自撮り動画
2024年
おい、太一、見えてきたぞ!
3人は山の反対側の道をなんとか見つけ出し、
カフェのある丘に出ることができた。
カフェの建物は無事のようだ。
地面がところどころ割れている。
カフェの中に入ると太一はサキの名前を叫んだ。
が、返事がない。
中に入るとテーブルや椅子が散乱していた。
食器は床に落ち、メチャクチャな状態。
3人は建物を見回った。
「どこにもいない」
「太一、何か心当たりはないか」
じゅんが言う。
「わからない。もう少し中を探そう。何か手掛かりが見つかるかもしれない。」
「おおおおーーーーーい。こっちだ!」
権田の声がした。
2人は声がするキッチンの方へ駆け寄る。
権田が見つけたのは一台のスマホだ。
「太一くん、これサキちゃんのか?」
「そうです!」
スマートフォンの裏には金魚のシールが貼ってあった。
サキと夏のお祭りで一緒に選んだお揃いのシールだ。
「電源は入るのか?」
「いや、だめだ。バッテリーが切れているのかもしれない。」
「なら、車にバッテリーがあるからしばらく充電してみよう。」
3人は、もう少し周辺を調べる。
「スマホだけがあるなんて。どこかに出かけたとしたら、置いていかないよな。。。」
太一は不安になっていた。
と、勝手口のドアを開けようとしたとき、
ドアノブに黒いシミがついているのに気づいた。
「こ、、これは、、」
シミは10センチほどで、鳥の足の形をしており、そこには血痕もあった。
太一はドアを開けると、地面には鳥の羽が散らばっており、何か引きづられるような跡があった。
それを見た太一は、呆然としてしまった。
後ろからじゅんが声をかける。
「太一、どうした?」
じゅんが外を見ると、地面の溝の先には、
サキがうつ伏せで倒れていた。
「サキーーーー!!!!!」
太一は駆け寄って、サキを抱き抱える。
サキの体は何か動物のような爪痕で、引き裂かれて、血だらけになっていた。
「サキ。。。」涙ぐむ太一。
サキの手を握りしめると、
「たいちぃ。。おそいじゃん。。。。」か細い声でサキが言った。
「おい、まだ息があるぞ!」じゅんが言う。
権田が駆けつける。
「なんてこった!おい、病院に連れてくぞ!」
3人はサキを抱えて車に乗せた。
じゅんは毛布をカフェから持ってきて被せる。
太一は包帯でサキの傷を止血する。腕の傷がひどい。
「サキ、何があった?」太一がいう。
サキは答えず、また気絶してしまっていた。
「太一くん、スマホ見てみろ」権田が言う。
スマホの電源が入る。
何か手掛かりが無いか。。
太一への発信履歴があった。すでに電波がやられていたんだろう。
何か記録していないか、写真を開く。
するとそこにはサキの自撮り動画があった。