思ったんだけど……下手な考え休むに似たりって事か。
「ちゃんと貴方の技も私に見せなさい」
「分かったよ、次からは俺も一緒に戦うから怒らないでくれ」
犬頭人に小鬼か、そういやギリシャ神話で地獄の番犬ケルベロスっていたな、エジプトにも犬頭のアヌビスってのが死者の書とかに出てたんだっけ?
それに鬼ってのも地獄とかでは定番だよな、あ、カエデも鬼だっけ。
「なんかドロップした?」
「残念ながらなーんにも、まだ二十体も倒してないし」
結構出てたんだな、なんか二十体ってとこを強調してるな。特に疲れは見えないけどそう言う問題じゃないか。
そうだな、元々調査目的だったんだから、別にここの謎を今無理に解き明かす必要は無かった。
「だから悪かったって、三階層まで潜って何もなさそうなら一旦戻ろうかと思う。どのくらいの広さかも分からないしな」
日帰り気分だったけど、泊まりになったらどうしよう。
他の探索者とかどうしてるのかな?まれなはお泊まりセットとか持ってるのだろうか。
ってか、俺は女子と一夜を明かすのか?そんな、まだ早い、心の準備が……。
「……なんか変なこと考えてる?」
ぬ、鋭い。俺はそんなに分かりやすいか。
「別に。万が一夜を明かす事になったらどうしよっかなって……」
おい、手で体を隠すな。俺に透視能力はない。
「い、言っておくけど、私のテントには入れないわよ」
入らねえよ!ってか何テント……え、霊洞ってテントとか張るの?
え何、魔物除け機能とか付いてんの?
凄く気になる、魔道具の一種なのかな。
「なんか入りたくなって来た、って言うかちょっと中見てみたい」
「この変態!女子のテント見ようとしてんじゃないわよ!」
「誤解をするな、俺はただ……」
何を言っても無駄だと思う。
「まあ何だ、準備はしてある様でなによりだ」
「……貴方はどうなの?アイテムボックスに何か入ってるの」
ないな、そんなものは何一つ持ってない。
野営するのに食料以外の必要性を考えなかった。
そもそもが日帰りの感覚何だから、野営自体考えの外だった。
「ふ、三階層くらいで日を跨ぐ事もあるまい」
「何で格好つけてんのか分かんないけど、持ってないのね。貴方が言ったんじゃない」
言ったけど、持ってるとは言ってない。
「聞いただけだ、俺は無くてもどうとでもなる」
「あのねえ、貴方素人じゃないんだから霊洞舐めすぎじゃない?」
素人みたいなもんだろ、霊洞歴五年のマリナと比べたら。
俺なんかまともに霊洞に入ったのは学院に来てからだ。
やっぱり霊洞で夜を明かすのは危険な事であるらしい。
まれなによると、多くの魔物はこちらが発する魔力波を感知する。
ならば感知されない様にすればいいという事で、ミスリルアミド系の繊維を使っているそうだ。これが反射板の役割を果たす。
魔力波を内部に反射させて外部に漏れさせない様にする事で感知から逃れるわけだが、夜行性の魔物などに視認されれば無力な為、せめて一撃は耐えられる様にと、パラ系アラミド繊維をミスリル鋼糸と編みこんで開発されたそうだ。
そんな高そうなモン買えるわけないだろ、いい加減にしろ。
でも同じ素材の寝袋を貸してくれるそうだ。
もちろん新品だそうです。最初から貸してくれるつもりだったのだろう。
何この良い子。
それらは魔法で小型化されてリュックに入っていた。それもアイテムボックスみたいなもんじゃん。
「おっと、来るぞ」
ギャアギャアと声を上げてゴブリンの群れが押し寄せてくる。
二十じゃ効かない数だ。
「また……随分とに際かになったわね」
若干顔を引き攣らせながらも、不敵な態度で一歩も引かないまれな。
カッコいいじゃないか。
「せっかく歓迎してくれてるんだ、存分にもてなして貰おうじゃないか」
俺も負けじとカッコいいセリフを言う。……カッコいいか?
俺たち二人の蹂躙劇が始まった。
まれなの槍を振るう姿は薙刀よりも直線的で、それでいて無駄も隙もない見事なものだった。
美しい舞と言うよりも、猛々しい暴風の様な激しさだ。
一振りごとに獰猛な笑みに変わっていく。
……あの槍ヤバいやつじゃないだろうな、普段の彼女と違い過ぎる。
まあ伝来の槍なんだから害はないと思いたい。素かもしれないし。
それより俺も負けない様にしないとな、また怒られる。
俺は特別剣が得意というわけじゃない。
まあ人並みだろうとは思うけど、あんな激しい技の冴はない。
でも万年に渡る経験がある、研鑽がある、ズルいと言われてもあるんだからしょうがない。
体に染み付いた動きは、擬似訓練によって改めて意識した動きと融合し、昇華され俺の剣技をさらに一段高められた。
などと自分に酔っている間にゴブリンの群れは消滅していた。
多分俺の方が倒した数は多いはず。
まれなの言う通りツートップ体制は正解だった様だ。
「ちょ、ちょっと、玻琉綺……何よそれ」
え?あっ……。大量の粒子が俺のポケットに入ってる石板に吸収されていく。
やっば、セトちゃんの吸収オフにすんの忘れてた。
みなさんこんにちは。
何と今日ランキングに載りました。
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