世界の終わりまでお前は怯えているのかい!
世界はあと一ヶ月で終わりを迎えようとしている。なぜなら、勇者が魔王との決戦で敗北し、死んでしまったからだ。
それをチャンスと見た魔王が、世界に向けて終焉魔法を一ヶ月後に放つと宣言した。どうやら、世界を魔族が暮らしやすいようにするため、一度世界を完全に壊すつもりらしい。
人間達は滅びてしまう雰囲気にアウェイ。誰もが諦め、世界が滅びる瞬間まで、自堕落に、生気も無く暮らしていた。
そんな中、立ち上がったのは一人の勇気無き少年だった。
「どうしたんだい、毎日落ち込んで!」
「毎日元気なお母さんが可笑しいんだよ。……世界の終わりって時に、なんでそんなに元気なんだよっ!」
「私達が元気じゃなくなっちまったら。それこそ、本当に負けちまう! あんたも最後の最後まで諦めちゃダメ!」
……同年代の子にいじめられて、世界の終わりより、いじめの方がつらいと思っている僕が可笑しいのか?
「――お母さんに僕の気持ちは分からないよ! いじめのつらさ知らないくせにっ!」
すると、「ぷぷっ」と吹き出し、笑いだしたお母さん。
「な、なにが可笑しいんだよ! こっちは真剣なのにっ!」
「なおのこと笑えるねぇ。世界の終わりって時にいじめの話……ぷぷっ」
「こ、こっちは苦しんでるのにーーっ!」
「……ちょっとこれからカッコイイこと言うわね。――世界の終わりまでお前は怯えているのかい! こんな時、いじめで悩んでいるのなんてお前くらいだ!」
た、確かに。自分がバカらしく感じてきた。世界終わるのに、いじめで悩んでいる暇なんて僕にあるのか……?
「……僕、可笑しいのかな?」
「いや、全然可笑しくない。むしろ、それが普通さ! 人間なんだもの。 ……でも、なにもせずになにかを得ようなんて、都合が良すぎるよ。アンタも祈ってばかりじゃなくて、覚悟を決めて行動しな!」
……今までの僕は都合が良すぎたのかもしれない。突然現れるヒーローに期待して祈ってばかり、なにも変わらない毎日。この非常事態だからこそ、変われるキッカケがあるんじゃないかっ!
「――よし決めた! いじめた奴等全員ぶっ飛ばして、世界救ってくる! 行ってきますっ!」
そう言うと、田舎の家を飛び出し、いじめてきた奴等をぶっ飛ばし、世界を救う一ヶ月の旅に出た。
◆◇◆◇
「――ここは?」
勇者である俺が目覚めたのは古い教会であった。今にも崩れそうな建物に若干の不安を感じ、足早に教会の外へ足を運ぶ。
――そこに広がっていた光景に目を疑う。まさに天国と地獄。半々に滅びた大地と緑が生い茂る大地が。
「……一体何が怒っているんだ」
急ぎ近くの人里に向かい事情を聞きに向かう。そこで聞いた話によると、小さな少年が国中の人間を引き連れ魔王城に。終焉魔法の準備で疲弊していた魔王は弱体化しており、勇者がいなくても勝ててしまったらしい。
ただ、魔王は殺さず大地の半分を魔王に譲ることによって、世界に平和が訪れたらしい。後に少年は勇者と呼ばれるようになった。
「――マジか」
こういうのって、復活した勇者が魔王に再挑戦して勝利、ハッピーエンド……だろぉーーーっ!!
……もしかして、俺の出番なし? 本当の勇者なのに?
「うそぉーーーっ!?」