クソ王子が主導する村娘の品評会場 ~余った村娘、もらいます~
地味で大胆な村娘が書きたかった、というのが、本作執筆の理由です。
クズな王子がいる。
彼は辺境の村にやって来た。
広場には、二十数名の村娘が集められている。
王子は彼女達の中から、好みの娘を王都に連れ帰る予定であった。
女好きな王子にとっては自分の女が増えて、村娘は王城での豪華な生活が保障される。村娘の親にも、一生暮らせるだけの譲渡金が支給される。全員にとって、悪い話じゃない。むしろ、有益な機会だろう。
なお、女性宮廷魔術師のあなたは、王子の警護も任された調査隊のうちの一人だった。
「ごきげんよう、王子さま」
一人目の村娘がスカートのたくし上げを披露し、下着を丸見えにすると、変態的な王子は大喜びした。これを好評と見た残りの村娘も、全員が同じことをおこうようになった。
村娘の品定めが終了し、王子は気に入った村娘を六人選別した。評価されたどの娘も美少女なのは言うまでもない。
あなたや同僚達がこの村に来た目的は、村とその周辺の調査である。王子による村娘の連れ帰りは、ついでに過ぎない。王子本人は調査に一切関与しないし、関心も無かった。
あなたが村のはずれの草原地帯で休んでいると、
「よろしくお願いします……」
村娘が声をかけて来た。
しかも、この貧弱そうな村娘は、貧相なワンピースのスカート部分を大きくたくし上げている。
あなたの視線の先の白い下着は、見てすぐに興奮するようなものではない。おへそから太もものつけ根までをじゅうぶんに覆った、色気の感じられないものだった。
装飾もなく、安っぽい。
そんな下着を見せている村娘は、長くて暗い色の髪を細い二本の三つ編みにしている。顔はそれなりに整ってはいるが、肝心の女性美が少なく、あの性欲重視の王子に選ばれてはいなかった。だから、こんなところにいる。
なんとなく、あなたは思い出した。
『ごきげんよう……。王子さま』
王子に披露していた、当時の村娘。
彼女の様子は目立つふうではなかったが、たまたま見ていたあなたは、こんなに子供っぽい下着を悪質な王子に見せなければならないことに、同情していた。なお、王子が彼女に興味なさそうだったのはすぐに分かった。
あの時、この村娘は恥ずかしそうな顔をしていたし、今だってそうだ。
彼女のほっそりとした太ももは不健康で、美しいとは言えない。また、大事な部分をしっかりと隠す下着も、清潔感がある色に思えない。
王子が来ると事前に分かっていたのだから、もっと良い下着で飾ったりは出来なかったのだろうか。それとも、そういう考えを持ち合わせていなかったのか……。
ともあれ、あなたにまで下着を見せに来たのだから、彼女も身売りの覚悟はあるのだろう。魔術師が同性の助手を取ることはめずらしくない。
ずっとたくし上げの状態でいた彼女に対し、女性がみだりに素足や下着を晒すものではないよと、やんわりとあなたは伝えた。
「……はい」
村娘はつかんでいたスカート部分を元に戻した。
どうするものかと考えながら、あなたは彼女を見定める。
自分が高位の者だと推測したから、彼女は慣れない誘惑をかけてきたのだろう。
自分でなくても、誰でも良いのだろうか?
そんな疑問は浮かんだ。
けれども、二度も目にした、村娘の一生懸命なたくし上げが、あなたの記憶にずっと残ってしまう。
疲れた時に、横でそっとスカートをたくし上げてくれる娘がいるのは、それはそれで大変素晴らしいことではないのか?
あなたは仕事でだいぶ病んでいるらしい。
悩んだ末に、せっかくの機会を無駄にしないほうが得策と結論づけた。
村娘との出会いを、運命と捉えよう。
あなたは、貴族ほどの大金は出せないことを条件に、魔術師の助手として彼女を誘ってみることにした。
「ありがとうございます。……今後はよろしくお願いします、ご主人様」
この村娘が少なくとも良い子なのは、今の言葉だけでも伝わって来た。それに、あの穿き古した汚めの下着は、信頼に値する。
その後、彼女にも調査を手伝ってもらい、翌日、村から引き上げる時間が来た。だが、予定時間は守られなかった。
帰りの時間が遅れたのは、外道な王子がどこかの民家で村娘達と楽しんでいたから、とのこと。それを同僚から知らされたあなたは、気分を悪くしたものだった。
上機嫌だった王子に、そんな汚らしい娘を持って帰るのかと声をかけられた。あなたは、魔術の実験で使うと嘘をついた。
王子は下品に笑い、こう続けた。
美少女は王子である高貴な自分に、不潔な実験体は使えない三流魔術師に、適材適所だな、と。
あなたが適当に肯定すると、お前のような女がこの俺と同行出来るのも、王である父上のお陰だからな、感謝しろよと、これまた不快な声で言われた。
王の信頼を得ているからこそ、あなたは調査隊の一員に加わっているというのに……。
魔術の実験台として真っ二つにしてやろうか? とは言わずに、あなたは笑顔のまま帰路を乗り切った。
(終わり)
当初は森の化け物に村娘が襲われる話で、全然別物でした。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。