07【開門】
国元からの一行が到着した翌日、一関藩の下屋敷は、まるで関ヶ原前夜のような物々しい空気に包まれていた。
そこには、大畑万之助の姿もあった。
やぐらの上では松明が揺らめき、たすき掛けをした大勢の侍が整列している。
中には、鎖帷子を着込んでいる者の姿もあった。
——侍にとって最も大事なものは面子。
だが、事の真相を知る者にとっては、なんとも気が乗らぬ戦である。
武士の体面を守るための戦い——。
半ば諦めたような表情を浮かべる者も少なくなかった。
「御一同、こちらを見よ!」
大畑の声が響き渡る。
「亡き殿の敵を討つ時が来た!
私情を捨て、敵の首級を亡き殿の墓前に捧げるのだ。
それこそが、若君への忠義の証——!」
その言葉は、集まった侍たちに向けられたものではあるが——
どこか、自分自身に言い聞かせているようにも聞こえた。
まさか、我が娘を討つことになろうとは……。
それは、親にとってこの上ない不幸。
だが、侍にとって最も大事なものは《忠義》である。
その覚悟を噛み締めながら、大畑は刀の鯉口をじっと見つめた。
そして——
下屋敷の大門が、ゆっくりと開かれた。