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実家に帰ります(帰るとは言ってない)

さて、そうは言っても先立つものは必要だ。

実家の仕送りだけでは少々物足りない。駅前霊洞の売却金は結構な額なんだろうけど、入学金や授業料などいくら掛かるか分からないので、俺自身そんなには貰っていないけど、それでも月に数万円ほどは仕送りをして貰っている。


 特に魔法書には高値がついた様だった。

魔法書はそれを読む事によって魔法を覚えられる書のことだけど、普通に勉強したら数年かかる様な魔法でも、魔法書を読めば一瞬で覚えられる上に、適性を無視して高い効果を得られる。

ただし一度その魔法書魔法を覚えたら、その魔法書は消えて無くなる。

粒子化とかで無く消えるのだ。要はつかい切り品だ。


 それでも、魔法を覚える際には魔導呪言語による詠唱をまず覚えなければならない。

それをなん度か復唱していると、頭の中で何かが繋がる感じがして体内の魔力が熱を持つ感覚が出る。

それが出れば、その魔法に適性があるという事になるので、後はひたすらに詠唱を唱えたり、ステータスを上げる。

これが基本になる。


 魔法書はそれを全て無視できる。もちろん魔法の素養だけは必要だけど。

あの苦しみをパスして魔法を覚えられるとなればそりゃあ高音もつくだろう。


 そして今俺はその魔法書を持っている。

学院内の霊洞でこれほど高価なものが出るとはな。

学院内での売買にはデバイスが必須な為、その記録は学院側にはバレバレだ。

別に魔法書を売ってはダメとは言われてないので気にする事もないんだけど、俺がこの魔法を使える事がバレるのは頂けない。


 この魔法書、光の槍(ライトジャベリン)は中位ランクの魔法になる。

当然俺にはしばらく無理だ。

なのでここで俺は屁理屈を使う事にした。


 この魔法書を手にした瞬間もう俺はこの魔法を使えるのと同じなのだから、難しい勉強しなくてもいいよね?セトちゃんに登録して一発呼び出しみたいな事してもズルにはならないよね?


 と言う論法だ。

一度セトちゃんの食わせてコピーする手もあるけど、MPが圧倒的に足りない。

毎日霊洞行って一年はかかりそうなので断念。


 そして今ミッカド商会の前に立った……所でヤツの気配。


「やっぱりここに来たわね玻琉綺!」


 まれなちゃんだ。


「稲城さん……何故ここに」


 他の人に紛れて気付くのが遅れた、不覚。


「貴方ねえ、こんな書き置きでどっか行こうなんて本気?」


   『実家に帰ります』


「何の問題が?文字通り帰省するだけだ」


 他に捉えようがないだろ。


「あのねえ、コレじゃまるで学校辞めて家に帰るみたいじゃない」


「それは飛躍し過ぎだろ」


「そうかもだけど、玻琉綺ってば最近思い詰めてる感じしたし……」


 むう、思いがけず心配をかけてしまっていたか。

それについてはすまなかったと思うけど、何故ここがバレた?


「そうか、それは悪かった。でもよくここにいるって分かったな」


「玻琉綺がお金持ってないのは知ってるからね、前にミッカド商会しか行った事ないって言ってたし、ここで両替してもらわないと何処にも行けないだろうと思ってさ」


 まれなちゃんは俺を実家まで送ると言い出した。ついでに事件のあった霊洞とか見てみたいとか、随分とマニアックなミーハーだな。


「実家に帰ると言ったけど、あれは嘘だ。実は行きたい霊洞があって……」


「なら決まりね、早速行きましょう」


 決断が早い。なにこの子、ついてくる気?


「俺は一人で行くつもりで書き置きを残したんだけど?」


「いくら玻琉綺でも一人じゃ危険よ、それにどうやって入るつもりよ」


「監視員のいない隙にコッソリと……」


 霊洞に勝手に入る事自体は別に違法ではない。俺の場合監視カメラを偽装しちゃうのが違法なだけだ。そうで無くては俺はすでに違法者だ。

けれど、当然推奨される行為ではない。


 バレずに入りたかったのは、単に学院に知られて処罰されるのとかが嫌だったし、家族に知られると怒られるからだ。


「そんな事だと思ったわ」


 他の手段が無かったからな。


「何処まで行くつもりだったのよ?」


「出雲県の比良坂霊洞に行く」


 現在の日本は藩ではなく県ではあるのだけど、県の名前がだいぶ違う。

と言うか出雲藩なんて無かったよな?

出雲の国とかは聞いた事あるけど、なんか入り乱れてるんだよな。

東京はそのままだけど昔は東倭あずまやまとだったらしいし、神奈川は神流倭かながわだし、今居る学院は信濃県だ。


「また遠いわね、いいわ」


 おもむろに電話をかけ出すまれなちゃん。


「今すぐ学院に迎えを寄越して、出雲へ飛ぶわ」


 タクシー感覚で迎えの車と出雲行きのヘリを呼び出すまれなさん。

やっぱりこの子怖い。

まあ、せっかくだからお世話になろう。


 まれなさんは何と霊洞資格を持っていた。

親が現役時代に保護帯同して五年ほど霊洞探索を経験したそうだ。

元は武術の稽古の一環として、ステータスアップ目的だった様で、探索と言うよりも討伐隊に近い事をしていた様だ、小学生の頃から。


 さらにその際、霊洞動画をエクスプロールチューブに投稿して人気を博した模様。

エクスプロールチューブとは探索専門動画サイトの事で、霊洞とネット網を同じくチューブに見立てて付けた名称らしい。

 

 動画配信者だからこその知名度の様で、小学生の大会優勝ぐらいでは名前など売れない、と、自嘲気味に呟いたまれなさんが印象的だった。


 まあ何と言うか、探索者資格は試験を受けるルートさえ確保してしまえば、年齢はあまりうるさく言わないそうだ。

そしてそういったルートは、ほぼコネのみで普通は出来ないそうだ……ズルい。


「稲城さんが資格を持っていても俺には関係ないのでは?」


 だからと言って、俺に探索許可が出るのかと言うと違うだろう。


「私がソロ探索の申請を送っておくわ、貴方はボーダーとして同行する事にでもしましょう」


 申請をすると取得素材などを事後報告でチェックしてもらえる様だ。


「仕方ない、それが一番角が立たないか」


 まれなさんが同行するのに疑問が無いわけではないが、それほど危険な霊洞だと言う話も無いし、学院の霊洞に毛が生えた様なモンらしいし、単なる調査だし……いや、なんかそう言う問題じゃ無い気がしてきた。


 暗い、ひょっとしたら誰も居ない霊洞で若い男女が二人きり……。

何も無いわけが、ってイヤイヤ。

何もねえよ!あってたまるか。


「今更何だけど、稲城さんは何でついて来ちゃったんだ?」


 今はもう霊洞の入り口前だ。ホントに今更すぎる。


「全く呆れるわね、貴方学院で霊洞探索をしてるでしょ」


 な、何故それを!?


「……何の事でしょう?」


「惚けなくていいわ、一年の上級生徒はみんな知ってるもの」


 上級生徒!

何じゃそれ、貴族とかがいるのは知ってたけどそんなカテゴリーがあったのかよ。


「貴方の話はその中で結構出回ってるのよ、リークする教師もいるしね」


 先生の中にいるんじゃどうしようもないな。

そう考えると魔法書とか売らなくて正解だったかもしれない。

今までとは比較にならないレベルで付き纏われそうだ。


「なるほど、なら隠す必要も無いか。で、だったら何だっての?」


「正直に言うとね、私は鈴よ」


 鈴……ね。俺の動向を監視したい誰かがいるって事か。

で、まれなさんがその役に任じられたと、上級生徒も大変だね。

でも何で正直に言っちゃうかな?内緒にしておいて単に俺に恩でも売っておけば今後動きやすくなるのに。


「私の家の上には、この国を裏から支配する籐家の頭領がいるの」


 籐家……藤原氏の一族の話か。


「玻琉綺、貴方もその籐家の一族なのよ」

今日の投稿で連続投稿一カ月まであと一日に迫りました。

何とか明日も投稿できる様頑張りますので応援よろしくお願いします。


今回も読んで頂きありがとうございます。

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