幕間 決意した王子
王宮で開かれたパーティー。愛しの令嬢と参加していた俺は貴族どもから注目を受け、ヒソヒソと噂をされていた。
「セドリック様は、あの男爵令嬢とパートナーだそうだ」
「リディア様を理不尽に婚約破棄したって話なのに、あの男爵令嬢も図々しいわねぇ」
「婚約破棄されたリディア様は、辺境の地で成功を収めてるとか。セドリック様は、デカい魚を逃しましたなぁ」
クスクスと笑い声が響く。リディアと婚約破棄したばかりの頃は、彼女を批判する声ばかりだった。しかし、少し前から俺を批判し、リディアを称賛するような声が増えてきていた。
「リディア様の開発されたドライヤーが便利らしくて……」
「最近のトレンドはユードレイスの“お風呂”というものらしいわ。スミス夫人から聞いたの」
「もしかしたら、リディア様は新しい事業を始めるために、セドリック様からの婚約破棄を受け入れたのかもしれないわね」
どいつもこいつもリディア、リディア、リディアとうるさい。
辺境の地で冷遇されて泣いてると思ったのに、目立ちやがって……婚約破棄してもなお、あいつは目障りだ。
きっと、急にあいつが称賛されるようになったのは、裏であいつの父親が手を引いているに違いない。ムカつく男だ。あの男は、リディアと婚約をしていた当時から、いつも俺に苦言を呈していたのだから。
俺の愛しの女は、俺の隣で困ったような顔をしている。彼女が可哀想だとは思わないのか。
⭐︎⭐︎⭐︎
「クソッ! 本当にあの性悪女、無駄に活躍しやがって!」
パーティーが終わり、自室に戻った俺は舌打ちをする。そんな俺の様子を見ていた愛しの女は、不安そうな声で俺に訴えかけてきた。
「セドリック様。私は本当にセドリック様と結婚できるのでしょうか?」
「……」
リディアとよりを戻さなければ、彼女を側妃にすることは許されていない。
しかし、現状、リディアが辺境の地から王都に戻って来る可能性は低いだろう。
リディアとよりを戻すには、彼女を説得するしかない。
「よし。俺は辺境の地までリディアを迎えに行くことにする。リディアを正妃にすれば、君と結婚できるし、うるさい貴族どもも黙るだろう」
「え?」
今、リディアが称賛されているのは、辺境の地で商売をしているからだ。それをやめさせれば、その評価も覆るに違いない。
「だから、君は待っていてくれ」
「は、はい……」
「任せてくれ!」
俺は絶対に金髪美少女と結婚をすると決めていたんだ。……かつて俺の目の前に現れたあの子のような金髪美少女と。
そのためにも、まずはリディアに話しに行こう。
リディアだって俺が迎えに来たと知れば、泣いて喜ぶに違いない。だって、今の俺と結婚すれば確実に正妃になれるのだから。
こうして俺はリディアを迎えに行く準備を始めた。