予言。
「どうもありがとう。今ガソリンを汲んできますので
しばらく家の中で休んでっいってください。
ああ、名前を言い忘れてました。わたしはペニーといいます。」
「ペニーさんですね。あたしはサキです。こっちは太一です。よろしくお願いします。」
めちゃくちゃ姿勢良くペニーに挨拶するサキ。
「こっちはないだろ。」怪訝な表情でサキを見る太一。
家の入り口はアーチがかかっている青い木製ドア。
人魚の形をしたドアベルが綺麗な音をたてて老人が入っていく。
二人はそれを見て、驚いた顔で見つめ合った。
家の中に入ると、中は木造で古ぼけた素朴な柱に壁は白い漆喰が塗られていた。
こじんまりとした、タイル張りのキッチンと木のテーブルに椅子が二脚あるだけ。
壁には書斎のようなものがあり、たくさんの専門書が並んでいた。
「お二人さんどうぞどうぞ。そこへお座りなさい。今コーヒーを淹れますので。」
ペニーがキッチンへ向かう。
「じゃあ失礼します。ペニーさん、他にもどなたか一緒に住んでいるんですか?」
2脚あった椅子を不思議に思った太一が聞いた。
「ああ。今は一人なんです。昔は仲間と二人暮らしでしたが、地質調査中に森で足を怪我をしまして。
今は病院で療養しております。大事に至らなくてよかったので大丈夫ですが。」
「そうなんですか。それは大変でしたね。」と太一。
椅子に座ると、格子のついた窓からは海が一望できた。
二人は心地いいその家の空間に浸っていた。
しばらくすると、コーヒーのいい香りがしてきた。
「ガソリンをタンクに入れてくるので休んでいてください」
「ありがとうございます。」
二人はペニーの淹れたあったかいコーヒーをいただいた。
「おいし〜。」サキはニコニコしていた。
太一は本棚に目をやると、そこにはまた人魚の置物が置いてあった。
何か変だなと思っていたとき、サキが天井を指差した。
「ね。。太一、、あれって。。」
太一が天井のシャンデリアをよく見ると、電球の先から青い石がたくさんぶらさがっていた。
「綺麗だな。。」
「ちがうの。よく見て。あそこ。」
太一はサキが言う方向に目を凝らしてみた。
シャンデリアのてっぺんには、王冠があり、そこに人魚と人間が手を繋いでいるオブジェのようなものが
キラキラ光っていて、その周りには桜の花が散りばめられていた。
「なんだあれ。。」
二人は不思議な顔をしていると、ペニーが奥の部屋から小さなガソリンタンクのようなものを持って戻ってきた。
「これだけあれば、ここまで走るでしょう。」
「本当にガソリンもってたんですね。。」太一は驚いた。
「ここは何かと不便なところですので、いろいろ備蓄はしてあるんですよ」
そのあと、三人は山を下り、ペニーは車にガソリンを入れた。
「お二人さん、ありがとうございました。」
ペニーはそう言ってポケットから黄色い封筒を取り出して、じゅんに差し出した。
「これはほんのお礼ですが。受け取ってください。」
太一は、「いやいや、とんでもない。先ほどコーヒーをいただきましたので。
十分ですよ。」
「あ、いや、これは手紙です」とペニーが言った。
「手紙?ですか?」
太一はきょとんとした。
その手紙は、日焼けをしているようで黄色くなってぼろぼろの紙だった。
「あとで読んでください。お二人さんのこと応援しております。どうぞご無事で。」
そういってペニーは去っていった。
二人は不思議な顔をして、
「太一、どういうこうとなのかね。いつ手紙書いたんだろ。
直接見られるのが恥ずかしいのかな。」
「そうなのかもね。」
二人は車の中へ入り、手紙を開いた。