さらば愛槍ようこそ角杯
いやでもコレはアッちゃんのファインプレー大賞だよ。
一角獣の風槍がまるでこのダンジョンに誂えた様にハマった。
レベルアップで攻撃力が上がった事と言い、風の外套と言い、風刃と言い。
マジ有能マジで神。
《一角獣の風槍は耐久限界に達しました 素材に還元します》
え?
一角獣の風槍が魔物と同様に粒子となって石版に吸い込まれていく。
……確かに最後ゴリ押しで無茶な風刃乱発しちゃったしな、そうかー、限界きちゃったかー、あかんかったかー。
いやそりゃないだろうよ。
耐久値なんてなかったじゃん!風刃の回数制限だって分かんなかったし、使えるんだから使っちまえみたいな勢いで調子に乗ったとは思うけど、必要な事だったし決して無駄弾なんて撃ってないぞ。
え、えー。なんだろうコレ、なんか凄い悲しい。
チート装備で無双なんて好きじゃないとかスカした事考えたからなの?もうなんか一角獣の風槍さんは戦友みたいに感じていたのにショックだわー。
思えば短い付き合いだったな、アイツには何度も助けられた。
この石版が墓標になるのか……安らかに
『ハルキ、思考がやかましいぞ』
『お、なんだよアッちゃん。俺の思考を勝手に読まないでくれよ』
『勝手に流してくるのはハルキの方だ』
『そんな事はしていない』
『どうでも良いが我の事も戦友と呼んでいたな、あの槍と同列か?』
『バカだなアッちゃん、同じ戦友でもアッちゃんは殿堂入りさ、格が違うよ』
『え、そう?……ならば良い』
《殿堂入りの戦友 該当するデータがありません》
混ざってくんな。
『それよりアッちゃん、コレはどう言う事だい?』
『うむ、チュートリアルと言っただろう。アレはこのダンジョン攻略までのお試し品だ』
『そんな事ある?アッちゃんコッチのダンジョンに馴染み過ぎじゃない?』
まるで向こうで俺がやってたダンジョンマスターみたいだ。
確かにかなり強力な武器だったから調整が入ったとでも思うべき所か
そうなるとやっぱりあの一角虎はかなり強い魔物だったんだろう。
『そうだな、積もる話もある。我は魔力のないところではただの第一原質だからな、今晩にでもハルキの夢ででも話そうではないか』
『簡単に他人の夢に出ようとしないでよ』
ただのって……まあじゃあそれで良いや、今夜詳しく聞こうじゃないか。
それよりもココが心配だ。魔物はいない様だが一人でいるのは心細いだろう。
そういやボスを倒しても魔物ってまだ出るんだな。
「兄者ー……怪我してる!」
そういや顔に火傷してたな、通りで痛いと思った。
「まあかすり傷だ、こんなもんですんで良かったよ」
「まさか……アレ倒したの?すご……」
「ああ倒してきたぞ、兄ちゃんは凄いのさ」
あえてふざけた感じで軽さを出す。
あまり重めに真剣な話になると説明が大変だしな。
冗談めかして流していこう。質問は受け付けない方向で。
ともあれココと合流したので、他の人たちの待つ広間へ向かう。
そういやMPで怪我を治そうと思ってたっけ……
手持ちのMPは20か、応急処置でも四人までしか出来ないな。
『アッちゃん、さっきの合成獣の核角ってヤツ回復アイテムとかに出来ない?』
一角虎はこのツノで回復していたのだから、そういう能力が宿っているかも知れない。
『ふむ、出来そうだな。MPは10ほど使って下位の治癒アイテムになる程度だが』
『じゃあ頼みたいんだけど』
なんか頼んでばっかだな。そろそろ申し訳なくなってきた。
曲がりなりにも神様なんだからお供えとか必要かな。
『なんだ水臭い、我と貴様の仲だ。それに貴様には返しきれないほどの恩もあるし義理もあるし感謝もある。何より友人ではないか、遠慮はいらん』
『アッちゃん、そこまで言ってくれるか』
う、目頭が……
『だが良いのか、それは良い武器になると思うが』
『武器はもう良いよ、ダンジョンに潜る事なんてそうないだろうし』
あんまり良い武器作っても人前で使いにくいし。
元の素材的に一角獣の風槍よりも凄い武器になりそう。MP足りんけど。
まあ武器は必要ではあるから、なんか他の素材でも使おうか。
それにMP10で回復アイテム作れるのはかなりお得だと思う。
応急処置でMP5なんだから二回分だ。
『そういや風刃もそうだったけどアイテムに回数制限ってあるの?それとも俺の魔力使用って感じなの?』
『ハルキの魔力だ。ただ使い過ぎるとアイテムが耐えきれず自壊する。まあ素材に戻るだけだがな』
何それ、つまりMPさえあれば何度でも作れるって事か?
やっぱりチートじゃん。
……ま、でもこんな世界だしな。
世の中にはもっとチートツールやチート能力みたいなもんを持ってる人達もいるかもしれない。
そういう人達はきっとそれを隠しているだろうから、世間に知られてないだろう。
だから俺が知らないだけで、別にコレぐらいの事は世界中で見れば結構ある事なのかもな。
あまり気にせず、ただアッちゃんの心遣いに感謝するとしよう。
『じゃあ合成獣の核角を回復アイテムにしてくれるかい?』
『うむ、お易い御用だ』
《合成獣の核角をMP10使用して進化:癒回な角杯 レア度☆☆☆》
MP10でも星三いくのか。まあまだ☆の数がどんな 要素で数が決まるのか知らないけど。
《使用効果:対象者に簡易治癒 回復度30%》
《角杯に溜まっている瘉水を外傷は患部にかけ、毒物などや病は内服で使用》
おお、説明はありがたい。使用回数は俺の魔力次第か、それも数値で知りたいもんだ。
けど何か、いや良い事なんだけど、回復高えな。
応急処置辺りを想定していたんだけどそれ以上っぽい。
コスパ良すぎない?素材の価値が高かったって事なのかなあ。
そうこうしているうちに広間に着いた。みんな思い思いの格好で休んでいる。
具合悪そうな人もいるな、すぐに回復させないと。
「あ、本当に戻ってきた!」
「必要な物って見つかったのか?」
「はい、それは大丈夫です。もう脱出出来ますよ」
“おお”と静かな歓声がする、大きい声出す元気もなさそうだ。
「出口まで歩くのでみなさんの治療をします」
そう言って俺はみんなの怪我している所に瘉水を掛けていく。
見る見るという様な劇的な治り方ではなかったが、それでも傷は塞がり出血も止まって、痛みもだいぶ引いたらしく皆安堵の顔をする。
ただ失った血が多かった人は肩を貸さないと歩けなさそうだ。
みんな感謝してくれた。
ここにいる間に少しは落ち着いてくれた様だ。
ここにあれ以上魔物が来なかったのも大きいだろうが、何より不安だったのだろう。
ただ、ここに遺体を置いていくには抵抗がある様で、渋い顔をする人も多い。
仕方ない事だし、その辺は捜索隊とかに何とかしてもらうって事で納得してもらい、広間を後にする。
一応魔物が出てきた時のために一角虎の牙をMP10使って強化、タイガーファングと言うそのままの小剣になった。
☆は二つ、攻撃力+15 装備効果は威圧Lv1というもの。
まあ上出来だろう、風槍の威力を見ても、その半分もあればボス以外なら通用するだろうし、あくまで間に合せなんだから十分だ。
途中アルミラージと大亀を一体ずつ倒したくらいで出口に着く。
大亀というのはくる時に振り切ったヤツだ。
今回は他の人もいるので倒しておく。武器も中々だった。
宝珠を持っているので弾かれずに出れる事だろうが、持っている人しか出れない事はないにしても、最初に出る人は持っていなきゃだよな。
「まず俺が先に出て安全を確認しますから、みなさんは一拍置いて続いて下さい」
ココと手を繋ぐ。コレなら一緒でも大丈夫だろう。
「行くぞ」
「うん」
元気な返事だった。
何とかペースを維持しています。今後もこの調子でいきたいです。
効果や数値はあまり細かく練ってはいないので、今後改定する必要が出てくるかも知れないですが、
なるべく今回まで出したモノに準拠するよう努力します。