ヒゲを剃ってやりたいわ
ちょっと一回隠れますね。
すぐさまにボスの間から顔を引っ込め、会議を始める。
『ねえアッちゃん何アレ、こないだの一角虎よりヤバそうに見えるんだけど』
『そうか?我にはそう見えんが……何か先入観でもあるのではないか?』
『え、そう?いや……そうか?えーアレそーおー?』
いや待て、うんそうだなちょっと冷静になろうか。
……確かに魔圧と言うか、あのドラゴンから感じ取れる魔力は……アレ、成瀬さんの方が強そう。
成瀬さんの魔力は溢れるほどで、実際溢流するほどのものだった。
あのドラゴンは凄い圧で放出はしてるけど、溢れている訳ではない。
パッシヴとアクティブみたいな感じだな。
あの威容に騙された。先入観でドラゴンの脅威を過大に見積もった。
そもそもアレドラゴンか?名前はそうだけどブレスも吐かないし、翼もない、火に弱いし魔法も無い。
俺の知ってるドラゴンは火や毒や溶解液や吹雪のブレスに高速飛行で空から雷落としたり天候を操ったりマグマの中を泳いだりetc……。
ってかフトアゴヒゲってトカゲじゃん。
そういやコッチではコモドドラゴンとか言うでかいトカゲいたわ。
あんだけデカくて魔物なんだから油断して良い相手じゃ無いだろうけど、過剰に警戒をすべきじゃ無いか。
『よしアッちゃん武器の強化と防具の作成をしたい、頼める?』
出来ればアッちゃんチョイスのオススメ品を。前回でアッちゃんのセンスは実証済みだ。
『良いだろう、存分に頼れ。方向性を示せばそれに応えよう』
《今回の所持素材はジャイアントリザード、フライングコンストリクター、クリアトード、アングラゲーター、スプリングシェルの各種 経験点250 MP40を取得済みです》
《事前所持素材も使いますか》
量が多くて省略したな。まあ全部出されても分かりにくいしな。
『そうだな、まず分かりやすい所でカメの盾とワニ皮の鎧かな合わせてMP20で。あと、タイガーファングと癒回な角杯に10づつ強化で』
『ふうむ、ではこの辺か?』
《甲鱗の皮盾:防御力+8 回避+7 効果:致死回避1 使用MP8 レア度☆☆
《土鰐の鱗鎧:防御力+15 生命力+5 効果:毒軽減 使用MP12 レア度☆☆
《タイガーファング:攻撃力+20 効果威圧LV2 使用MP10 レア度☆☆》
《癒回な角杯:対象者に治癒 回復度30% 解毒効果 使用MP10 レア度☆☆☆》
凄いな、なんか賑やかと言うか豪華になったな。
全体的にカッコいいんだけど、全部装備するのってコスプレっぽくて恥ずかしいな。
まあ、この装備はみんなの前で披露することは無いだろ。
うん、授業では大袈裟すぎる。こんなの今回の課題と言うか個人探索限定だ。
さて準備は整った。簡単な霊洞だと高を括ってた気の緩みも締め直した。
見た目ほどでは無いと冷静になったが、それは甘く見てのことでは無く相手の力量を正確に見極めての事だ。
……でもこんなこと思うのも何だけど、焦ったり油断したりミスったりビビったりと、俺はちゃんと普通の人間、高校生のガキに戻れたんだなあと、ちょっと嬉しく思う自分もいる。
が、そんな感慨は此処までだ……よし、行くぞ。
キュギュギュュギュュウウウ
フトアゴヒゲドラゴンの鳴き声だ。やはりドラゴンでは無くトカゲだな。
だからと言って手加減はしない。
まずは相手の能力を測る為にも……トカゲの目前までダッシュで近づきフットワークと体捌きで側面に回り込む。
と、そこに尻尾の攻撃がくる……この動きは捉えられるか。
地に転がり地面との隙間に入り込み、すれ違い様に尻尾に一閃。
やはり堅い。風槍の威力に及ばないタイガーでは大した傷は付かない。
風刃も無いので遠距離攻撃も出来ない。
しかしコイツ相手にはそれは不要だな、接近戦で行ける。
これなら剣の方が取り回しが良い。
恐らく耳の付け根辺りに魔力を感じ取る器官か何かがある。
俺の魔力がその辺で反射した気がする。
ヤツは俺を目で追わずに位置を正確に把握して尻尾を繰り出してきた。
確かな殺意を乗せたそれは間違いなく必殺の一撃だった。
決して無闇矢鱈となどでは無い。
素早い動きに見えるがあくまで巨体にしてはと言うだけだ。
見極めれば回避は容易で、デカい分こちらの攻撃も当てやすい。
ただやはり堅い、やはり皮膚の薄い弱点部分が狙いになるか。
あの顎は非常に狙いづらい、正面に回る必要があるし、アゴヒゲが邪魔してそれを避けて狙うなど少々無謀だ。
耐性装備とはいえやはり毒は脅威だ。盾の致死回避も出来るなら温存したい。
けど、この装備いいな。動きの阻害が思いのほか無い。
俺の体や動きに合わせた調整とかしてくれてるんだろう、ありがたい。
セトちゃんマジ有能。
そのまま距離を取らずに常に動きながら隙を窺う。
持久戦になるか?コイツの体力の限界が分からないから得策じゃ無いな。
試してみるか?いや、リスクが大きいな。
もう少し隙を作りたいがコイツ堅さに自信ありで、下手な動きをしない分隙が出来にくい。
……そういや一角虎もそんな感じだったな。でもあの時は傷自体はつけられたから何とかなった。
コイツにはそれが出来ない……やはりリスクを取るか。
再度尻尾の攻撃が襲ってくる。今度は斬り付けず尻尾を掻い潜りそのまま腹下に潜り込む。
コイツは完全に地面を這っている訳では無い。
自重の問題だろう、激しい動きの時に腹を浮かさないで擦れるのを嫌がっている。
つまり、弱点部位ほどでは無くとも腹の皮膚は薄い。そりゃそうなんだがセトちゃんの説明ではそこを明言していなかったので様子見をしてた。
ただ潜り込んだ途端に潰されるリスクは勿論ある。ここが感知器官の死角になる事を期待しての賭けだ。
腹下を滑り込みながら刃を立てる。
キュギュギュュギュュウウウ
トカゲが上半身を浮かせた、チャーンス!
その勢いで顔の下に陣取る。少し位置が高いが届くか?
この絶好のチャンスは逃せない、顔の位置が下がってくるその一瞬で前腕の攻撃が来るかもしれない。
タイガーの効果である威圧を乗せながらヒゲ裏の喉目掛けて垂直ジャンプ!
少しでも怯ませて攻撃の手を躊躇わせるための威圧だ。
が、その俺目掛けてコイツアゴヒゲを飛ばして来やがった、聞いてなーい。
が、所詮は悪足掻き、俺の剣はトカゲの喉を深々と貫き、アゴヒゲは俺の腿を深く切り裂いていた。
粒子となり消えゆくフトアゴヒゲドラゴン、痛ってえええ。
ちっくしょ、くっそいったあああ!つ、角杯角杯。
くっは、おおう、ふう。
角杯効果すげえ、痛み結構消えたし血も止まった。
止まったと言っても傷口は塞がっておらず、触ればまた血が出て来そうだ。
『これもっかい掛けたらダメなの?』
『過治癒で細胞が壊れる、やめておく事だな』
くそ、そこまで甘く無いか。
あー、なんか最後に喰らうな、アゴヒゲが飛ばせるなんて聞いてない。
毒が無かったのがせめてもの救いか。
《……データニハアリマセデシタ》
『急にロボっぽくならなくて良いよ、別に怒ってないし』
『ハルキは詰めでしくじる癖があるからな』
『たまにだろ、こっち来てからはまだ鈍ってるからだよ』
確かに今回のはトドメに気が行き過ぎて警戒を怠った俺のミスだ。
前回の一角虎といい、ボスクラスは奥の手持ってやがんな。
どっちもトドメの攻撃との相打ちだから何とかなったけど、前情報だけを信じるのは不味いな。
さらに最後の威圧は余計だった、多分アレで必要以上にビビらせてしまって、窮鼠が猫を噛みに来てしまった。
いちいち裏目に出るのやめて欲しい。
それでも倒すと粒子になるのは助かってるな、死んだフリとかしてこないから安心して治癒出来る。
懐の逃開道を見ると壊れてはいない。
よかったこれで一つクリアか、難しい課題だとは思ってたけど、それ以上に大変だったな。
……これをあと四回かあ、もうコレ個人探索と変わらなくない?
モニターされなくなるってだけだよな。
あ、でも好きな霊洞に入れないとダメか、必要な素材が取れる霊洞が課題にあればなあ。
『アッちゃん、成瀬さんの病気だけどアレ、魔力の再取込みとかしてない?』
『うむさすがハルキ、気付いておったか』
『まあね、確信したのは治癒の時魔力が均質化してった事かな、アッちゃんは中和とか言ってたけど引っ掛けとか、何で俺試されてんだよ』
『別に中和でも合っているだろうよ』
『間違っちゃないけどさ……意地悪だなあ、じゃあ作るのは魔力容量増大系の薬?』
『そうなる、つまり強力な魔法を使う魔物の核、魔石が必要になる』
『うーわ、俺魔法自信ないなあ』
『だから我が言ったろうに、セティネストに登録しろと』
俺の決意を揺らさないで。
何とか頑張って魔法防御だけでも習得しないとなあ。
でも、もたもたしてると成瀬さんが霊洞に潜る度に何処かの体機能に障害が出る。
治せるだろうけど、循環器系や脳機能に影響が出たらそれこそ命に関わる。
『ひとまずこの間の実習の時の魔石を使って人工霊洞なら大丈夫な薬とか作れないかな?』
『確かに人工霊洞限定なら行けるかもしれん、恐らく魔力質は同じだろう』
《フトアゴヒゲドラゴン一体の討伐》
《フトアゴヒゲドラゴンの爪・牙・顎棘・尻尾・鱗・皮・魔石を取得 経験点200 MP 15を取得しました》
お、セトちゃん復活。今回は霊洞メッセージは出ないんだな。
駅前のはやっぱりなんか特殊なとかイレギュラーな霊洞だったのかな、魔導書とかもあったし。
人工霊洞で取った魔石は授業中の物なので、メンバーに平等に分けられている。
嫌われ者の俺にもちゃんとくれた。みんな優しい。
その魔石とMP15を使ってアッちゃんとセトちゃんで薬を作ってくれた。
……怪しいかな、鳴瀬さん飲んでくれるかなあ。
ちょっと装備品などのレアリティイメージを
☆…………店売りの量産品
☆☆………霊洞素材を使った品
☆☆☆……霊洞素材の高級品
☆☆☆☆…霊洞素材や魔導化合物による複合超高級品
みたいなイメージで☆5とかはあるけども、実用品としてはあまり使う事がない国宝です。
後、強化なんかのMPは基本アッちゃんの気持ちで変動します。そう言う仕様です。一応訳はあります。
今話もここまで読んで頂きありがとうございます。
まだまだ頑張りますので応援よろしくお願いします。




