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アイテムボックスの怖い話


 いやうん、そりゃ日本には籐の付く名字の人は多いよな。

全部が藤原氏の一族じゃないだろうけど、かなりの権勢を誇ったのだから……この世界でもそうなのだったら血縁のある人間は相当な数になると思う。


 なので、そんなドヤられても困る。そうなんですね以外の感想がない。

佐藤、加藤、後藤、伊藤、藤川、藤村キリがない。

昔ならいざ知らず、今の時代に直系でもない藤堂姓の俺に対して言う事じゃないだろ


「今ここで詳しい話をするつもりは無いの、ただ私は理由について述べただけ。心配しないで、何も貴方を害するために着いて来たわけじゃないわ」


「そうか、じゃあいいや。なら早速入ろう」


 何らかの根拠を持って言い切っているんだろうけど、それはどうでもいいや。

そんな急に何々の血を引く〜とか、ホニャララの血筋が〜とか設定を生やすんじゃない。うちの父さんは平凡な自営業だ。

悪い様にしないってなら別に気にする事じゃないし、まれなさんがついて来た理由も、何か偉い人の命令って事なら納得してもいいし。

何だよ裏から支配って、おっかねえな、陰謀論か。


「理解が早くて助かるわ、行きましょ玻琉綺」


 そういや霊洞で誰かと一緒ってのは初めてだったな。

さっきは男女の何々がみたいな事で一瞬戸惑ったけど、そんな事よりもセトちゃんを使うのって大丈夫なのかな。

まれなさんは伝家の宝槍を持って来てるので、俺も格負けしないのを使いたい。


 まあバレて困る事はあんまりないけど、驚かせちゃうかもしれないのは勘弁してもらおう。

って事で、油断せずにフル装備召喚でもするか。


「シェリングシールド!メインフォースメイル!虎牙斬り!」


 アッちゃんによる仕様変更によって結構な声量で言わないと出せなくなった。

小声で出せてはロマンが足りないのだそうだ。一体なんの影響なんだよ。

恥ずかしいんだけど?

あ、ほら、まれなさんがアホの子を見る目で見てる。


「は、玻琉綺……今貴方、それ……どうやって?」


「デカい声出さないと装備出来ないんだよ、ほっといてくれ」


「いやそうじゃない。デカい声はどうでもいい。どっから出したのよ」


「さすが皆伝、そこが気になるとは中々目の付け……」


「誤魔化さないでよ!」


 食い気味に突っ込まれた。さすがに流せないか。


「別に、ただのアイテムボックスみたいなモンだよ」


「ただの、ですって?貴方それが一体どれ程の……」


「なんか使えたから使ってるだけだ、詳しく説明なんか出来ない」


 今度は俺が食い気味に答える。

人間、食い気味にこられると言葉に詰まってしまうものだ。


「どれ程珍しいスキルか分かってるの!?そんなの人前で簡単に見せるんじゃありません!」


 詰まるのは俺だけだった様だ。何故かお母さん口調だし。


「そうは言ってもこうしないと装備出来ない」


 学院の外じゃ霊洞に入らないと出せないし、大声出さないと出ないし。


「はあ、貴方が只者じゃないのは分かってたつもりだけど、とんだ爆弾抱えてたもんね」


 珍しいのは知ってるけど、爆弾扱いか?


「アホ面下げてるけど、コレを知られたら貴方死んだ方がマシな目に遭うわよ」


「え、何それ怖い」


 まれなさんが言うには、まずは監禁され餓死直前まで放置され、食べ物系の所持の有無を調べられ、次に縄で縛られ身動き出来なくされてコレまた死ぬ直前まで殴る蹴るの暴行を受け武器等の所持を調べられる。

さらに逆さ吊りで三日三晩放置されて……もうヤメテー!!


「ぐらいまでされてからようやく解放されて、その後は国の管理下に置かれて厳しい規則の元、何人もの監視の中でしか生活出来なくなるのよ」


 おおお、ヤバい……想像の遥か上をいくヤバさだ。

そりゃあ泥棒なり密輸なりテロなりと防ぎようのないスキルだ、厳格な管理が必須だとは理解はする、するけど……俺のはそんなに自由度高くないよ?ダメ?


「……あの……稲城さん。大変心苦しいお願いなのですが……どうかこの事は内密に」


「はあ、難しいお願いしてくるわね……コレ報告は義務よ?」


「そこを何とか曲げて……こう、どうですかね?」


「……聞いてくれる?」


「は?……はあ」


「だから、私のお願い何でも聞いてくれる?」


「いや、なんでもは聞けな……」


「何でも聞いてくれるわよね!」


 くっ、コイツ……一体何を要求するつもりなんだ。


「……はい」


「貴方今面白い事に首を突っ込んでいるみたいじゃない?」


「……どうしてそれを?」


 それは多分ヒメの事だろう。

カエデが他の奴に話すとも思えないんだけど。

 

「剣ヶ峰をシメて聞き出したの」


 ガミかあ〜。

そういやアイツなんか様子がおかしかった気もする。

睨んでくるだけじゃなく、なんか言いたそうな悔しそうな悲しそうな……。

忙しくてあんまり気にしてなかったけど、カエデから話を聞いててもおかしくはない、カエデもガミになら何でも話すだろうし。


「それでね、その件私にも一枚噛ませなさい」


「と申しますと?」


「貴方とチームを組んで霊洞を回るわよって言ってんの」


 えー。


「そ、そんな事でいいんですか?」


「……ええ、良いわよ……なんか意外ね、貴方は一人でやりたがってるのかと思ったわ」


「まあ、一人でやろうとは思ってたけど、一人でやりたいわけじゃない。稲城さんなら頼りになるし歓迎するよ」


 ヘリとか免許とか。


「そ、そう。貴方って人を頼れるのね、意外だわ」


「俺を何だと思ってる?別にそれほど意外性のある男じゃないと思うけど」


 心なしか顔が赤いまれなさん、珍しく照れてるのかな。


「それより稲城さ……」


「まれな」


 は?


「は?」


「まれなで良いわ、チームなんだし」


 ああ、確かに声かけにはその方が良いけど……女子を下の名前で呼ぶのって抵抗があるんだよなあ、何故か。

いや、言ってる場合じゃないな。


「まれな、魔物だ」


 そうなのだ、呑気にしてたけどここは霊洞内だ。魔物ぐらい出るよな。


「っ、コボルド!」


 まれなが言った様に出て来たのはコボルド、犬頭の人型魔物だ。

七体ほどの集団で襲いかかってくる。


 一瞬出遅れたまれなの前に出て盾を一体の腹に当て浮かせると、タイガーで別の二体の足元を旋回しながら切りつける。


 立ち直ったまれなが浮いたコボルドを伝家の宝槍鶫落としで突き仕留める。

足元を切りつけられたコボルドに巻き込まれなかった一体が飛び上がって粗末なシャムシールみたいな剣で切り掛かってくるが遅い。


 俺はそいつの胴体を真一文字に斬る。

まれなは倒れもがいているコボルド達に多段突きをお見舞いし決着。

やはりまれなは強い。


「貴方と共闘したのは初めてだけど、タンクみたいな事やってるのね」


「そうだな、最近は授業でもずっとそうだ」


 まれな程の実力があれば、ヘイト魔法を使わなくても一瞬だけ気を反らせれば十分だから俺もやりやすい。


「手慣れているみたいだけど、私には不要だわ。ツートップで行きましょう」


 ツートップって二人アタッカーって事か。二人しかいないのに。

確かに授業とは違うのだし、二人で戦うなら余程の強敵相手でもなければソッチの方が手早く片付くだろうけど。


「良いのか?まれなの分は残らないかもしれないぞ」


「言ってくれるじゃない、その方がコッチもモチベ上がんのよ」


 意気軒昂とはこの事だな、なんか良いことでもあったのかな。


『さてセトちゃん、この霊洞で何かおかしなところはある?』


 最近知った事だけど、このセトちゃんのマッピングは、実は俺が最初に駅前霊洞で使おうとしたやつを模倣したものの様だ。

あの時俺はこの世界の魔法の使い方を知らなかったので、何も起きなかったけど、実は魔法としては発動していたらしい。


 ややこしい事だけど、ちゃんと発動するにはこの世界なりの手順を踏まなきゃいけない。

でも向こう基準では俺の魔法は高精度で発動している。

それをセトちゃんがコンバーター代わりになって石板内に表示しているらしいのだ。


 つまり画面表示系の魔法なら俺はセトちゃんを通じて発言できると言う事。

鑑定みたいな機能もそれの応用らしい。


《三階層下の宝物庫と思しき部屋に隠し階段を検出 マップと統合します》


 目指すは宝物庫か……ま、もう何にもないだろうけど目的は宝じゃない。

何か手掛かりが見つかれば良いけど、まだ初回探索だ。

ハズレでも当然なんだけど、そうなると次の当てがなくなるな。


 霊洞の魔力にも特別変わった感じはしないし、その隠し階段も実は既に調査済みだったりしてな。


《隠し階段の扉は魔力的な封印が施されており解除キーの存在が予測されます》


 うわ、そう簡単にはいかないか、でもコレで未発見の隠し階段だと言う可能性が上がった。

ネットにそんな情報なかったしな。


「まれな、ここに来た事は?」


「残念ながら」


 まれなは肩を竦め首を横に振る。

まあ、だったら最初に何か言ってるか。


「でも、ここの霊洞は不思議な事が起こるって噂なら聞いた事あるわ」


 噂?そんな話はアッちゃんからも聞いてないな。


「探索者間の与太話の類よ、何でもぼんやりと光る社があって、そこの御供物を食べると魔物になるんですって」


 何だその胡散臭い話は。


「だから食料が無くなっても拾い食いなんかするなよって……何よその目」


「いや、胡散臭い話だなあと」


「私だってそう思うわよ、だから単なる与太話って言ったでしょ」


 いや拾い食いって……て待てよ?食べる……。


黄泉戸喫よもつへぐいか!」


「何よそれ、なんか知ってるの?」


 ん、この世界ではその神話がないのか、それともまれなが知らないだけか。


「まれな、黄泉の国は知ってるよな」


「霊洞がまだ死後の世界と思われていた時の呼び名でしょ?それが何」


 そうか、ちょっと齟齬があるな。


伊邪那美命いざなみのみことはどうだ?」


「どうって、何がよ。名前だけなら聞いた事あるかもだけど」


 ほう、学院に来るほどのエリートがその程度の知識しかない筈が無い。

コレは何かありそうだぞ。



何とか連続一ヶ月間投稿を達成しました。

今まで応援ありがとうございました。

まあ別にまだ終わりませんが。


コレからも頑張って書いていきます。

今回も読んでくださってありがとうございます。

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