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ダンジョンの神様


 前にアッちゃんが言っていた。

この様な変貌を遂げた世界であれば、人格を持った神が生まれているかも知れないと。

以前は神とは物理法則だった。

りんごが木から落ちるのも、光の速度が一定なのも神がそう定めたからだ。


 以前の若干厨二が入っていた俺はそう認識していた。

それが意思を持つと言う事は、まさに全能の神が生まれると言うことに他ならない。


 そう思っていたけど、このカエデから感じる神格の気配。

うっすらとしか感じ取れないけど向こうの神々と呼ばれてた連中と似た様な気配だ。カエデはその眷属と言ったとこかな。


 って事は、人格を持った神と言うのは日本で言うと八百万やおよろずの神みたいな感じか。

他国で言えばギリシャ神話や北欧神話なんかの神々が当てはまりそうだ。

唯一神みたいなのは生まれて無いかも知れない。


「この度は御無礼を御海容頂き、深く感謝致します」


 固いなあ、そりゃ確かに神の眷属的なカエデから見れば俺の存在は特別に感じるのかも知れないけどさ。


「固っ苦しい話方は俺も困るから、なるべく普通に話してもらえるか?出来るだけで構わないからさ」


 俺は自分を、この世界での神に等しい存在だなんて思ってはいないけど、俺の力の影響で世界の変容が行われた以上、その神々ですら俺の子の様な存在とは言えるかも知れない。


 その神々の存在が現状のファンタジー化した世界を形作っているのだとしたら、霊洞とかのダンジョンはその神々の造り上げたモノなのだろう。


「……はい、努力致します」


 まあいいや。あんまり固っ苦しい言葉遣いだと、たまに意味の分かんない単語とか出てくる時あるし……さっき言ってた御海容とか聞いた事ないんだけど。

そう言う単語が出ない程度に砕けてくれれば。


「それで?剣ヶ峰になんか勘違いされてまで君をここに呼んだわけだけど……正直俺の方には特に話は無い。そっちは何かある様だけど?」


 何か念話のような波動を感じた。ハッキリと言葉として認識できたわけじゃ無いけど、“話を聞いて欲しい”的な事を言ってそうな気がした。


「はい、実を申しますとわら……私めには貴方様がいと尊きお方だとしか認識できておりません、もしや御中主神みなかぬしのかみでいらっしゃれるのでしょうか。」


 誰だそれ、凄く偉い神様か?


「はは、別にそんな大層なもんじゃないよ。もちろん只者じゃ無いのは認めるけどさ」


「では、藤堂殿とお呼びして問題はないでしょうか」


「何も問題なんかない、むしろ剣ヶ峰が怪しむから普通の人間に接するようにしてくれた方がありがたいくらいだし、一人称も妾でいいよ」


「では、改めて藤堂殿にお願いの儀がありまする」


 ……普通の人間扱いってのはそんなに難しい?

剣ヶ峰と同じような感覚で話してくれてもいいんだけどな、出来ないならもうしょうがないけど。


「妾の主はショウマですが、それとは別に主神となるお方がおります。名を緋奈津比売神子ひなつひめのみこと申します」


「カエデはそのヒナツヒメの眷属なのか」


「畏れ多くも、その様なモノと存じて頂けると……」


「そのヒメがどうしたんだ?ハッキリ言ってくれ、あまり長話になると剣ヶ峰がまた怒るぞ」


 先程は愚図るガミをリカとホロで宥めて、今は外で待機中だ。


「は、では端的に言いますと、緋奈津比売を助けて頂きたいのです」


 助けるとはまた抽象的な話だな、誰かに害されているのか、単に何か困っている事があるのか。


「緋奈津比売は日の本の産霊神むすひのかみの一柱で御座いますが、主に黄泉洞道よもつほらみち、霊洞と呼ばれるモノの創生に係わる比売神子ひめのみこで御座います」


 俺の知らない日本神話だな。何だよ黄泉洞道って、黄泉比良坂なら知ってるけどさ。


「その緋奈津比売を攫った者がいるのです」


 神様攫うって凄えな。何者なにもんだよ、なーんか最近のイレギュラー霊洞に関係してそう。


「その者は自分を異世界からの帰還者だと申しておりました」


「ふぇえ!異世界!?帰還者だって!?」


 ヤベえ変な声出た。

何だそれ、俺以外にもそんなのいたの?

え?じゃあこの世界って俺だけの所為じゃなくソイツも何か関係してたりするのか?

え?でもアッちゃんは……


『落ち着けハルキ、この世界だ、その様な者がいても不思議ではないだろう』


『お、おう?そうか……んー……つまりこの世界は昔からこうだった事になってるから、そうである世界なら異世界に行って戻ってくる奴も居たって良いじゃないかって事か?』


『そう捉えてよかろう』


 うーん、鶏が先か卵が先かって事か?ちょっと違うか。


「……そうか、異世界ねえ。何でそいつはそのヒメを攫ったんだ?霊洞を使って何がしたいんだ?」


「詳しいことは妾にも分かりませぬ。其奴は多くを語りはしなかった故……ただ、神を殺すと」


 なるほどな、多分ガミはそのヒメを助ける為の力が欲しくて焦って強くなりたがってたのか。

でも、ならば何故今カエデは俺に助けを求めるんだ?

頑張ってガミや他の従魔と一緒にヒメを取り返せば良いじゃん。


「何か急ぐ理由でもあるのか?」


「最近になって霊洞の出現が活発になっております。霊洞の創出には緋奈津比売の神力を大いに消費します……この頻度で霊洞が造り続けられれば緋奈津比売の命、存在そのものが失われてしまいかねませぬ」


 そうか、霊洞の神様がいなくなっちゃうのは確かに不味いな。

世界は霊洞に資源や技術を依存しているからな、ガソリンとか石油ってあんまり聞かないし、日本のエネルギー事情にも凄い影響が出そうだ。


「話は分かったけど、俺はどうすれば良いの?そのヒメはどこに攫われたの?」


 俺は存在が特殊なだけで、全知全能ではない。

ヒメを助けるにしてもどこに行って何をすれば良いのか、取り戻せば良いのか、異世界帰りを……殺せば良いのか。


「何も……何も分からないのです。手掛かりも御座いません、それ故にどうか御助力を賜りたいのです。霊洞の神子ですので、様々な霊洞を調べ尽くすしか手は思い浮かばないのです」


 ノーヒントか、まあ霊洞探索が手段だと言うなら特に俺に不都合はないか。

でもそうなると学院だけじゃなく、外の霊洞とかそのイレギュラー霊洞を探索するのが良いんじゃ……そういや手元に二つほどそのイレギュラー関係のものがあるな。


「よし分かった、協力しよう。霊洞のヒメが居なくなるのは不味いしな」


 それにある意味俺の娘みたいな存在になるのかな?

話を聞いてるうちに何だかそのヒメが非常に気になり出した。

何とか助けてやりたいなぁと言う気持ちにはなってきたな。


「その様なお言葉を頂き、誠に有難く存じます。藤堂殿に深い感謝を捧げます」


 固いなあ、あんまり有難がられるもんでもないだよなあ俺は。

何せ、“爽やか青春物語”を送りたくてこの世界に帰ってきちゃった中身バケモンの迷惑野郎だ。


 俺が帰って来なけりゃそもそもこんな事態は存在すらしてない。

でも帰って来ちゃったからなあ。

まあせめて関わった人らの問題解決に協力するのはせめてもの償いって事で自分の心を慰めよう。


 取り敢えずは一応の心当たりであるバクレイオンとシャスティフォルを細かく解析してみるか。

頼むよセトちゃん。

 

取り敢えずの目標である話に向けてやっと進みました。

今後はちょっと考えながら話作りをしないといけないので更新ペースが落ちるかもしれませんが

応援よろしくお願いします。


今回も読んで頂きありがとうございます。

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