もう一人の太一
権田は病院へ車を走らせる__。
太一とじゅんはスマホの動画を再生した。
そこにはエプロン姿で笑顔のサキがいた。
「じゃじゃ〜〜ん。2024年1月1日。カフェブルーちゃんねるのサキで〜〜す。
今日は、なんと〜〜新年あけましておめでとう記念、みなさんお待ちかねの〜〜新作ケーキの紹介で〜〜す。」
その動画は、カフェの公式チャンネルのための動画だった。
太一は涙が出た。どうしてそばにいてあげられなかったのか、後悔しかなかった。
しばらくサキのケーキ紹介の動画が流れ、
「ちゃんねる登録、コメントお待ちしておりま〜〜す」
サキは動画の終わりには両手でハートをつくるのがお決まりだった。
収録がおわりかけたその時、地震が起こった瞬間が録画されていた。
サキの悲鳴とともに、三脚は倒れ、スマホは横倒しになると、
地面と遠くにサキが倒れているのが映る。
その時、画面上から巨大な鳥の足のようなものが地面を踏みつける映像が飛び込んできた。
その瞬間、映像は途切れた。
「なんだ。。今のは。。」太一の手が震えた。
「化け物だ。。」じゅんは恐れた。
サキの体の傷、あの足、三人はこの世のものとは思えない、化け物がサキを襲ったのかもしれないという
事実を理解しはじめていた。
病院に急ぐ権田。早く助けなくてはサキの命が危ない状態だった。
山の急カーブを降りていく。曲がり切ったその先に
突如、人が立っていた!
権田は急ブレーキをかける!
「何やってんだ!ばかやろ〜〜!!!」と窓を開けて叫ぶ権田。
男はパーカーの帽子をかぶり、顔が暗くて見えない。
雨がしとしと音がする。
男は車に近付いてきて運転席の権田に話しかけた。
「太一はいるか。」