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お嬢って呼ばれてるんだ


 初めての擬似訓練から数日、初の全休土日だ。

この数日間も忙しかった……総代は基本的には挑戦を断れない。

あまり非常識な挑戦……夜とか連戦とかそう言うのはデバイスを通じて挑戦不可にされる。


 それにこちらにも都合と言うものがある。

毎週土曜は誰の挑戦でも受けて立つ、だが日曜はダメだ。日曜ぐらい思いっきり休みたい。

それもデバイスを通じて布告してもらった。


 まあ平日にも挑戦者はやってくる。

俺は霊洞探索に勤しまないといけないのでそんなに暇じゃない。

そもそもそのためにあんな課題を受けたんだ、その結果総代になって挑戦者相手で霊洞に行けないなどと本末転倒過ぎる。


 なので授業が終わると同時に逃げる様に下校する。

問題なのは校内で殴りかかってくる奴だ。普通は擬似訓練場で挑戦を受ける。

怪我人など出したくはないからな。


 先生がそんな奴も居るかもと示唆していたけど、別に学院側でも認めている訳ではないので、普通に校内暴力案件で処罰される。

にも関わらず二人ほどいた。もちろん相手にせずに全て躱して、触れさせる事もなく生徒会だか風紀委員だかに取り押さえられる。


 そんな訳で全休なのに休めない土曜を二十五人抜きして待望の日曜日がやってきたのだ。


「お待たせー玻琉綺!」


 何故か俺は稲城さんと待ち合わせをしていた。

そして当たり前の様に名前呼び……コレが本物のコミュ強というヤツか。


「……普通に15分待ったんだが?」


「もー、そこは“俺も今来たとこ”って言うのがお約束でしょうに」


「そんな約束はしていない、俺がしたのは君の武器を見繕うと言うとこまでだ」


 そう、あの擬似戦闘後につい老婆心で『霊洞では薙刀よりも槍の方が使い勝手が良いぞ』などと言ってしまい、“じゃあ選んでよ”となり、“日曜の朝9時に待ち合わせね”となって、今は学院の正門前だ……俺はいいとは言ってない。


 俺はただ個人戦向きの薙刀よりも槍の方がチームを組んだ際に使いやすいのでは?って言いたかっただけで、そんなに武器の見立てに自信がある訳ではない。


 そんな事よりヨミやナルにジト目で“えーハル何?デート〜”などと言う冷やかしを受けてしまった。

なんて事をしてくれるんだ全く、変な誤解をされてしまうじゃないか。

オマケに男連中からの嫉妬も受けてそうだ。


「もう、玻琉綺はしょうがないなあ、そんなんじゃあモテないよ」


 う、モテないだと……別にいいしとか強がってみたとしてもやはりダメージのデカい言葉だ。


「大きなお世話だ、それよりどこにいくんだ?俺はミッカド商会しか行った事ない」


 店って大体10時くらいから開くもんじゃないのか?まだちょっと早い気もする、まあやってるとこがあっても別に不思議じゃないけど。


「こっちよ」


 そう言うので着いて行ったら、何やら人気のない場所に向かっていそうだ。


「どこ行くんだ、こっちは店なんかないだろ」


「もう着くわ、あそこよ」


 見ると何もない広場……空き地か?まあそんな場所がある。

店などは見当たらない。コイツ、こんな誰もいない空き地で何する気だ?

まさか俺に対戦を挑む気じゃないだろうな、ヴァーチャルなんて本当の勝負じゃ無いとか何とか言って。


「まだ早かったかなー」


 こんなとこで早いも遅いもあるものか。

一体何をする気だ……。


「なあ、こんな所でどうするんだ、武器を見に行くんじゃなかったのか?」


 バババババババと、ヘリが轟音を立てて降りてくる。

ヘリが飛んでいたのは音で気付いていたけどまさか降りてくるとは。

まさかとは思うが、稲城さん……。


「武器なら見てもらうわ、家から持ってきてもらった武器をね」


 え!家から?ヘリで?


「店で買うんじゃ……」


「買うなんて言ってないわ、選んでよとは言ったけど」


 確かにそう言ってたけど、だからってこんな……輸送ヘリって個人で持つものなの?

そうこうしているうちにヘリが降りてきてパイロットがこちらに来る。


「お嬢、頼まれた物持ってきやしたぜ」


 いかにも武闘派なお兄さんがにこやかに声を掛けてくる。

お嬢て……稲城さんって一体……稲城派って言ってたから道場かなんかだと思ってたけど。


「お、坊主、お前が藤堂か。名前は聞いた事あるぜ、中坊ん時霊洞クリアした奴だよな」


「は、はあ……まあそうです。えー、初めまして藤堂玻琉綺と言います」


 一応は挨拶はしておこう。


「おう、オレァ斑鳩いかるが 勇治ゆうじ、よろしくな」


 結構気さくな人だ。見た目はかなりの強面こわもてだけど、やっぱり人間見た目じゃ無いよな、うん。

挨拶してる間にクルーの人達が武器を並び終えたいた。


「さあ玻琉綺、貴方がいいと思う武器は何?槍でもいいけど私は剣術も得意よ」


 剣術も、か。

確かに戦術の組み立てが剣術っぽかった。

最後の一撃などは唐竹割りではなく袈裟斬りにすべきであっただろう。

そちらの方が遠心力も強く使えたはずだし、防がれた後の切り返しも容易だったはず。


 本当は剣術の方が得意なのかもしれない。

薙刀であれほど刃筋を立てられるのならそれも頷ける。


「剣か、見た所稲城さんはスピード型じゃ無いしね、日本刀とかは似合いそうだけど、向いているのは……コレかな」


 一本のブロードソードの様な剣を取る。

柄部分にナックルガードと親指を引っ掛けるサムリングが付いている。

全長80〜90センチほどの剣だ。

結構肉厚な割にそれほど重くも無い。


「薙刀を使っていたとこを見るとひょっとしてソロでも考えてるのかも知れないけど、もしチームを組むなら周りの事も考えないとね」


「ほう、ワルーンソードか……渋いチョイスだな。しかもミスリル炭素鋼製の武器を一瞬で見抜くとはな」


 ミスリル炭素鋼?そんな素材があるのか、ミスリルって軽いのか……そう言えばこないだ手にした白哪吒の真銀ってのが見た目より軽かったけど、あんな感じか?


 取り回しの良さそうな形状だから選んだのであって素材を見抜いた訳では無いけど、なんかお高そう。

でも、あんまり軽いと重量が乗らない分威力は落ちるんだけどなあ。


「その素材の事は知りませんけど、この形状の剣なら稲城さんの技巧を存分に活かせると思います。ただ重量がどうでしょうかね、薙刀よりも遠心力を活かせない分もう少し重さも欲しいとこですけど」


「それは問題無い、ミスリル系は質量があるのに重さが軽くなるからな」


 どう言う理屈で?

まあファンタジー世界になってしまったのだから深くは考えるまい、そう言うもんだと理解しておこう。


「ふーん、なるほどねえ……玻琉綺はこの前槍の方がいいって言ったじゃない?何かいい槍はある?」


 む、お気に召さなかったか。槍ねえ……えーっと。


「コレは良いんじゃないか?」


 俺が選んだのは黒檀の様な黒い長柄の先に菱十字の様な形の刃がついた物だ。

突いた際に深く刺さり過ぎて抜けなくなる事を防げるし、薙刀の様に斬撃も出来るものだ。


「なるほど、玻琉綺はこう言うのが趣味なのね」


「別に俺の趣味では……」


「わかったわ、斑鳩。玻琉綺の選んだ剣と槍をもらうわ」


「了解だお嬢、おやっさんも喜ぶぜ」


 何で?何で親父さんが喜ぶと言うのか。

そんな疑問を持った俺に稲城さんは答える。


「この槍はご先祖様が鵺退治で勇名を馳せた物なの。銘は鶫落つぐみおとし」


 そんな逸話付きの伝家の宝槍を持ってくんなよ。


「そしてこの剣は父が霊洞から持ち帰った素材を使って打った物で私の入学祝いで貰ったんだけど家に置いてきたの」


 何でだよ、それは持ってこいよ。


 “どっちもダサくて使う気無かったんだけどね”とは何て言い草だ。


 ご先祖様とお父さんに謝れ。

今日は仕事が忙しくて疲れましたが、何とか投稿出来ました。

相変わらずモタモタと話が進みませんが、どうしても余計なこと書いちゃいます。

こんなんですがどうぞ今後もよろしくお願いします。


今回も読んで頂きありがとうございます。

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