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ズルいから嫌われるんだよなあ


 俺は加納崎かなさき 雄吾ゆうご。姪のように思っている才華が、学院での霊洞実習で世界的にも類を見ない病気に罹ったとの連絡を受け、才華の入院している病院にまで飛んで来た。


 才華の家族は少しばかりここから遠いので到着は明日以降になってしまうだろう。

ああ、才華よ、さぞ心細い事だろう、今おじさんが会いに行くからな。


「あれ、ゆうおじさんどうしたの?」


 才華は内心の喜びを必死に隠して努めて普段通りにしているな。

おじさんは分かってるぞ。


「なに、お前が入院したと聞いてな、親御さんは時間がかかるだろうから取り敢えず俺が来たんだ」


 才華の母は俺の昔のパーティーメンバーだ。

血の繋がりこそないがそれこそ実の姪の様に思っている。

俺に娘がいないので……まあ嫁もいないが、その分可愛がって来た。

きっと才華もそうだろう。


 少し雑談を交えながら学校での近況を聞く。

才華のことだから何も問題はないだろうが、相手に問題がある場合も想定せねば。

……ほう、藤堂君と同じクラスか、これはいい。顔を繋ぐ手間が省けた。

なに隣の席?これはダメだ、色ボケした高校男子など才華に惚れないわけがない……許さん、要注意だな。


 しまった、才華は入院患者なのに喋らせすぎた。

体調などは悪くなさそうだが万が一と言う事もある。


「医者は何と言ってるんだ、起きてて大丈夫なのか」


 思ったよりは元気そうで安心したが、病名を確認するまでは油断出来ない。


「えーっとね、なんか霊洞症の一種みたいだけど、良くわかんないから後でもう一回検査するんだって」


 何い、とんだヤブだな、原因が分からないなどとは。

一言文句を言ってやらねば。


「ちょっと待っていなさい、医師と話をしてくる」


「あ、ゆうおじさん」


 才華の呼び止めに後ろ髪を引かれるが、心を鬼にして医師と話を付けねば。

俺はここの学院にも出資しているギルドの支部長だ、話ぐらいには応じるだろう。


「彼女は少し特殊な体質の様で、魔導力場のない場所では問題ないのですが……例えば霊洞などの少し強い力場に晒されることによって………」


 何と言うことだ魔力再取込み障害などと造語を使わねばならない病気だなんて……難病指定レベルじゃないか。

日常では問題ないから難病指定はされないかもとかはどうでもいい。

才華の才能は本当に稀なもので、最高の魔導士にだってなれるほどのものだ。

その才能がこんな訳の分からない難病なんかによって閉ざされるなどと……。


「しかし、魔力の異質さによる障害なので、強力な治癒系の魔法によって上書きと言うか、平均化とでも言うか、少なくとも今よりは症状が緩和する可能性も……」


「何い!ならばその治癒師を連れてこい、今すぐに才華に治癒魔法を!」


「無茶な事言わんで下さい、そのレベルの治癒師がのほほんと一箇所に止まっている訳ないでしょう。世界中で予約殺到の順番待ちに入れれば御の字で、普通連絡はつかないですし、当然当院に常駐している訳もない」


 ぐくく、確かにその通りなのだが……治癒師と言うものは数が少ない。

習得が難しくほぼ才能頼みで、さらに高位ともなると一千万人に一人レベルだ。

単純に考えて総人口九十億のうち九百人になる計算だが、そのうちの何人が実際に才能を開花させているものやら。


 だがいくら命には関わらないとは言え、入学したばかりの才華が学校にも通えず一人寂しく入院などあまりにも可哀想だ。

流石の俺でも毎日そばにいてやる事はできない。

……待てよ、治癒魔法?


「先生、俺に治癒師の心当たりがある。部外者だし無資格だが学院の生徒だ」


「部外者はともかく無資格は……しかし、そうですか、学院の……」


「そうだ学院初の招待生徒だ、駅前事故は知っているだろう」


「何と、あの少年が学院に入学したとの話は聞いていましたが……彼が治癒魔法を?」


「正確には治癒の魔道具を持っている。効果は生還者で実証済みだ」


「ふうむ、ではこうしましょう。ウチの美原みはらを同席させて下さい、彼女の鑑定で問題なければ大丈夫でしょう」


「ありがたい、だが……出来れば彼の事は内密にして貰いたい。流石にこちらの一方的な都合で周りを騒がしくさせるのは……」


「もちろん承知しています。学院の生徒さんなのですから不利益を被らせはしません」


 よし、すぐにでも連絡を取りたい……が彼の心象を悪くする訳にはいかない。

明日の放課後に訪ねると学院長に連絡しておくか。

問題は才華の件で借りを作る事だが背に腹は変えられん。と言うかむしろ才華の為なのだから逆に感謝してもいいくらいだろう、どうせ惚れてるに決まってるのだからな。


 野郎、二つ返事で快諾しやがった……やはり敵か。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「そう言う訳で美原君、君にも同席して貰いたい」


 院長に呼び出され、何事かと思ったら……

いや、えー⁉︎難病患者の治療を学生にやらせるって、えー⁉︎

そりゃ確かに魔道具を使うって事ならウチの鑑定で見ればちょー大丈夫だけどー。

駅前霊洞事故の話はウチも知ってるけどー、何なら彼、藤堂君とかちょークールでタイプだけどー、ウチとは歳の差っていうかー。


「もちろんそんな非常識な、と言う事は百も承知だ。しかし治癒の魔道具だ、効果は実証済みとは言え、実際に確認して……譲ってもらうとまではいかんが、その様子などをレポートに纏めるだけでも学会に発表する価値はある。」


 まあねー、治癒の魔道具なんてそうそう聞かないしー、譲ってもらうってこのハゲ何言ってんのーって感じ、いくらすんと思ってんのー?

まあ興味はあるかなー、院長命令でってコトならウチに責任ないしねー。


「分かりました。微に入り細を穿つようにレポートに纏めます」


 なーんて言っちゃったけどー……やっば、鬼ヤバじゃね?何この魔道具。

☆三とか初めて見た……いや☆五とかもあるって知ってるけどー。

そんなんフツーじゃ見ることないしー、☆三って上級者界隈じゃチョイチョイあるっぽいけどー、実際見るなんて想像した時ナイヨー。


「大丈夫です、飲ませて問題無いでしょう」


 問題は無い、ケドー、別の問題出るんじゃね?愉快な名前の魔道具もやばいけど、中身エグ。

鑑定で30パー回復とか出た。うっそデショ……一級の治癒師とおんなじってどゆことー⁉︎

ウチが知ってる限り世界に10人とかヨ?彼って高校生でしょ、一体どうやってこんな……まあレポートの書き甲斐があるわね、院長には礼を言わなきゃ……ハゲって言ってごめんなさい、ハゲて無いよ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ……大丈夫かな、怪我ならすでに実績があるけど病気にも効くのか。

一応セトちゃんの説明では怪我毒病気によく効くらしいけど、定番では怪我、毒はともかく、病気には効かないモンだけど、今の世界ではそんな定番は無いのだろうか。


『案ずるなハルキ、我の見立てではその娘の症状の原因は霊洞の魔力だ。その癒水の魔力であれば体内の魔力を中和し症状の改善は見込める』


『改善かあ、治すのは難しい?』


『必要な素材がある、検索をかけた所この学院内の霊洞でも取得記録はあるのでな、揃えられん事もないだろう』


『あー、なら尚の事個人探索認めて貰わないとなあ』


 アッちゃんとの会話中に鳴瀬さんが癒回な角杯の癒水を飲み切る。


「なんかちょっと美味しいかも……ん、アレ?」


 アレって美味しいんだ、この間は怪我に直接掛けたから内服は今回が初だったなそう言えば。


「え?うそ……足、動く」


 ベッドで半身だけ起こしていた鳴瀬さん、モゾモゾと足を動かし始めた。

ほんとだ、動いてる。症状の改善には成功した様だ……よかった。

また元気で優しい鳴瀬さんに学校で会える……って言っても流石に明日までぐらいは休むだろうな。


「な、な、ほ、本当にな、治った……のか」


 加納崎さんも涙目混じりに驚いている。期待していたのと同時に、やはり不安だったのだろう。

姪っ子さんなんだから当然なんだろうけど良いおじさんだなあ。


「……マジ?……コホン、ちょっと失礼します」


 そう言って看護師さんが鳴瀬さんの前に立ち瞼を広げて目を見る、口を開いて舌を見る。

あんまり俺の前でそういうのやめてもらえますかね?なんかドキドキするじゃん。

歯がキレイ……ほらキモい。


「副反応などは見られません、時間をおいて確認の必要はありますが……恐らく大丈夫だと思います」


「す、凄いぞ藤堂君、君のその魔道具は正に一級品だ!そのダンジョンを攻略した君も一流の探索者と言っても過言じゃない!」


 嬉しすぎて言い過ぎてますよ加納崎さん。奇跡と偶然と幸運とまぐれって言ったじゃないですか。

……いや、でもコレは使えるか?


「加納崎さん、実は鳴瀬さんの病気は完治した訳ではありません。魔力を中和して症状を改善しただけです」


 アッちゃんの受け売りだけど、さも自分で気づいた風に言うの心が痛い。


「……そこまで分かる、素人じゃないの?」


 看護師さんがボソッとこぼす、いや素人なんですけどね。


「治せ……ないのか」


「ですので完治させる薬を作る為の素材が必要なんですが、個人探索の許可が出ないと難しいんです」


 薬なのかアイテム系なのかまだアッちゃんに確認とってないから分かんないけど、治せるなら何でも良いだろう。


 俺を推薦できる加納崎さんなら、学校側に働きかける事も可能なんじゃないか?とか思ってのセリフだけど、よく考えたらコレもズルだよな……だから嫌われるんだ。


 ま、鳴瀬さんが元気になるならそれでもいい。


「個人探索か、生徒の命に関わるものだからおいそれと許可は出せないと思うが……でも、うーん……才華の為なのだからなあ」


 流石の加納崎さんも考え込んでる。やはり簡単な事じゃないな。

なんせまだ入学三日目が終わったばかりだもんな、今の世界の常識的にはどうなのか分からないけど、俺の感覚的には急ぎすぎな気もする。


 とは言っても別に無理にお願いしているつもりはない。

そこまで急ぐほど切迫詰まった病気じゃないんだから、一ヶ月間ちゃんと成績を残せば許可は普通に出る。

ただ俺はボ……ソロなので普通よりも難しい、それを何とかして欲しいだけだ。


「今回の件と合わせて学院長に話してみよう、ああ彼は口が固いからその魔道具の話は漏れないはずだ。生徒想いの人だしね」


「ありがとうございます、ズルをするみたいで気が引けますが、鳴瀬さんには早く元気になってもらいたいですから」

 

 完成するまで鳴瀬さんが霊洞に潜るのは難しいだろう。

せっかくダンジョン高なんてものに入学したのだから、それでは勿体無い。

初実習後の『もっと頑張るね』と言った彼女のはにかんだ様な、少し落ち込んだ様な遠慮がちな笑顔を思い出す。


「大丈夫、ちゃんと治りますよ」


 俺は胸を張る。なんせアッちゃんが言ったんだから。


《データによるとそこで他の名を出すのは自信のなさの表れですね》


 何データだよ、ってか普通に喋んな。

今日は時間ができたので早めの投稿です。

上手くいけばもう一話上げられる可能性も……

毎回読んで頂きありがとうございます。今日も頑張って書きます。

どうか応援よろしくお願いします。


読んでもらえるのが一番の応援です、みなさん良い週末を。

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