フルダイブVRMMO!
「まず皆に知らせる事がある」
挨拶もそこそこに長良先生が珍しく声を張り上げる。
「藤堂、前に出て来なさい」
そして呼び出され、教壇まで行く俺
「本日、学院生徒会及び指導部教員会より辞令が下った。藤堂 玻琉綺、君を霊征学院一年の生徒総代とする。なお辞退は許されない」
おおおお、何て事だ……俺が貴族とかエリートが集まるこの学院の一年の総代……ってのが何やるのか分からないけど代表的な何かだろう事は分かる。
面倒臭えええ、俺は夏休み中には終わらせなければいけない仕事がある。
何をやる役職なのか具体的に見えてこないが、今後色々と不自由になりそうだ。
「先生質問があります、なぜ俺が選ばれたのでしょうか?」
俺が選ばれる要素など検討がつかない、唯一あるとすれば、霊洞探索課題……えーと、威徳霊征五条覇だっけか、あれを合格したって事ぐらいだけど、それで生徒代表はおかしい。
もっとカリスマとか、リーダーシップとか、人望とか成績優秀とか容姿端麗とか……なんかそう言う人がやるべきポジションのはず。
「簡単に言えば藤堂の実力が現段階で一番だと会議で認定された」
実力って、探索実績とかで判断したのか?そりゃみんなまだ霊洞に潜ってないんだからそうかもしれないけど、そんなのみんなが同じ土俵に立ってからじゃなけりゃ判断出来ないだろ。
あまりに早計だと指摘したい。
「俺に……何をしろと?」
「藤堂が何かをする必要はない。何かをするのは他の者たちだ」
……どう言う事なの、俺は何をされるの?
「本学院は、特に探索科は実力主義だ。学業も素行も大事だがこの学院は探索者を育成する事を本分としている。その為ならば何もかもが許される。死にさえしなければな」
出たな、それ前も聞いたわ。だからそれで俺が何をされるかなんだよ。
「これより藤堂は探索科一年の目標となる。藤堂に勝ったものは加点され、逆に藤堂は負ければ減点だ。これは成績に反映される点となる」
勝った負けたって……俺は勝負を挑まれるって事か?何の勝負だ。
「基本的には今日から始まる擬似訓練における擬似戦闘がその手段となる。まあ血気に早った者が何をするかは分からないがな」
何だその校内暴力を認めるかの様な発言は、あんた本当に教育者か。
ついにこの学院本性を表してきたな。全国トップの学校にしちゃ授業が優しいなとは思ってた。
今までのはオリエンテーリングって事か。
「俺には何かメリットなどは無いのですか」
「お前が総代である。と言うメリットがある」
いやその理屈はおかしい。挑まれ続けて負けたら減点などと言う役職に魅力なんかない。
「今日は一日使った擬似訓練の授業だ。このクラスの者も存分に藤堂に挑むといい」
やーめーてーよー、せっかく仲良くなったクラスメイトもいるのにギスギスしちゃうじゃん。
何で俺だけ常在戦場みたいになってんのさ。
先輩の笑顔は絶対何かあると思ったけどこれは流石に予想外。
って言うかさー、対人戦鍛えて一流の探索者ってなれるもんなの?
ただの人類最強が出来上がるだけじゃん、探索ってのはもっとこう、自由で……
「そして、これは来年度進級時のクラス分け希望に直結する。討伐科、攻略科、探掘科だ。討伐科志望の者は尚のこと擬似戦闘においての成績が重視される。進路を見据えて気を引き締める事だ」
ホームルームが終わる。クラスが一瞬静まり返るがすぐに騒がしくなる。
「おい藤堂、お前大変な事になったな」
「タツ……参ったよ、何だかヤバい予感しかしない」
「あー、その予感は大当たりだね」
ヨミの言う通り何人かの鋭い視線を感じる。特にガミの。
そんなに俺を倒したいか、じゃあやられる訳にはいかんな。精々俺を鍛錬の道具に使うがいいさ。
擬似訓練を行うヴァーチャルルームは五つ、今日一年生は全クラス一日使った擬似訓練だ。
つまり一部屋ニクラス、10組は9組と合同だ。
この前見かけた稲城 まれなさんがいるクラスだ。
「鳴瀬さん、身体は平気だったんだ」
「う、うん……一応、お医者さんからは……大丈夫、だって」
ヨミと鳴瀬さんが話している。
よかった、ちゃんと薬は効いた様だな。ただあの薬、鳴瀬さんの魔力が強すぎて半月ほどしか効きそうにない。
また飴ちゃん渡さないとな。
これから始まる擬似訓練だが、前にやったステータス測定が反映されるゲームに近い訓練だ。
これから実際にやれば分かるのだろうけど、訓練として実際に身につくレベルのクオリティーなのだろうか。
まあ楽しみなのは間違いない、授業でゲームが出来るなど普通はないからな。
「では、支給された魔石を持ってそれぞれの席に着け。これより擬似訓練を始める」
寺井先生の号令がかかる。
みんな一斉に私語をやめ寺井先生に注目する。
「その魔石は各々個人用に調整されている。無くさない様に、それは擬似訓練において君たちの分身だ。」
机にはモニターも何もなくただ窪みがあるだけだった。
形的にこの窪みに魔石とかを置きそうだな。みんなも気づいているのか、既に置いている気の早いやつもいる。
「見れば分かると思うが、机には魔石とデバイスの置き場がある。それぞれをそこに置きなさい」
言われるままに魔石とデバイスをセットする。
「では始める前にもう一言。君らはこれから擬似的な霊洞に入る事になる。あくまで擬似的な物なので君らの体はここに残り、眠っているのと同じ状態になる。その間君らは薄い結界に包まれ、外部からその結界に触れると擬似空間から引き戻される。こちらではデバイスを通してモニタリングを行なっているので、危険と判断したら中断させるので承知しておく様に」
長い一言の後、視界が一転。違和感はあるものの霊洞にいると感じさせるには十分な空間が広がっていた。
なるほどこれは凄い。今こんな技術が……これで本当にゲームだったらいいのに。
「これから一時間、慣らしのために無敵モードにする。死亡リタイアも痛みもないから自由に行動してみろ、魔物も出るぞ」
おお、アがる!よーしちょっとはじけちゃうかな。
いや、凄いなみんな。
俺もテンション上がってるけど、それ以上だわ。
結構この授業目当てで学校選んだのも多いんだろうな。
死なず、痛みを感じずって、不死のバーサーカーの軍勢だろ。怖すぎるわ。
初めのうちこそ生身との違いにぎこちなかった動きも、さすがはエリートすぐに自然に動ける様になっていた。
「おりゃあー、藤堂くらええい!」
「何だよタツ、張り切り過ぎだろ」
慣れたと思った途端にタツが踊りかかってくる。
獲物は今日は長物だ。無敵モード中は、標準装備であれば瞬時に武装を切り替えられる。
俺も盾を出して軌道を逸らし、肉薄した所を本気の一撃。
……10mは飛んだだろうか。ヤベえ、やりすぎたか。
10m先でタツがむくりと起き上がる。
「うおお、痛くねえけど気分的に痛え。やっぱ藤堂強えよ、タンクとかもったいねえ」
「タンクは重要だぞ、特に鳴瀬さんみたいな魔法職DPSには必要だ」
「鳴瀬かあ、何お前鳴瀬の事好きなの?」
え、今聞くのそれ。
「ああ、好きだよ。優しいし」
「何々、じゃあ付き合いたいとか?」
なんて事を、鳴瀬さんが俺なんかと付き合う訳ない。どう考えても釣り合わない。……と言うか、そう言えば俺あんまり考えた事なかったけど、恋人欲しいとか思わなかったな、何でだろ。
思春期真っ只中のはずだよな、青春とは恋愛の事じゃなかったか?
全部じゃなくても切り離せない要素だろ。何故かその衝動は薄い。
「いやお前、何で今?」
こんな時にする雑談の内容じゃないだろ。
「いや、お前これから忙しいと思ってな。ホラ」
「くおおおるあああ!藤堂死ねやあああ!」
凄い形相で牧浦君が襲いかかってくる。いや死なないけどね無敵モードだし。
けれども確かに武器の殺意は高い。大きめのダガー二刀流だ、そんなのも標準かよ。
何だろう、俺彼に何かしたかな?覚えがない。
まあ普通に隙だらけなので、半身で交わして掌底をぶち込み15mほどぶっ飛ばした。
さっきタツにかましたのは本気じゃなかったか。
「いくぞ藤堂!」 「くらえ藤堂 玻琉綺!」
ガミとサジが同時に飛び込んでくる。
手にはどちらもロングソードだ、お前ら以外に気が合うのか?
俺もタツと同じく棒術で使う様な棍棒を出し、二人の剣を避け様に薙ぎ払う。
剣は横からの衝撃に弱いからな。
「なっ!」 「ぬお!」
剣は二つとも折れた。ただ手応えが折れる程のものじゃなかった。
この辺は要改良ってとこなのかな。
しかしこの二人も随分だな、魔物倒してろよ。
それに無痛、不死にかこつけて襲ってくるんだったら、大味な特攻なんてしてないでもうちょい考えればいいのに。
「お返しだ」
2人の胴を絡め、巻き込む様にして吹き飛ばす。
《棒術スキル かかり返しを発動、修得しました》
なんか発動した。
2人は20mほど吹き飛んでいった。
今さら解説
正式名称が日本で霊洞になっているのは、古事記などに記載された霊道に通じるとして最初は霊穴と呼ばれたが、時代とともに、黄泉の国に繋がっているわけでは無いと世間に広がり、内部が洞窟の様なものが多いため霊洞と呼ばれた。
他国では多くダンジョンと呼ばれ、これは元々は地下牢の意だが、最奥の主をそこに捕えていると見做してそうよばれることになった。
また魔物とは霊洞に出る魔石を核とした魔法生物の事で、モンスターとも呼ばれるが、日本では生物のうち脅威度の高いものをモンスターと呼ぶと定義されている。モンスターはあくまで怪物という生き物である。
と、いった様に作中で出そうにない設定をたまにここで紹介します。
今回もまた読んで頂きありがとうございます。
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