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6話

「おはよっ、ナツ!」

「うるせえ。耳元で大声出すな!耳痛くなるだろ!」

「えー、だってさー。やっぱりナツの事起こすにはこれに限るかなぁーって」

「重いからよけろ!」

「女の子に重いとか言っちゃダメなんだー」

翌朝。いつもより少し早い時間に凛華の目覚ましがあり、俺は不満げに瞼を開けた。因みに、耳元で言われた時点で気付いていたが凛華は馬乗り状態で俺にのしかかり、これが結構重い。その言葉に怒ったようにする凛華だが、コイツの言葉に本気度は感じられない。昨日言った事を、さっそく実行しているようだった。


「まあ、いいけどね。それよりさ、今日は早めに学校行かない?」

「なんでだよ」

ジトっとした目で見ると、「たまには気分転換に早く行ってみようかなって」などと返してくる。確かに、普通に行くとなると少し急ぎ目に動かなければならないからそれは理にかなっているのかもしれない。

「...それとも、僕が二人っきりの教室で言えない様なことしたい...なんて言ったら、信じる?」

「信じられるか」

「あたっ」

少し意地悪い質問だったので、俺は凛華の頭をチョップする。「もう、DV彼氏は嫌いだよ!」などと言ってくるのも無視して、俺は身支度を始めた。というか、こういう駄弁りがいつもの遅れの原因なんじゃないだろうか。それなら、今後コイツの無駄話には付き合わない様にしよう。...恐らく、いや絶対に無理だろうが。


制服を着終えると、追い出すのを忘れていた凛華が赤い顔で、

「いやあ、結構見えないけど筋肉質なんだねえ」

「さ、触んな!」

腹を撫でてきたので、慌てて引き離す。というか、凛華って筋肉フェチなのか?

少し訝しく思っていると、「あ」と凛華が言った。

「はやくしないと、遅れるよ!」

「何っ!?」

時計を見ると、すでに8時を回っていた。

「早くしろ!ほら、遅れるぞっ!」

「う、うん!」

全力で走って、自転車で全力で漕ぐ。というか、二日連続で遅刻しかけるって俺達はどうしたのだろうか。これからは、もう少しだべるのをやめなければならない。


「はあ、はあ...。」

「あ、危なかったね...。」

「ホントだよ...。」

昨日より早めに着けたので先生に見つかる事は無かったが、それでもある程度は遅い為か昨日ほどではないにしろクラス中から視線が集まった。

「二日連続で遅いなんて、何かあったか?それか、二人きりの家で何かあったとか...。」

「「それはない」」

「だよなあ。お前らの間に手をつなぐ以上の事があるなんて、火星と地球が衝突するくらいあり得ないもんなあ」

問いかけてきたのは、悪友その二である保史恋だ。俺達を面白がっている節があるが、その時はたいてい何かにつけて凛華を焚きつけるので注意が必要だ。


「...あり得なくないかもしれないでしょ?大体、僕がこんなに可愛いんだから手を出されてもーーー」

「それはない」

恋に否定されて、むぐっと凛華は押し黙る。それをさらに面白がってみていたが、「そもそも、心を開いて会話しようとしてないからこうなるんだよ。自分の心の底で、『ナツは僕にとって何なのか』を考えてみればわかると思うぞ。なあナツ?」と最悪のキラーパスを振ってきやがった。

凛華が俺の方を見た。「そうなのかな...?」と首をひねっている。畜生、可愛い。

「確かに今のままじゃ、可愛くても手は出ないな。自分の言葉で自分を守ってるから、いざという所で踏み込めないんだよ」

「...!」

図星だったか、凛華が驚いた表情で俺を見た。それに構わず続けようとしたが、チャイムに邪魔されて仕方なく席に戻る。


「さて、ナツ。帰るぞー」

「な、ナツ!あんな五芒星は無視して、僕と一緒に帰ろっ!」

放課後。恋が帰宅を促してそれに頷きかけたところで無理やり、伸ばした手を凛華に取られた。ツンデレのようにも見えて、可愛い。

「ん、何だ?もしかして...嫉妬、かぁ?」

意地悪い笑みだ。というよりかは、半ばカマをかけているに等しい。

「な、そんなわけないでしょ!?僕がし、嫉妬なんてするわけが...。」

ただ、無駄なところで素直な凛華はそれに引っかかって慌てる。そして、ひとしきり慌てた後は一周回って落ち着いたのか、「ふう」と一息ついた。


「...ナツは、さ。僕の事、好き?」

素直な目だった。ホントにコイツの眼か、これ。

そんな素直な目で見られると、俺も照れてしまいそうだ。俺はなんとなく、目をそらした。だが、逆にそれで燃えたのか俺の視線の中に意地でも自分の顔を入れようとしてぴょこぴょこと俺の周りを飛び跳ねた凛華はしかし、「いてっ」すぐに転んだ。

「だ、大丈夫か!?」

慌てて、手を伸ばす。

「...ありがと。おかげで助かったよ」

「...何言ってんだよ、お前の言うようなセリフじゃねえだろ」

少し照れて、視線を逸らす。それを見ていた恋が、「...へえ。こりゃ思った以上に...。」

と何やら呟いていたが、聞こえないふりをして帰路についた。

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