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3話

「わあ!ねえねえ、金魚すくいしようよ!」

「金魚飼えんのか?そもそもお前のことだからすぐ辞めそうだけどな」

「何いってんの?僕の家じゃなくて、ナツの家で飼うの!」

「なんで俺んちなんだよ!?父さんの迷惑になるだろ!」

「いいでしょ?」

「...一回だけだぞ?」

「やった!ふふん、僕の腕前見せてあげるよ!」

実に子供みたいな目をして、凛華は金魚すくい屋のおじさんに600円渡した。明らかに多い気がするが、気にしないことにしよう。


俺が傍観に徹しようとすると、金魚すくい屋のおじさんに声をかけられた。

「あれ、彼氏さんの分もお金渡されたよ?ほら、ポイ取って」

「え?いや、俺は彼氏じゃなくってただの幼馴染だけど」

「...確かに今はまだ幼馴染だけど、いつかは僕の彼氏になるから」

「ほう、若いねえ。青春はいいもんだ。あとお兄さん、はい」

「ああ、どうも」

渡されたポイを貰って、金魚すくいに興じることにする。

赤いデメキンを狙ってポイを入れて...持ち上げる。これだけのはずなのに、取れたと思った瞬間ポイに穴が開いて結果0匹になった。


「ありゃ、お兄さんの方は0か。でも、そっちの未来の恋人さんはとってもすごいよ?」

「え?」

おじさんの言葉に従って凛華を見る。すると,そこには...。

「おりゃ!やっ!とりゃっ!」

奇声を上げながらも次々と金魚をすくっていく、美少女の姿があった。

「...すげえ」

そんなありふれたセリフ以外に、出せる言葉はなかった。


結局赤と黒の二匹をもらって、俺たちは別の屋台に歩き始めた。

「それにしても、すごいな。あんな破れやすいやつでどうとってんだ?」

「簡単な話だよ。破れやすいなら、あまり水をつけないかおとなしそうなのを見つけてすぐにすくう。...でもナツのは暴れん坊だったし長くつけすぎだけど」

「悪かったな、下手くそで!」

「いいよ。意外な一面も見れたし、僕がこういうの上手いって見せれたしさ」

笑顔でそんなことを言う凛華はやはり可愛くて、少しだけ赤面する。恥ずかしくて頭を掻いた俺に、凛華は隠し事のない優しい笑みを浮かべてくれた。そんな顔が見られて嬉しいと思う反面、ちょっとだけ寂しい気もしたが押し殺すことにした。


鉄砲の屋台にくると、やはり凛華は「ねえねえ、一緒にやろうよ!」と言ってきた。一回三百円、さっきよりは高いが1番上にある謎の木の筒が気になるので今回も2人でやることにした。

コルクの弾は6発で、結構多い。前一回だけこの手のをやった時は一回五百円で5発だったので、結構優しいのかもしれない。

俺は1番上のを執拗に狙ったが、2発命中一発外れ。お菓子とぬいぐるみのそこそこ大きなクマをゲットした凛華に譲って、今度こそ傍観に徹した。

「プロの実力、見せてやるー!」

無駄な腕まくりをした後、表情が変わったのでみんな静かにした。騒いでいたのもこの場でだけは静まり返って、凛華の一発を見ていた。

一発目、命中。二発目も命中するが、木の筒は落ちない。そして、三発目。上目に当たった弾は...そのまま、木の筒を倒した。


それを見届けた瞬間、鉄砲の屋台をやっていた老爺がハンドベルを鳴らした。

俺も周りのみんなも拍手で凛華を讃える。「えへへ、ありがとう!」と凛華もはにかんでいた。

結局、木の筒はさらにその中のものを引いて当たったのを渡すという形だった。当たったのは何故かたこ焼きプレート付きホットプレートセットで、明日の朝はたこ焼きに決定した。都合のいいことに材料も余っている為確実にたこ焼きを作ることになるだろう。

突如発生した重い荷物を紙のハンドバックに入れて持ち、嬉しそうな凛華の後ろをついていく。ニコニコとした凛華と一緒にいるだけで、俺も嬉しくなってくるような感覚だ。


花火が始まって、俺たちは適当なところに座って花火を見た。俺たちが恋仲ならキス、恋仲になりかけなら花火のアップで告白があったのだろうが、俺たちの関係は未だ幼馴染のままだ。

何か言われるかもと一瞬期待してしまったが、そういうことは一切なかった。

花火が打ち上げ終わり、俺たちはそのまま帰路に着く。少し寂しくもあったが、とりあえず今日はここで終わりだ。

「じゃあ、また明日な。お休み、凛華」

凛華に手を振って、俺は自分の家に入ろうとする。しかし、後ろにあった右腕が掴まれて思わず「どうした?」と問いかける。

「...今日は、僕も一緒に寝る」

「...何いってんだ?いつものか?」

「ううん。本気だよ。それに、正直になれって言ったのはナツだもん」

「まあ、確かにな!でも、流石にそれは早いというか...な?」

「?一緒に寝るだけなら、ちっちゃい頃もそうだったよね?」

「あん時は子供だったろ!?それに、今一緒に寝たら...多分、手が出る」


その言葉を聞いて、逆に凛華は笑みを浮かべた。

「むしろ、僕はそうなってほしいな。...でも、まだちょっと恥ずかしいからさ。できれば、き、キスまでにして?」

最後は少し赤くなっていった凛華に、思わず照れそうになる。否定することも忘れ、気づけばもう凛華は風呂に入っており、そのまま一緒に寝る事に。

...相当悶々としたが、なんとか手を出さずに乗り切った。メイクしない派のコイツがメイクをしたらどうなるか...気になったが、寝顔が可愛いなと思うまでにとどめた。多分それ以上考えてたら、キスどころかもっとダメになっていたと思う。

...正直に言うと、額にキスした。した後はすごい恥ずかしくなった。恋仲になってもできる気がしねえ...。

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