まだ入学して半月経ってないんだなあ
ここは学院でも一部の者しか入れない部屋だ。いや、部屋と言うよりは大会議場の方が近いか。
デバイスアグリゲーションルーム。学院の全デバイスを集中管理している場所だ。
現在一人の新入生が威徳霊征五条覇に挑んでいる。
平安の世より永き歴史を持つこの学院でも異例の事態だ。
そもそもこれは儀式であって試験ではない、元は五人の勇士がそれぞれの道で偉業をなし、霊征の名を世に知らしめた事を言祝ぐ神事なのだ。
五人の勇士は神格化され、八百万の一柱に列席している。
今では形骸化し名のみが一人歩きしてこの様な学院行事の一つに成り下がった。
それでも進級や卒業のための試練という事で、どうにかその威厳を保たせていたが、今回のコレは余りにも神事であった威徳霊征五条覇を軽く扱いすぎだ。
だが……もはやそれは瑣事となった。
その生徒はあろう事か初日に爬竜霊洞を踏破したばかりか、緋禽霊洞に至獅霊洞、さらには塵獸霊洞まで踏破した。
全て一日でだ。
残るは白瑞霊洞のみ……別に駄目なわけではない。
むしろその様な若者が出て来たことは驚きと共に喜ばしい事でもある。
だが、異常でもある。
まさかとは思うがあの方がお探しになっていた者……なのではないだろうか。
一言報告を入れるべきであろうか、余計な手出しであろうか。
どちらにせよ彼の者には監視が必要か。
それともそれすら余計か……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ハアハア、全く疲れる。コイツの体力は無尽蔵かよ。
何とかコイツで最後ってとこまで来たんだ、ここで失敗したら目も当てられない。
今俺の前には人面で獣の様な身体にそこらじゅうに大量の目のついたキモい魔物がいる。
人面部分にも目が九個ある、人面扱いしたくない。
身体も獣と言うかずんぐりした体躯でまるで人肌の様に、いや出荷される鶏肉の様に毛はなく手脚は短い、キモい。
最初のドラゴンもどきを倒した後、次の日にそう言えばMPで怪我治せたなと思いボス素材以外をMP変換して25を捻り出し、怪我を完治させた。
同じ治癒手段じゃなければ過回復的な事は起こらないみたいだ。
でもあの場で全快させたらモニターしてる先生に驚かれただろうし、思い出したの次の日で良かった。
いやホント助かる。一応みんなには内緒だからな、特例って話だったし。
またズルしてる。
まあ入学手段からしてズルみたいなもんだし今更だよな。
授業もちゃんと受けて、予復習もやって、せめてそうやって真面目で無口ないい生徒でいよう。
でも眠い、疲れた。
ちなみに予復習はセトちゃんによる睡眠学習だったりする……ズル?
いい訳をさせてもらうとセトちゃんの睡眠学習はスパルタだ。延々と小難しい教科書の内容を脳内で語り続ける。
やめて、まだ寝てないよ?食事中も読書中もシャワー中もお構いなしだ。
……寝れる訳ないだろ。
特に魔導呪言語なんか脳に直接書き込むとか恐ろしい事言い出すし、脳をノートみたいに使うな。
と言ったズルにはズルなりの大変な事があるのだ。
『カンニングの準備だって大変なのだ、みたいな言い訳はやめておけ』
『うるさいよ、早く魔法使える様にならなくちゃいけないし使えるものを使ってるだけだよ』
『うーむ、言ってる事が大分違うが?』
などと楽しい学院生活を送る一方で、放課後は霊洞踏破クエに勤しむ。
入学早々ずっと忙しい。俺何でこんな生き急いでるんだろ。
なんか想像してた高校生活と違うなあ。
という事がありました。
で、今な訳だけど……コイツがめちゃくちゃタフ。
白面哪吒という名だが何が白面だ、百目んだろ。
と突っ込みたくなる。
何せ死角がないし、斬ったそばから回復するし、鳴き声聞いただけで毒喰らうし、殆ど動かないし、幾つかの目からビーム撃ってくるし、何この固定砲台。
多分もう二時間くらい戦ってる。
放課後って何時まで?下校時刻までかな、確か遅くまで部活とかやってる人いるしそれまでは平気だよな。
目算ではあと少しで魔力削り切れそうなんだけど……。
別に俺の目は鑑定眼とかじゃ無いが、感覚というか何と言うか、とにかく相手の魔力の流れみたいなのが見える、と言うよりも分かると言った方がいいか。
だから白面哪吒の魔力が尽きかけて来ているのが分かる。
もう一息だろうか。
こちらもビーム五発くらいもらってるし、装備ボロボロ。
直すMP高いんだから勘弁してほしい。
怪我は角杯で何とかなってる。回復45%まで強化したし、解毒、脱麻痺もつけたし、名前が変わって《暁天の角杯》とか言う長ったらしい名前になって☆4になった。MPほぼ全部使った……最近随分お世話になったから。
その分武器の強化が疎かにになってこのざまだ。
もう暁天の角杯で鳴瀬さん治せるんじゃ無い?とか思ったらアッちゃんに『種類が違う』とか言われた。
ヒョヒョヒョヒョヒュヒュウウウ!
来た、変な鳴き声。
また毒攻撃か?ちょっと厄介なんだよな、すぐ解毒は出来るけど手間が掛かる分だけ攻撃の機会が減ってまた時間がかかる。
そう、こんな事を考えながらも俺は攻撃の手を緩めていない。
ビームを避けながらタイガーで斬り続けている。
一度に全ての目からビームが出る訳じゃ無いから出来る事だ。
でもどうせ……
ヒュヒィイイイイイイイ‼︎
一際高い鳴き声の後全ての目が光り出した。
ホラ来た、全方向総目ビーム。
予期していた俺は盾を構え、受けては流し受けては……あー盾壊れたー!
一発もらってもんどり打つ。くおお、いってええ……
それを最後に白面哪吒は粒子となって消えていく。
お、終わったああ……イタタタ、って腕折れてんじゃん、マジか痛ってええ。
つ、角杯先輩たのんます……ふう、凄えな45パー、痛みが殆どないったあ!
うっかり普通に触ってしまった。
骨はくっついてないんだから、そりゃ痛いよな。
《白面哪吒一体の討伐》
《白面魔眼・白角・白哪吒の真銀・白面哪吒の肉・毒素共鳴腔・白石・魔石を取得》
《経験点250 MP30を取得しました》
お、今までで一番MPが高いな。
なんか素材とかも今までと趣きが違う感じだし、ちょっと特殊な魔物だったのかな。
一応ボス素材は学校側に提出する約束になっている。
特別な素材が多いから普通に町売りはやめろと言われた。
なので、最初のフトアゴヒゲ素材を学校側に提出したらかなり驚かれた。
何も考えず全部出してしまったのだ。
普通ドロップ品は多くても三つだ、それが魔石含めて七つもあれば奇跡みたいなもんだ。当然奇跡が起きましたと言い切ったが。
それからはアッちゃんと相談しながら選別して出している。
今回は……肉とかキモいから提出、毒も嫌いなので提出、嫌いなのばかりでは申し訳ないので、凄そうな真銀も提出しよう。
アッちゃんもいいのではないかって言ってるし。
ちゃんと買い取りでビースをくれるから、学校に売ってるみたいだ。
よしコレで許可が下りるだろう。
だとしても明日は流石に霊洞はやめとこう、疲れたよ。
どうせ魔法を何とかしない限り目的の霊洞は難しいだろうしな、何なら別にそこ以外に行く意味も無いしな。
霊洞を出てから骨折を治す。装備修理のMP足りるかな。
そういや明日霊洞実習だ。俺のロールはどうしようか……
まあタンク職でいいか、それなら余計な手出しをする事も少ないだろうし。
……誰か組んでくれるかな。
ソロは認めてもらえないだろうな授業だし。
誰かと組むにしても、嫌々俺と組まされるんだろうな。
申し訳ない気持ちになるが、授業なので仕方がないと割り切ってもらうほかないだろう。
『やっと終わったよ、この五日間大変だったなあ』
『確かに、お疲れ様だったな』
『最初がドラゴンもどきで、次が死んじゃう不死鳥、金ピカのライオンみたいなのに全身鱗のビールのラベルみたいなキメラ、そんで最後はキモい百目……どれもこれも一年の俺が相対していいモンじゃ無い気もするけど』
『ハルキが望んだ事だ、良いではないか倒したのだから』
その倒した事を今更ながら心配してんだよ。
課題をこなしただけと言えばそうなんだけど、毎日報告に行くたび素材に喜びつつも微妙な顔されるし。
『まあそうだね、後は正式に許可貰うだけだし、深く考えるのはよそう』
まだまだ学ぶ事はあるし、学院での事はこれからが本番だ。
生徒指導室で先生に素材を提出し、クリアの旨を伝える。
向こうも把握していた様だけど、何だか緊張感のある空気っぽい。
コレはアレかな?俺の懸念通り、入学したばかりでいきなり卒業試験に合格しちゃったよ教える事ねえじゃんでも入学金はともかく授業料も先払いで貰っちゃってるしどうすっかなあ。みたいな感じだろうか。
どうでもいいけど今日は人が多い、担任の長良先生に学院長、同じ制服の先輩っぽい人が二人。
いつもは長良先生だけなのに。
「まずはおめでとう、藤堂君。君ならやってくれると信じていたよ」
学院長が朗らかに祝辞を述べてくれる。
よかった普通に喜んでくれてる、気のせいか、心配しすぎだったみたいだ。
「ありがとうございます。コレが今回のドロップ品です」
そう言って今回のピックアップ素材を渡す。
「…………」
アレ?反応がない。
「……こ、これって?え、し、真銀?」
白哪吒の真銀って出てたなそう言えば。
普通のインゴットで出てきた。10kgぐらいありそうだったけど持ってみたらそんなになかった。
「そうです、白哪吒の真銀ってやつですね」
よほど高価なものなのだろう、皆言葉が続かない。
どうなんだこれは、肉とか毒とかだけじゃ悪いと思って高そうなのを出したんだけど。
「あ、うん素晴らしい成果だ、君の功績は深く学院史に刻まれるだろう」
そんなに?でも喜んでもらえて何よりか。
「許可証を発行するので、デバイスをこちらに」
そう言って長良先生が手を差し出す。このデバイスに何か入力するのだろう。
デバイスを手に先生は席を外す。
「長良先生もすぐに戻るだろう。それと君に紹介したい生徒がいる」
そこの先輩の事かな、学院長に紹介される生徒って凄い。
その先輩方が自己紹介を始める。学院長がやるんじゃないんだ。
「私は学院の生徒総代を務める三年の兵藤院 将臣だ。藤堂君の偉業を生徒を代表して讃えたいおめでとう」
「ワタシは副総代の三年静香原 桐花よ。おめでとう藤堂君」
兵藤院に静香原……俺でも知ってる有名な貴族家だ、同じ貴族でも悪いけどサジの家とは格が違う。
「これはご丁寧にありがとうございます先輩方」
学院長に生徒の代表、凄い人達に祝われてんな俺。
「今回君が挑戦した威徳霊征五条覇を完全踏破したのは君が初めてだ是非表彰したいのだが、どうだろうか」
「いや、やめて欲しいです。あまり人前に出るのは苦手でして、それに内密の特例なんですよね今回の件って」
「そうかそうか、そうだったな。ふうむ、ではコレを」
白い光沢を放つ何となく上品さを感じるカードだ。
「学院の施設全ての無制限使用が出来るカードだ。更なる君の飛躍を期待する」
え、凄いものを貰った気がするけど、まだ何の施設も使ってないので実感が出ない。
「ありがとうございます、ご期待光栄に思います」
一応社交辞令で応えておこう。
「君には後日辞令がいくと思う、これからよろしく頼むよ」
「よろしくね、期待の新人君」
先輩方は何を言っているのだろう、辞令って何だっけ?
何をよろしくするのかもう少し具体的にこう……。
「まあ、これから君も大変だな。と言う事だよ」
不思議そうな顔をする俺に兵藤院先輩はいい笑顔でそう言った。
はい不吉。
うーん、思った通りに話が進まないです。
モタモタしててすいません。
筆が乗ってくると余計な描写が増えて脇道に逸れる癖があります。
軌道修正しつつ頑張って書いていきますので応援よろしくお願いします。
今日も読んで頂きありがとうございます。
評価をつけて頂いた方にも御礼申し上げます。
大変ありがたいです。励みにして頑張ります。




