表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

05. 実家に帰って

――

 実家に帰ると蚊取り線香の匂いがした。畳も香っていた。

             3         ぁ

「あ、おかえりー」         p    

「ただいまー」                   s

         L           

 去年よりもシワの増えたお母さんがキッチンから顔を出す。靴を適当に脱ぎ捨てて居間に上がった。部屋の端にはおばあちゃんがいた。おばあちゃんの姿はすっかり四角くなってしまったが、心はまるいままなんだろうか。  s         pn

 q       x              r

「おばあちゃん、ただいま」                ・

                     @仏壇

 チーンと輪を鳴らして線香を据える。

 扇風機をつけて座布団に座ると、畑から帰ってきたお父さんが縁側から顔を出した。遠くには竹林が見える。子供の頃よく遊んでは、蚊に刺されたあの林も奥にあった。

         ・          |||||||||||

「うす」        ・   ・   |||||||||||

「おお、でかくなったなぁ」       |||||||||||

「もう身長が伸びる年じゃないよ。横ってこと? えぇ?」|||| ・

       ・・           |||||||||||

 お父さんは縁側からそのまま上がってきて、水道で手をじゃぶじゃぶしたあとポテトチップスを持ってきた。お酒が片手にあった。  。¥

                      ポテチぼりぼり

「ちょっと、昼ご飯前なんだから」  ぼりぼりぼりり

「へーきへーき」  パキッ

                      プシュー!

 お父さんは酒を開けてお菓子を食べ始めた。

              ――4番バッター田中……

「暑かっただろう」    打った、ホームラン!

「暑いし道が臭かった」

「坂本さんちは肥料にうんこ使ってるからな。父さんが子供の頃はな……」

「その話は何回も聞いたよ。手がうんこまみれになったやつでしょ」

「それで終わりじゃないんだな。手がうんこまみれになるだろ? そしたら俺も小さかったからエーンエーンって泣くんだよ。涙を手で拭うと、顔にもうんこがつく。そんでもっと泣く」

「ひでえ話」

        ――車を売るなら高橋自動車♪

 お父さんの話が終わるころには、お昼ご飯が運ばれてきた。今に限ってカレーとは間が悪い。

  :: :: : ::: :: :: : ::: :: :: : ::: :: :: : :::

「いただきます」:: :: : ::: :: :: : ::: :: :: : ::: :: :: : :::

:: :: : ::: :: :: : ::: :: :: : ::: :: :: : :::

 カレーにはお父さんが取ってきたばかりの野菜が入っていた。小麦粉でかさを増しているのが、うちのカレーのセコいところだ。それがたまらなくおかしくて、懐かしい。このカレーが好きだった。

                  ~|              ・

「みんなは?」            |               ・

「康太は午後から来るって。剛はまあ、夕飯にはくるでしょ。寿司だし」 ・

「あいつの食い意地ハンパないからな~」                ・

「あれ、だれか来たっぽい」      |    ―――       ・

「ただいまー!」           |  ◯ ―――        ・

「おじゃまします」          |  人 ―――       ・

                                   ・

 康太兄ちゃんが家族を連れてやってきた。嫁の舞香さんの後ろに、まだ小さい優ちゃんが隠れていた。

  ・――                   お

「ご無沙汰してます、つまらないものですが」   も

「お、舞香さん。どうもどうも」         い

           ・――          で

 お父さんは梅干しを受け取るなり、すぐ食べ始めた。

                ・・・・

「ここで食うなよ」

「いいじゃねーか。お、この梅干しうめーな。ウメだけに」

「はいはい」


 兄ちゃんたちも仏壇でチーンとやって座布団に座った。だいぶ賑やかになってきた。お母さんが立ち上がった。


「康太もカレー食べる?」

「早くつきすぎちゃったけど、お昼は食べてきたから平気」

「そう。お茶だけ用意するわね」


 食べ終わったあと、しばらく雑談した。


:;:;:;:;:;:;:;:;


    優ちゃんももう10歳か。

    もう半分大人かぁ

    学校は楽しい?


          あ、はい。

          ちょっと優、隠れない

          いいじゃないか


        そうだ。じいちゃんの畑見るか?

        自由研究の課題に良いんじゃない?

        行ってみる

        うし、待ってろ

        おれも行こっかな


  外はあっちーな

  うちわ持ってきてるぞ

  わーい


        これがトマト、これはナス

        人参は?

        あっちだ


    じいじ、いっぱいかけた!

    おーおー、良かったなー

    ありがとうございます。



 おじさん、見てて!


|==|==|==|==|==|==|==|==|

^  ^     ^  ^     ^  ^   


 これは良いかたつむりだよ!

 それでね!


|==|==|==|==|==|==|==|==|

^     ^  ^  ^     ^  ^  ^


 これがわるいかたつむり!

 じゃあ、


|==|==|==|==|==|==|==|==|

^  ^     ^  ^  ^     ^   


 これは良いかたつむりでしょうか!

 うーん。おじさんにはわからないなぁ。

 えへへー!



|==|==|==|==|==|==|==|==|

^  ^     ^  ^     ^  ^   


 これが悪いかたつむりなの!

 それで、


|==|==|==|==|==|==|==|==|

^  ^     ^  ^  ^     ^   


 これは良いかたつむりになるの

 もうおじさんにもわかるよね


|==|==|==|==|==|==|==|==|

^  ^  ^  ^     ^  ^     ^


 これが?

 悪いかたつむりだ!

 正解!


;:;:;:;:;:;:;:;:


 などとやっていると、ガラガラと玄関の扉が開いた。昔は気にしなかったが、鍵もかけずに不用心だと今さら思う。


「ただいまー」

「剛か。寿司を食いに来たんだろ」

「バレた?」

「何年一緒に過ごしてきたと思ってるんだ」

「お、優ちゃんじゃん! 元気だった?」

「あ……」

「やーい、怖がられてやんの」


 優ちゃんは舞香さんの後ろに隠れてしまった。お母さんがそれを茶化す。


「そういえば、身長はもうはかった?」

「あ、やってないな」

「優ちゃん、ちょっとそこの柱の前に立って!」


 優ちゃんがおじおじと動き出す。


「動かないでねー」


|1**|     ――16歳 おれ

|1**| ――16歳 康太

|1**|     ――15歳 おれ

|1**|   ――14歳 剛

|1**| ――13歳 康太

|1**|   ――12歳 剛

|1**| ――11歳 康太

|1**|   ――10歳 剛

|1**|     ――12歳 おれ

|1**|       ――10歳 優

|1**| ――9歳 康太

|1**|       ――9歳 優

|1**|



「どんぶり寿司でーす」

「お、キタキタ!」


 剛が目を輝かせて飛んでいった。まったく、しょうがないやつだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ