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宝珠を探しに行こう

《該当データが見つかりません》


 との回答だった。そこまで都合よくはないか、ネットに繋がっているって事だったし、宝珠とやらは未発見アイテムで、まだ情報がネットに流れていないのかもしれないな。


 でもこの《セティネスト》はただのネット閲覧ツールじゃない。

異世界の神様からの贈り物は伊達じゃなかった。

マジで何でも出来そうな可能性を感じる。


「このダンジョン内に、隠されたアイテムの存在はあるか。」


《魔力反応のある魔導製品プロダクトを検出します》


《マップに反映 青のポイントで表示》


 十二程の青ポイントが表示された。

多いな、全部探して回るのはちょっと骨だぞ。

ココ達を連れて回るわけにも行かないしな、もうこの場所は安全だろうか?

今のところ赤ポイントは周辺にはないけど、いつまたやってくるか分からない。


 「おお、樹梨花!大丈夫なのか。よかった、もう安心だぞ」


 女の子が目を覚ましたのか、さっきの父親が安堵の言葉を発する。

大丈夫そうだな、このツール凄え。


「おい、俺の彼女も助けてくれ!テメエ探索者エクスプローラーだろ!」


「いえ、他の人はもう……」


 まだギリギリ生きていたとしてもMPが足りない。

“一角獣の風槍”をMP変換すればどうにか出来るかもしれないけど、まだ魔物に襲われないという保証はないから武器は手放せない。


「おいテメエ!ふざけんなよコラ、いいから治せよ!」


 恋人を失って悲しいのは分かるけどもう打ち止めだ、俺に出来る事はない。

それに俺は探索者エクスプローラーとかではない。ないが、それは言っても無駄だろう。


「そ、そうだ治せるなら俺の怪我も治してくれ」


「他の救助の人はまだなのか?こんな子供一人来たぐらいじゃあ戻れないだろ」


「そうだ、早くここから脱出させろ、また襲われちゃ適わねえぞ」


 俺はココを助けに来ただけで救助隊などというもんじゃない。

もちろん言われるまでもなく脱出の為に今手段を講じているところだ。

うーん、やっぱココをこういう雰囲気のとこに置いていくのはまずい気がする。

俺の妹って事は分かってるだろうから、俺の居ないとこで何をされるか言われるか。


「俺は妹が心配で来ただけなので、救助隊ってのは知らないですね」


 まあ救助隊ってのが存在するならもう出動していても不思議じゃない。

ここに辿り着くまでどのくらい掛かるか分からんけどな。

なんせその人達はマップなんか持ってないだろうし。

でも戦力的には十分なモノを持っているだろうし、人数も揃えてくるだろ。


 このままここで救助を待つってのが現実的かもしれないな。

でもそうするならこの空気は嫌だな。

死者も出ているし、みんな何らかの怪我をしているから無理もないだろうけど、ココは無傷だしな。何らかのヘイトを集めそうだ。


 うん、まあ白状すると宝珠が何なのか気になる。

ちょっと探しに行きたい気持ちもある……行くか、もう考えるの面倒だ。

幸いにして何個かはここから近いところに反応があるし、たとえ宝珠じゃなくても何らかのアイテムであればひょっとしたらMP変換とか出来るかもしれない。


 そうじゃなくても魔物を倒せばMPが手に入る様だし、そうなれば怪我人も治せてちょっとは雰囲気が良くなるだろ。

ココの事が心配なら連れていくか、俺が確実に守ってやればいいだけだしな。

全員連れて歩くのは無理でもココだけならおぶるなり抱っこするなりしてやればいいしな。

怖い思いもするかもしれないけど、俺が一緒にいないという方が不安だろう。


「脱出の為必要なものがあるんで、ちょっと探してきます。 ココ、おいで」


「……連れてってくれるの?」


 やはり不安そうな顔をしている、置いていくなど論外だな。


「ああ、せっかく迎えに来たんだ。離れるのはココも嫌だろ」


 そう言ってココを抱き抱える。

うん軽い、ちっちゃい。コレならこのまま行けそうだ。

ココの身長は120センチほどで俺は170以上あるからな、中三にしてはでかい方だろ。


「おんぶの方がいいか?」


「ちょ、兄者……いいよ、歩けるから降ろして」


 何だ恥ずかしがっているのか、まあ人目もあるしな。

けどまあ知らない人達だしもう会うこともないだろうから気にする事はない。


「まあそう言うな、俺も心配だったんだからこんぐらいさせてくれ」


 こうやってココの温もりを感じられる事が嬉しい。間に合ってホントに良かった。


「うう、兄者ぁ」


 もうお兄ちゃんとは呼んでくれないのか、どっちでもいいけど。

なんか嫌がってそうなのは恥ずかしいからなのか、迷惑を掛けてると思っているからなのかホントに嫌なのか……


「何だ、嫌か?俺はこの方が安心だ」


 もちろん敵が来たら降ろす。マップ表示ですぐ分かるからな。


「ヤじゃないけど……」


 嫌じゃないならいいや。


「なら大人しく抱っこされてろ」


 では探しに行くか。と思ったとこで声がかかる。


「おい!何勝手に行こうとしてんだよ、俺達を置いてく気かよ!」


「いや、すぐ戻りますよ?」


「信じられるか!こんなとこ一秒でもいたくねんだよ、早く脱出させろや!」


 無茶を言う、そのために宝珠を探さなきゃいけないんだから。


「今はこの辺に魔物はいないから安全だと思うんで、待っててください」


「何でそんな事分かんだよ、嘘吐くな。テメエ自分達だけ逃げる気だろ!」


 もうやだこの押し問答。もう急ぐ必要はないけどあまりモタモタしてるのも好きじゃない。


「じゃあ勝手にしてくれていいですよ、邪魔しなけりゃ」


「ふざけんなよ!こっちゃ痛くて動けねえんだ!」


 だから動くも動かないも好きにしなさいってば。

痛いから動かない、それでも動く、大人しく待つ、暴れて待つ、好きなの選べ。

大声出すと魔物が寄ってくるかもだけど、そんぐらい分からない歳じゃないだろ。

まあそれも彼の選択という事で。周りも嫌なら止めればいいし、それをしないならそれもみんなの選択だ。

好きにしてくれ。


 もう何も言う事は無いな無視無視、とっとと宝珠を探しに行こう。

一番近い魔導製品プロダクトとやらは……あの通路か。

マップを見ながら進んでいく……どうでもいいけどスマホ見ながら歩いてるみたいで感じ悪いな。


 後ろでまだギャアギャア喚いている。だから魔物が寄ってきても知らないぞ。


 まだ赤いポイント近くにない。意外と魔物は多くないな、出来たばっかのダンジョンはそんなモンなんだろうか。

それともそもそもそんなモンか?分からない事は帰ってから検索するなりしてみるか。

この石版でもネット検索出来るだろうけど今する事じゃないな。


 近くにいないならその方がいい、探索が捗る。

進んでいくと扉があった。


 ……今更だけどダンジョンって誰かが作っているのか?向こうでは俺が作った。

じゃあこっちのは?自然にこんなの出来るのは不自然だ。

まあ、今のこの世界ではその不自然が自然なのかも知れないけどさ。


 疑問は尽きないよな、ネットじゃそんな事解明されてないだろうし。

などと考えながらも扉を開ける。

宝箱が置いてある……宝箱。


 やっぱ誰かが作ってんだろここ。

いい仕上がりの宝箱だ、コレがお宝だと言ってもいいぐらいの出来に見える。

ミミックって線もあるが、“セティネスト”さんがそんなモンを赤表示しないって事はないと信じる。


 一度ココを降ろして背後に庇いながら宝箱に近づく。

あくまで念のためだ。


 さて、中身は何が出てくる?ちょっとワクワクする気持ちになりながら宝箱を開ける。

中に入っていたのは宝珠ではなかった。

そりゃあ一発的中とはいかないか。

中には一冊の古びた本。……このパターンは大体何の本か分かる。


 手にした途端に粒子化して石版に吸収される。


《魔導書:バクレイオンの書を獲得 内容未確定》


 ……つまりどう言う事だってばよ。魔導書なのは予想通りだけど……

バクレイオンが何かはともかく、未確定って何?


《獲得によりこのダンジョンはバクレイオン霊洞と呼称されます》


《この魔導書は所持者の特性により内容が決定します 所持登録をしますか?Y/N》


 うーん、色々読んだり動画観たりしたけどやっぱダンジョン分かんねえや。

一応Noにしておこうかな。

未確定ってなんか怖いし、さっき誰かが探索者って言ってたけど、それってダンジョン探索資格の事かも知れないし、資格なしでアイテムを取るのは違反になるかもだし……言い訳はできる様にしておこう。


「兄者、どうしたの?」


 俺が悩む素振りを見せたのでココが不安そうに聞いてくる。


「なんか魔導書ってのを見つけてな、探索者じゃない俺がとっていいもんかと思ってなあ」


「……普通は探索者以外ダンジョンに入らないから分かんないけど、ダメなんじゃないかな」


 そうだよな、そうしないとアイテム目当てにダンジョンに侵入しようとする奴が出てくるかもしれないし危ないよな。


「でも昔穴堕ちした人が生還した時に持ってた物は、特に問題になってなかったかも」


 以前そんな記録があった様だ。

まあ、だとしても登録なんかは後回しにしてもいいだろう。

もっと魔導書についてちゃんと調べてからにしないと。

それに俺は穴堕ちじゃなくて侵入者だしな。不味い事したか?


 それもこれもまずは脱出してからの事だな、早くしないと残してきた人達もうるさそうだし。


 すると突然赤いポイントがマップに現れる。

間違いなく今まではなかったはずだ、急に出てきた。

まさか魔物はこうやって自然発生するのか?倒した分リポップしたのか?


「ココ、俺の後ろに!」


「う、うん」


 扉から出て赤いポイントを目指す。

放っておいたら他の人達の所に向かっちゃいそうだし。

ココを後ろに慎重に進むと魔物の姿が見えた。

……虎だ……でけえ。


 なんかヤバそうなのがいる。今までのとは格が違う感じだ。

いやこりゃ不味いかも、ココを連れてきたのは失敗か?

もう空気からして違うもんな、この槍がいかに良い物でも俺が使うんだしな。


 確かに力場のあるダンジョン内では身体能力上がってる感じだったけど、それで何とかなるか……


「ココ、さっきの部屋に入って扉を閉めてろ」


「え、兄者まさか」


「ああ、アレを倒す。お前は危ないから隠れてろ、なあに俺は大丈夫だ」


 大丈夫とは思えないけどそう言っとかないとな。


「……うん、わかった。気をつけてね兄者」


 聞き分けが良い子は好きだぞ。

あの部屋はなんか魔物が湧かない感じがしたからその勘を信じる。

さあて、大勝負だな。

今日も暑かったのでクーラー効かせた家でのんびり書いてましたが疲れました。

次回も頑張って更新しますので見てください。

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